不遇の魔道具師と星の王
第19話 商品準備
マリアとの模擬戦後、みんなにパン屋で買ってきたパンをみんなに配り、子供たちにはご褒美を渡した。エルフとコボルドの子供たちはおいしそうにクッキーをかじっており、ドワーフの女の子も俺が作ってあげた照明の魔道具を興味津々といった様子で見ていた。その際、これから一緒に生活するときに子供たちの名前がないと不便だろうということで、エルフの女の子にはミラ、コボルドの男の子にはラルフ、ドワーフの女の子にはレベッカと呼ぶことにした。三人とも自分の親に着けられた名前は覚えていないそうなので、みんなに着けてもらった名前をすんなり受け入れてくれた。
その後昼食をみんなで採ったあと、俺はレベッカと一緒に敷地の中にあった古びた工房へと来ていた。その工房は長年使われていなかったせいか、埃をかぶっており、二人で掃除をするところから始めることになった。なかなか立派な工房で、二人だけで掃除するのは骨が折れたが、きれいになった工房には非常に創作意欲を掻き立てられる設備が整っていた。
「ねぇ、アルトさん。アタシもここで好きなもの作っていいの?」
「うん、いいよ。でも刃物とか危ないものを使うときは気を付けてね?」
「はーい!」
レベッカはそのまま作業台に向かい、俺が渡したばかりの照明の魔道具をいろいろな角度から眺め始めた。
俺もレベッカが使っている作業台とは別の作業台に向かって、今回用意する予定の魔道具の設計図を並べていく。今週末出店するバザーではこの町にいる冒険者がどのくらいのレベルの人たちなのかを知ることと、どのくらいのレベルの人からが魔道具に手を出し始めるのかを知ることが目的だった。
なので、今回は冒険者をする上では必須といわれている収納の魔道具を容量が小さいものと、大きいものの二種類、冒険者のあこがれとさえ言われる魔法属性剣(通称魔剣)を各属性4本ずつ五種類、そして身体能力を上げるアクセサリー型の魔道具を三種類、合計十種類用意する。
収納の魔道具の構造は非常に単純で、作るのに手間はかからなかった。しかし、魔剣はまず剣を鍛えるところから始めなければいけないのでとても時間がかかてしまう。
工房に取り付けられた溶鉱炉を使い、鉄鉱石と魔石を砕いたものを少量加え、一緒に溶かす。そうすることで疑似的な魔鉱石を作ることができる。純粋な魔鉱石に比べて加工はしにくくなってしまうが、その分完成品の魔力の馴染み方は純粋なものよりも非常に良い。それに、剣として扱うには、魔鉱石はあまりにも硬すぎており、粘りが弱いためすぐに折れてしまう。
そのため、魔剣を作る際はこの手法が主流となっている。店や職人によって砕いた魔石を入れる割合は変わるが、俺の場合は小さいころからずっと試行錯誤して最良の配分を見つけている。
今回もその配分をしっかりと守ってまずは疑似魔鉱石のインゴットを作成する。五種類の魔剣をそれぞれ四本ずつ作るので、何個かまとめて溶かし、合計二十本のインゴットを作成した。
インゴットを叩いて伸ばして畳んでまた伸ばして畳む流れを四度繰り返し、剣の形へと近づけていく。そうすることで鉄と魔石の結合がより粘り強い構造へと変わっていく。
そうやって鍛えたインゴットたちを今度は剣の形に叩きながら形成していく。そしてある程度刃の形ができてきたところで鎬の部分に魔力を含んだ粘土を塗り、炉の中へ刃を入れる。
そうして高温で熱することで切り裂く刃は固く、受けるうなじはしなやかに仕上がる。この二種類の硬さの違いが剣を丈夫で鋭いものにする。
俺がそうやって何本か剣を仕上げていっていると、レベッカが興味津々といた風にこちらを見つめていた。
「もうそっちは満足したの?」
「うん!アルトさん、なんで出来上がった剣を焼いてるの?」
「焼き入れっていってね。俺のお師匠様が魔法剣を作るときにやってる作業なんだよ。そうすることで丈夫で魔法を流しやすい剣が完成するんだよ。」
「へぇ~。アタシもやってみていい?」
「いいよー。この手袋つけてやってね。」
俺はレベッカに耐火手袋を渡す。レベッカは剣に粘土を不器用ながらも一生懸命塗っていく。さすがに一定の厚さになってはいるが、しっかりと鎬の部分を粘土で覆うことはできている。
その剣を今度は炉の中に入れる。炉の周りはかなり高温になっており、褐色の額に玉のような汗がにじむ。
しばらくは炉の中にその剣を入れ続けれていたが、途中でやはり熱かったのか剣を離してしまった。
「ごめん熱くてムリー。」
「まぁそうだよね。慣れるまではきついと思うよ。」
レベッカがうへぇって感じの表情をしていたのを見て、ついついかわいいなぁと思ってしまった。
その後もレベッカに聞かれることに答えながら作業を続け、商品の準備を進めていった。
その後昼食をみんなで採ったあと、俺はレベッカと一緒に敷地の中にあった古びた工房へと来ていた。その工房は長年使われていなかったせいか、埃をかぶっており、二人で掃除をするところから始めることになった。なかなか立派な工房で、二人だけで掃除するのは骨が折れたが、きれいになった工房には非常に創作意欲を掻き立てられる設備が整っていた。
「ねぇ、アルトさん。アタシもここで好きなもの作っていいの?」
「うん、いいよ。でも刃物とか危ないものを使うときは気を付けてね?」
「はーい!」
レベッカはそのまま作業台に向かい、俺が渡したばかりの照明の魔道具をいろいろな角度から眺め始めた。
俺もレベッカが使っている作業台とは別の作業台に向かって、今回用意する予定の魔道具の設計図を並べていく。今週末出店するバザーではこの町にいる冒険者がどのくらいのレベルの人たちなのかを知ることと、どのくらいのレベルの人からが魔道具に手を出し始めるのかを知ることが目的だった。
なので、今回は冒険者をする上では必須といわれている収納の魔道具を容量が小さいものと、大きいものの二種類、冒険者のあこがれとさえ言われる魔法属性剣(通称魔剣)を各属性4本ずつ五種類、そして身体能力を上げるアクセサリー型の魔道具を三種類、合計十種類用意する。
収納の魔道具の構造は非常に単純で、作るのに手間はかからなかった。しかし、魔剣はまず剣を鍛えるところから始めなければいけないのでとても時間がかかてしまう。
工房に取り付けられた溶鉱炉を使い、鉄鉱石と魔石を砕いたものを少量加え、一緒に溶かす。そうすることで疑似的な魔鉱石を作ることができる。純粋な魔鉱石に比べて加工はしにくくなってしまうが、その分完成品の魔力の馴染み方は純粋なものよりも非常に良い。それに、剣として扱うには、魔鉱石はあまりにも硬すぎており、粘りが弱いためすぐに折れてしまう。
そのため、魔剣を作る際はこの手法が主流となっている。店や職人によって砕いた魔石を入れる割合は変わるが、俺の場合は小さいころからずっと試行錯誤して最良の配分を見つけている。
今回もその配分をしっかりと守ってまずは疑似魔鉱石のインゴットを作成する。五種類の魔剣をそれぞれ四本ずつ作るので、何個かまとめて溶かし、合計二十本のインゴットを作成した。
インゴットを叩いて伸ばして畳んでまた伸ばして畳む流れを四度繰り返し、剣の形へと近づけていく。そうすることで鉄と魔石の結合がより粘り強い構造へと変わっていく。
そうやって鍛えたインゴットたちを今度は剣の形に叩きながら形成していく。そしてある程度刃の形ができてきたところで鎬の部分に魔力を含んだ粘土を塗り、炉の中へ刃を入れる。
そうして高温で熱することで切り裂く刃は固く、受けるうなじはしなやかに仕上がる。この二種類の硬さの違いが剣を丈夫で鋭いものにする。
俺がそうやって何本か剣を仕上げていっていると、レベッカが興味津々といた風にこちらを見つめていた。
「もうそっちは満足したの?」
「うん!アルトさん、なんで出来上がった剣を焼いてるの?」
「焼き入れっていってね。俺のお師匠様が魔法剣を作るときにやってる作業なんだよ。そうすることで丈夫で魔法を流しやすい剣が完成するんだよ。」
「へぇ~。アタシもやってみていい?」
「いいよー。この手袋つけてやってね。」
俺はレベッカに耐火手袋を渡す。レベッカは剣に粘土を不器用ながらも一生懸命塗っていく。さすがに一定の厚さになってはいるが、しっかりと鎬の部分を粘土で覆うことはできている。
その剣を今度は炉の中に入れる。炉の周りはかなり高温になっており、褐色の額に玉のような汗がにじむ。
しばらくは炉の中にその剣を入れ続けれていたが、途中でやはり熱かったのか剣を離してしまった。
「ごめん熱くてムリー。」
「まぁそうだよね。慣れるまではきついと思うよ。」
レベッカがうへぇって感じの表情をしていたのを見て、ついついかわいいなぁと思ってしまった。
その後もレベッカに聞かれることに答えながら作業を続け、商品の準備を進めていった。
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