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不遇の魔道具師と星の王

緑野 りぃとる

第20話 冒険者バザー・上

 ついに待ちに待った週末がやってきた。レベッカにいろいろと説明しながら作った魔道具たちを収納の魔道具に詰め込み、俺はバザーへと向かう準備をした。

 バザーを出すときに立てておくための看板も用意したし、商品を並べるための簡易的なショーケースのようなものも用意した。万が一に備えて簡単な設備を備えている結界魔道具も収納の魔道具に忍び込ませる。

 必要なものがすべて入っていることを確認して俺は朝食をとるために食堂へと向かった。食堂にはすでにみんなが集まっており目玉焼きとトーストといった素朴な朝食をとっていた。ちゃんと俺の目玉焼きとトーストも準備してある。

「ミラも毎朝ご飯作ってくれてありがとう。」
「いえ、早起きしてもやることがないので気にしなくても大丈夫ですよ。」

 この拠点では、ギッツさんから料理を習っているミラが朝食の準備をしてくれている。ミラはいつも俺たちが起きる1時間くらい前にはすでに起きて屋敷の周りを散歩したり軽い掃除などをしてくれている。エルフはとてもショートスリーパーらしく、夜はかなり遅い時間まで起きて本を読んだりしているのにもかかわらず、朝も特に無理して起きている様子もない。

 本人から率先して家事などをこなしてくれているので、非常に助かっている。非常に家庭的でいい子だった。

「アルトさん、今日は町に行くんですよね?」
「うん。今日は帰りも遅くなると思うから晩御飯も自分で何とかするよ。」
「そうですか。分かりました。」

 俺は自分の分のトーストと目玉焼きを平らげ、身だしなみもある程度整えて荷物の最終確認を行った。忘れ物がないことをしっかり確認して屋敷を出る。持ち物はすべて収納の魔道具にしまい切ったので、馬車や魔導騎馬などは使わず、徒歩で町まで向かった。

~~~~~

 アクマリンの町はいつも賑やかなのだが、今日はいつも以上に賑やかだった。今日は冒険者バザーという、冒険者を手厚く支援するこの町ならではのお祭りのようなもので、隔週の週末に開かれている。この日は町中に冒険者のための出店がされる。そこではポーションや魔結晶といった冒険者の必需品が数多く売られている。基本的には消耗品が多いのだが、少なからず俺と同じように武器や魔道具を売っている店も存在する。

 バザーに出店する人のほとんどが自分の店を持たない見習いの人や店を開くために名前を売りたい人であり、より多くのお客さんに商品を見てもらえるように店で売られているよりも安い価格で販売していることが多い。もちろん品質の悪いものも多く存在するが、その中に埋もれている安くていい品を探しにアクマリンの冒険者だけでなく、周辺の町の駆け出し冒険者もこのバザーを見に来る。

 まだほとんどの出店がオープンしていないにもかかわらず、駆け出しの冒険者と思わしき人たちが開店を待ちながら市場の入り口で待っていた。このバザーでは市場に武器や魔道具を売っている出店が集められるので、おそらく彼らも武器か魔道具を探しに来たんだろう。俺は市場の外の様子をちらちらと確認しながら自分のバザーの準備を進める。何分初めてのことなので、少し手間取ってしまうものの、バザーが始まる時間までには準備も完了した。

『冒険者バザーの開始時刻でーす!』

 町のいたるところに設置されたスピーカーからバザーの開始を告げるアナウンスが流れる。市場の出入り口に置かれていた立ち入り禁止のポールも取り除かれ、駆け出しの冒険者たちが入ってきた。彼らは並べられた商品をバザーの中を何周もしながら見定めていく。俺はそんな彼らの装備をざっと見定めていた。

 そんなことをしながらお客さんが来るのを待っていると、早速お客様第一号がやってきた。お客様第一号は駆け出しの冒険者らしく、装備も整備された中古品を使っている様子だった。

「すいません、収納の魔道具を見せていただきたいんですけど…」
「いらっしゃいませ!容量はどれくらいのものを探してるんですか?」
「6000ルードで買える最大のものをお願いします。」

 俺は並べている収納の魔道具の中から最大の容量のものを取り出してその冒険者に見せる。

「これが5000ルードの収納の魔道具になります。容量は1000リルですがよろしいでしょうか?」
「1000リルも入るのに5000ルードで買えるんですか?!」
「…どうしますか?」

 俺はお客さんが一体何で驚いた表情をしているのかわからないので、とりあえず買うか買わないか聞いてみる。

「もちろん買います!これで足りますか?」

 俺はお客さんから1000ルード金貨を5枚受け取り、収納の魔道具を渡した。

「ありがとうございました!また来てくださいねー」

 お客様第一号はとても満足した様子で収納の魔道具を握りしめながら帰っていった。一番最初のお客さんにあそこまで喜んでもらえたので初めてのバザーとしては非常にいいスタートを切れたのではないだろうか?

「すいませーん。」

 俺が心の中でガッツポーズをしていると、すぐに次のお客さんが来てしまった。そのお客さんはほかの冒険者たちとは違い、一見するとあまりよくは見えないが実はとんでもなく素晴らしい装備を身に着けていた。

「あ、ごめんなさい。何をお探しですか?」
「魔法の属性を付与してある剣を探してほかの店も見てきたんですけど、なかなかしっくりくるものがなくて。いくつか触らせてもらっていいですか?」
「もちろん構いませんよ。」

 俺は属性剣が入っている箱を開けてその男性に見せる。

「持ってみていいですか?」
「もちろん。」

 男性はその中から風の属性剣を取り出し、鞘から刀身を少し抜き出して眺めた。

「非常に丁寧に作られてますね。属性の色が刀の刃文にはっきりと表れている。魔力の通りもとても良い。真摯に刀と向き合っている証拠ですね。」
「分かるんですか?」
「伊達に刀を扱っていませんので。自分の命を預ける刀にはやはり絶対の信頼がないといけない。」

 俺がそのお客さんと話しているその周りでは、遠巻きに様子をうかがおうと人が集まってきていた。俺はいったい何が何だかよくわからないがそのまま接客を続けることにする。

「あなたの作られたこの刀たちは他の店で売られているものに比べて派手さは全くと言っていいほどありませんが、性能がとてもよく、素朴ながらも輝く美しさがある。ぜひ一振り売っていただきたいのですがこれで足りますか?」

 そういって男性は10万ルード札を50枚、500万ルード出してきた。

「いやいや、この刀はそんなに高くないですよ?!一振り5万ルードで結構です!」

 設定していた価格の100倍出されて思わずテンパってしまう。俺が動揺して挙動不審になりかけていると、500万ルード出した男性も別の理由で動揺していた。

「こんな素晴らしい業物をたったの5万ルードで売っている?!なんて店だ…」

 男性はしばらく放心していたが、気を取り直して10万ルードの札を一枚出してきた。

「では、風と炎の刀を一振りずつお願いします。」
「分かりました。お渡しする準備しますね。」

 俺は10万ルード札を受け取り、箱の中から炎と風の属性剣を取り出し点検する。刃毀れなど異常がないことを確認して刀袋に納めて渡した。

「ありがとうございます。再来週もここで出店されるんですか?」
「一応そのつもりです。場所は変わるかもしれませんが。」
「分かりました。では、また再来週お伺いしますね。」

 男性は二本の刀を腰のベルトに差し入れ、そのまま市場を後にしていった。俺は自分の作品を褒められるとは思っていなかったので少し気分が高揚していた。

「すげぇな、あの魔道具師。」「な、嵐剣に気に入られる奴なんているんだな。」「魔道具師としては初めてなんじゃない?」

 アルトの周りでは彼のことが気になる冒険者や同業者が注目しているのだが、当の本人はその視線に一切気が付いていないようだった。

 そんななか、アルトの店に走っていく水色の髪の少女がいた。

「お久しぶりです!アルト先生!」

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