お犬様のお世話係りになったはずなんだけど………
014★和輝の悩み、桜の悩み
少し胸を張り、ちょこなんとお行儀良くお座りしている〈レイ〉と〈サラ〉の頭を撫でてやりながら、和輝は桜を振り返る。
「ミルクも砂糖も入れる」
「OK…ミルク砂糖入りな……
珈琲を飲んで一息ついたら………
とりあえず、傷口の治療する為に
シャワーを浴びろよ」
そう言いながら、和輝は珈琲を取りに、再び台所へと移動する。
その後ろ姿を見ながら、桜はかなり黄昏ていた。
どぉ~して…他人の和輝の前では
あんなにお行儀が良いのに………
やっぱり…桜は〈レイ〉と〈サラ〉にも
馬鹿にされているのだろうか?
台所に消えた和輝の後姿を見送った2頭は、台所へと続くドアを見ながら、長くふっさりとした尻尾を無意識に、ご機嫌で振る。
そんな2頭の姿は、今の黄昏れた気分の桜に追い討ちをかける。
そのセイか、こころなしか傷口からの痛みがズクズクと増す。
「……どうした? 桜?
やっぱり、傷口が傷むのか?」
珈琲を片手に戻って来た和輝に声を掛けられて、桜はハッとした表情をする。
「あぁ……ホッとしたら…
痛みが酷くなって来た………」
桜の言葉に頷いた和輝は、ミルクがたっぷりと入った珈琲のカップを手渡す。
「ミルクは○○特産の特濃
それに沖縄産の黒糖入りだ
少し甘めに入れたぞ」
和輝は桜が珈琲カップを受け取ったのを確認してから、話しかける。
「桜…そのボロボロになっちまった
デニムの上着とズボン切るぞ……
そのままじゃ…
傷口の手当をするのに邪魔だし…
傷口自体を水洗いしないと不味いからな
それに…その様子じゃ
どっちも自分で脱げないだろう」
和輝の言うとおり、桜のヒジやヒザの傷口の血は、既に乾いてしまっていた。
出血した量が結構あったらしく、デニムは傷口に付着し、その周辺はごわごわした不快な感触を桜に与えていた。
あうぅ~……安心したセイかな?
ヒジやヒザの傷口も痛いけど……
手の甲から、小指の周辺も痛い
変な熱を持ってる感じがするし
更にズクズクして痛い
「うん…自分で、脱げそうに無いから
切ってくれ……ソッと切って欲しい
なんか、かなり痛くなって来たから」
桜からの素直な反応に、改めてひとつ溜め息を吐いた和輝は、自分の裁縫箱にしまってある布切り専用の裁ち鋏みがあるかを確認する。
あぁ…あるな…そういや…
近所の子供もたぁ~に
そういう状態で来るの居たっけ
「……んじゃ、俺も一服すっか
したら、治療しようか………」
和輝の言葉に、桜は珈琲カップを両手で握ったまま頷く。
「うん……よろしく…」
桜が頷いたのを確認し、和輝は珈琲カップに口をつける。
桜同様、ミルクは入れたが、どちらかと言うとノンシュガー派の和輝は、口中に広がる珈琲特有の苦味と、ミルクのほんのりとした甘みに、今日の落胆を癒される。
はぁ~……さぁ~て………
どうしたモンかなぁ?
新しいバイト探さなきゃなぁ…
今度は、もう少し割りの良い
バイトにしよう…あそこは……
とりあえずってコトで
高校と家の往復路の途中に有る
場所だからって選んだだけで
あまり、時給の高さってモンは
こだわっていなかったけど………
今度のバイトは、せっかくだから
時給の高いところにしよう
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