お犬様のお世話係りになったはずなんだけど………
016★桜、和輝をペットシッターとして雇う決意をする
桜の了承を得た和輝は、桜を立たせる。
その振動ですら、落ち着いてしまった桜には、痛みをもたらした。
思っていたよりも、ずっと痛い
ヒジもヒザもズックンズックンと
鼓動にあわせて鈍い痛みが走る
どうして、私は、この痛みに
今まで気付かなかったのかな?
半分涙目で、桜は和輝がズボンに鋏みを入れるのを黙って見守っていた。
恐る恐る立ち上がった桜のズボンの裾から、腰に向かってジョキッジョキッとためらうことなく切り開いて行く。
これは……予想よりも酷いな
マジでヒザの肉が抉れてるぞ
いったい、どんなところで
桜はコケたんだ?
それとも引き摺られたセイか?
ズボンの左右を切り開いて、傷口周辺の布だけを残した和輝は、一応聞いてみる。
「どうする? 桜?
自分風呂場で剥がすか?
それとも、ぬるま湯を使って
ここで傷口の血をふやかして
剥がすか?」
うぅ~…自分で出来るわけ無い
こんなにあちこち痛いのに……
「和輝に剥がして欲しい
このままシャワーに行っても
痛くて自分では出来ないと思う」
桜からの予想通りの答えに、和輝は肩を竦める。
「了解……それじゃ……
ぬるま湯でふやかして
傷口から布を剥がすから
ここでちょっと待ってろ」
「うん」
瞳に涙をいっぱい溜めて頷く桜に、和輝はタオルと湯桶を取りに部屋から出た。
別室に行く和輝の背中を見送った桜は、上着の胸にしまったきり、存在そのモノを忘れてきっていたスマホが、足元に置かれた上着の残骸の中で震えているコトに気付いた。
……ぅん? …ああ…すっかり
スマホのコト忘れていた………
誰かな? かけて来たのは?
痛む身体で無理して足元から拾い上げたスマホには、見慣れた番号が表示されていた。
なんだ……爺やか………
心配をかけてしまったかな?
「はい、桜です」
『桜様………よかった
ご無事ですか?
お1人で〈レイ〉と〈サラ〉を
散歩に連れて出たと聞いて
爺やは心臓が止まる思いでしたよ
桜様、今、どちらですか?
すぐにお迎えに参りますので……』
その爺やの言葉を聞いて、桜は唐突にとても良いコトを思い付く。
あぁ~そうだぁ~和輝に
ペットシッターをしてもらえば
良いんたじゃないのぉ~………
幸い〈レイ〉も〈サラ〉も
和輝に懐いているし
命令も聞くんだから………
うん、それが良い
我ながら妙案だ
聞きなれた爺やの声に、心底ホッとした桜は、その心配を訴える声を聞き流しながら、別のコトを考えていた。
『桜様? 桜様?
如何しました? 桜様?』
うんともすんとも答えない桜に、電話向こうの爺やが、心配そうな声での問いかける。
「ううん…なんでもない
それよりも、爺や
桜は良い者を見付けたの
桜が〈レイ〉と〈サラ〉に
引き摺られていたところを
助けてくれたんだけど
すごいのよぉ~………
まるで、白夜お兄ぃ様の
前にでもいるかのように
〈レイ〉と〈サラ〉が
素直でおとなしいんだから
その上で、素直に命令にも従うの
桜は、和輝をペットシッターとして
雇いたいから………
ん~と……そうね…
契約金に100万円とぉ~
月給の50万円を持って
こっちに来て欲しいの」
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