お犬様のお世話係りになったはずなんだけど………

ブラックベリィ

017★桜と爺やの密談?


 そんな桜の破天荒な言葉にも、2頭に困りきっていた爺やは、即座に応じる。

 『本当ですか? 桜様
  あの2頭が?』

 爺やから返って来た言葉に、手応えを感じた桜は、更に言い募る。

 「うん、今もおとなしく
  桜の側に座っているのよ
 本当にすごいのよ

 今までウチに来た
 ペットシッター達とは
 全然違うんだから………

 和輝が命令しただけで
 和輝の両サイドに
 ぴったりと付いて歩くの

 その上で、和輝の妹達も
 平気だったのだから………」

 嬉々とした桜の言葉に、電話向こうの爺やも嬉しそうな声を出す。
 それだけ、2頭のやんちゃぶりに困っていたのだ。

 『それはそれは…是非
  ペットシッターとして
  雇いたいですね

  気難しい〈レイ〉と〈サラ〉
  両方の面倒をみてもらえるなら
  逃がす手はありませんね…桜様』

 「そうなのよ…とにかく
  和輝に、うんと言ってもらうわ

  だから、和輝が断れないように
  契約金の100万円と
  最初の月給の50万円を
  現金で手渡して頼み込むわ

  ああ…白夜兄ぃ様には
  私から連絡するから
  とりあえずは………」

 話しが先に進まない桜の言葉に、電話向こうの爺やはせかさずに聞く。

 『それで、桜様は現在何処に
  いらっしゃるのですか?』

 「………えぇ~とぉ………」

 爺やの問いかけに、桜は自分が今現在、何処に居るかわからないというコトに気付き、蒼褪める。

 しまった…和輝にここの
 住所を聞いておけば良かった

 沈黙する桜に、爺やが心配そうな声で、呼びかけて来る。

 『桜様………桜様………』

 そんなところに、和輝が戻って来た。

 「………わりぃわりぃ………
  またせたな、桜………

  とりあえず、ヒザの傷口を
  ふやかして布を剥がすから

  ………ぅん? どうした?」

 困惑顔の桜にようやく気付いた和輝は、首を傾げる。

 スマホ? なんか…重要な…
 話しでもしていたのかな?

 とうの桜は、和輝が戻って来たコトで、住所がわからないという、軽いパニックから立ち直り、落ち着きを取り戻して聞く。

 「和輝……ここって…
  何処なのかしら?

  ここが、和輝のお家なのは
  理解(わか)るけど………
  住所がわからない」

 桜の言葉に納得して、和輝は頷く。

 「そうだな…迎えは必要だもんな
  歩いてかえるなんて、その足じゃ
  到底無理だろうし………
  うちの住所は………」

 そう答えながら、和輝は持って来たタオルにぬるま湯をたっぷりと吸わせて、桜の両ヒザの上にソッと乗せる。
 手当て忘れない和輝である。

 「爺や……ここは…………
  っぅぅぅぅぅ………」

 住所を言い終えるのとほぼ同時に、和輝に濡れたタオルをヒザに乗せられた桜は、予想以上の痛みに、思わず苦痛に呻く。

 「大丈夫か? 桜?」

 そうだろうなぁ………
 まっ…こんだけ血まみれじゃぁ…
 痛てぇよなぁ………やっぱり

 『桜様……桜様……
  どうなさいました?』

 「…っ…大丈夫よ…ちょっと…
  思ったよりも痛かっただけだから
  あぁ…ごめん爺や…心配かけて

  〈レイ〉と〈サラ〉に引っ張られて
  転んで出来た傷口が痛かった
  だけだから………

  それよりも、頼んだモノを持って
  今言った住所に来て欲しいの……」

 『はい、理解(わか)りました
  早急に用意して伺います』



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