お犬様のお世話係りになったはずなんだけど………

ブラックベリィ

023★桜の異変?

 桜がきちんとシャワー浴びたか確認する為に風呂場に向かい、脱衣所に入った和輝がソコで見たモノは………。

 和輝に言われた通りに、シャワーをきちんと浴びた証拠として、桜の全身には、温水の雫が滴っていた。
 が、少しばかり様子がおかしかった。

 なぜなら、全身ずぶ濡れの姿のままで、身体に滴る水滴をバスタオルで拭き取りもせず、風呂場との出入り口にあるバスマットの上で、ぼーっと立っていたからだ。

 今出たばかりなのかな?
 湯気が立ってるから……
 にしては様子がおかしいな?
 とりあえず、声をかけてみっか
 
 「桜、風呂から出たなら
  きちんとバスタオルで
  身体の水滴を拭けよ

  何やってるんだ?
  身体が冷えちまうぞ」

 和輝の声に反応して、ゆっくりと顔を上げるが、その表情は何処かうつろな表情だった。
 よく見れば、最初にあった時に比べて、桜の影が薄く、生気をあまり感じなかった。

 「どうした? 桜?」

 和輝の再度の問いかけに反応した桜が、細い息を吐きながら口を開く。

 「…か…ず…き……す…ごく
  眠くて…だるい……」

 うつろな表情のままで、そう呟くように言う桜に、異変を感じた和輝は、慌ててバスタオルで桜の身体を包み込み、治療室のベッドへと運んだ。
 バスタオルに包んだ桜を腕に、治療室に駆け込んだ和輝に、消毒薬etc.を用意していた真奈が、目を丸くする。

 「どうしたの? 和兄ぃ?」

 真奈からの問いかけに、和輝は治療室のベッドに桜を降ろしながら答える。

 「あぁ……真奈…
  なんか具合悪そうなんだ」

 ベッドに降ろされた姿のまま、グッタリとしている桜をチラリッと見た真奈は、和輝とは対照的に、慌てず騒がず、淡々とした口調て゜あっさりと言う。

 「あぁ…そう…もしかして…
  その子、貧血かもよ

  あれだけデカイ犬にあちこち
  気の向くまま、引っ張り
  まわされていたんだろうから

  シャワー浴びたら、気が抜けて
  疲労がドッと身体に来たんじゃない
  少し休ませてやればぁ………

  心配なら点滴でもしてやれば
  イイんじゃない?
  和兄ぃだって、点滴なんて
  お茶の子でしょ………

  あぁ…髪乾かしてないじゃん
  今、ドライヤー持って来るね」

 と、クールに言って、真奈は用意した消毒薬etc.をベッドのサイドテーブルに置く。

 「ああ、頼む………」

 「うん………たしか………
  和兄ぃの部屋にあったよね」

 「ああ、たしか押入れの下段の
  箱ン中に入ってるぞ」

 和輝の言葉に頷き、真奈は桜の濡れた髪を乾かす為のドライヤーを取りに、治療室から出て行った。
 真奈が治療室のドアを開けて出て行く音を背中で聞きながら、和輝はグッタリとしている桜に声をかける。

 「桜…桜…貧血か?
  大丈夫か?」

 和輝からの問いに、桜は薄目を開いて本能のままに呟く。

 「…《気》…が……足りない……」

 か細い声の中から拾った単語に和輝は首を傾げる。

 「うん? 《気》? って……
  なんだ? 桜?

  おーい聞こえてるか?
  桜…その《気》ってなんだ?」

 《気》の消耗で判断力の落ちいてる桜は、和輝の問いに素直に答える。






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