不遇の魔道具師と星の王

緑野 りぃとる

第14話 相談

「そんなに慌てて拠点を構えなくてもいいんじゃないですか?」
「でも、もし宿屋にあの子供らが出入りしているのが見られたら最悪またさらわれるかもしれないし、宿屋にも迷惑がかかるだろう?」
「だから、慌てて拠点を構えるんじゃなくて、バースデー侯爵に相談してみたらどう?」
「なるほど、確かにそれはいい案かもしれない。拠点が見つかるまでの間侯爵に預かってもらえば安全だな。」

 ということで二人は行き先を不動産屋からバースデー邸へと変えた。ライムがバースデー邸の門番に話しかけると、快く中に入れてくれた。

「やぁ、ライム君。さっきぶりだね。」
「バースデー侯爵、実は折り入ってお願いごとがあってきました。」
「うん。聞くよ。僕にできることなら可能な限り叶えるよ。」

 ライムは事の顛末を話し、新しい拠点が手に入るまでの間その子供らを預かってほしいということを伝えた。終始セイリウムは真面目な顔で話を聞いていたが、ライムの話が終わると、途端に険しい表情になった。

「確かにうちで預かったほうが安全なんだけどあいにく僕はこれから王都へ行かなければいけないんだ。だから、この屋敷にも屋敷を維持するのに最低限の人数しか残せない。だから、その子供らを守り切れるとは保証できないんだ。」
「なるほど、そうですか。分かりま・・・」
「ただ、相談されて何もしないというのも僕のポリシーに反するから一つ提案しよう。さすがにメイドとかは用意できないけれど、ある程度の広さを持つ屋敷が町の外の奥地に一軒ある。その所有権は僕が持っているから、それを君たちに譲ろうと思うんだけれど。」

 セイリウムはそう言って机の中から地図を取り出す。その中に赤い丸で囲まれた場所を指し示しながら話を続ける。

「この町を出て、南東に進んだところにその屋敷はある。単純な屋敷の面積でいえば、ここなんか話にならないレベルで広い。ただ、あまりに広すぎるために維持もしていないから荒れ果てているだろうし、町からそこそこ離れているから業者を呼んで整備してもらうのにもお金がかなりかかる。」
「つまり、その屋敷を自分たちで整備すれば好きに使っていいということでしょうか?」
「そのとーりだよ。ちゃんと敷地内は結界の魔道具が施してあるから魔物が入り込んでいるということは心配しなくていい。どうかな?」
「ありがとうございます!ありがたく使わせていただきます!」

 ライムはセイリウムから屋敷のカギを受け取り、宿へと戻っていった。ライムが帰った後も、セイリウムは忙しそうに書類をまとめていた。

~~~~~

 ライムさんとアイラさんが返ってきたあと、俺たちはそのまま町を出た。町を出る直前にそこそこの大きさの馬車を買い、その先に俺が自作した魔導騎馬をつなぎ、ライムさんが指示する方向へと走らせた。

 子供たちはすっかり寝てしまっており、その子供たちを眺めながらメリッカはニマニマしていた。

「メリー、いくら子供好きだからってその子たちの目の前でそんな顔してたら気持ち悪がられるよ?」
「ふぇ!?そんなに気持ち悪い顔してた?」
「それはもう、顔にホブゴブリンが張り付いたような顔してたよ。」
「それはひどすぎるよぉ!」

 馬車の中では女子二人が仲良くじゃれあっていた。ギッツさんは馬車の後ろで頭を揺らしながら、寝ていた。一方、ライムさんはずっと何かを考えているような表情をしていたので、道の支持以外は極力話しかけないようにしていた。

 俺も魔導騎馬の手綱を握りながらマリアと契約によって得た能力について教わっていた。

「私たちヴァルハラの一族の能力は二つあります。まずは〝忠誠の守り〟。おそらくこれは引き継がれていないので説明は省略します。そして引き継がれているであろう能力は、〝竜神魔法〟といいます。」
「〝竜神魔法〟?」
「この世界には人類が扱う〝属性魔法〟と魔族が使う〝始祖魔法〟精霊族が扱う〝精霊魔法〟そしてヴァルハラの一族が使う〝竜神魔法〟この四つの魔法に分類されます。この中でも〝始祖魔法〟と〝竜神魔法〟はほとんど使用者が減ってしまいました。」

 マリアは説明を続ける。

「〝属性魔法〟はアルトさんが知っている通り、人間が一つだけ持つ魔法属性を具現化して操る魔法です。〝始祖魔法〟はそれよりもさらに強力な魔法ばかりです。これらの魔法は術者自身の魔力を消費して発動します。〝精霊魔法〟は周囲の魔力を利用して様々な属性の魔法を使用することができます。そして〝竜神魔法〟は自身の魔力と周囲の魔力を同時に使用することで〝始祖魔法〟と同じ威力の魔法を〝精霊魔法〟のように様座な属性を際限なく扱うことができます。」
「それって、〝竜神魔法〟一強な感じだからみんなそれを使おうとは思わなかったの?」
「〝竜神魔法〟を使うためには竜人族の血が体に流れている必要がある上に、竜人族は誇り高く人とかかわることがほとんどなかったといわれていますから人間で使えたのは私たちヴァルハラの一族だけだったそうです。」
「へぇー。で、それが僕も使えるようになったんだ。」
「そういうことです。詳しい使い方などは今度時間があるときにお教えします。とりあえず今はどんなものなのかお見せします。」

 マリアはそう言って馬車から身を乗り出して両手で次々といろいろな形を作り出して最後に両手の指を交互に握りこむような形で合唱する。

「《火竜の咆哮》」

 マリアが静かにそうつぶやくと、彼女の口元から一条の熱線が空中に向かって放たれた。俺はその思っていたよりもはるかに強力な魔法を目の当たりにして、言葉を失うのだった。

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