お犬様のお世話係りになったはずなんだけど………

ブラックベリィ

013★治療の前にちょっと珈琲タイム


 「わりぃ~な、騒がしくって
  少し待っててくれるか?」

 そう言いながら、優奈と真奈が買い物に出かける姿を見送って、少し落ち着いた和輝は、桜を振り返る。
 そして、改めて椅子に座る桜の様子を観察する。

 うわぁ~…これは…はぁ~……
 あの警察官達にグズグズと
 呼び止められたセイだな

 怪我してから、結構な時間が
 経っちまってるセイかな?
 傷口の血がほとんど乾いやがる

 クソッ………皮膚とデニムに
 バッチリ血がこびり付いてるな
 コレは切らないとダメだな

 どっちにしても
 このままじゃ痛いよな

 和輝からの言葉に、桜は家屋の中という場所に入ったことで、ちょっとホッとした為にぼぉーっとしながら頷く。

 「あぁ………」

 頷く桜を確認した和輝は、2頭に飲ませる為に、台所に続くドアを開ける。
 台所に入った和輝は、とりあえず制服の上着を脱いでから、桜と2頭のボルゾイの為に飲み物を用意する。

 さて、何を飲ませたら良いかな?
 犬は水で充分だろうけど………
 どうも、桜はお嬢様っぽいからなぁ

 いや、でも…まっ……いっか……
 桜には、安直だけど珈琲で良いかな?
 親父が趣味で買い込んだヤツが
 未開封のままで、まだ結構あるし……

 …ぅん? ……あぁ……そういえば
 今月で、契約が切れるんだっけ……
 親父お気に入りの岩手県の牧場からの
 産直牛乳etc.

 少し寂しいけど………
 これで、少し月々の出費が減るな
 結構、岩手産の美味しいんだけどなぁ
 そうそう贅沢は出来ないもんな

 そんなコトを考えながら、和輝は珈琲メーカーに水と珈琲の粉をセットし、冷蔵庫を開けて、牛乳を確認する。

 「ふむ…牛乳は未開封のがあったな
  あぁそうだ……
  今日の3時のおやつ用に用意した
  ババロアがあったな

  治療が終わったら
  あとで生クリームと果物で飾って
  食べさせてやるかな?
  一応、アレルギーないか聞いてな

  その頃には、優奈も真奈も
  買い物を終わらせて
  帰ってくるだろうしな」

 これからの予定をざっと決めた和輝は、とりあえず、2頭の犬用にボウルに汲みたて水を入れて、待合室へと戻った。

 「とりあえず、この2頭には水な
  ほら……ヨシヨシ…飲んで良いぞ」

 和輝からの許可をもらった2頭は、乾いた喉を潤す為に用意されたボウルの水を飲み始める。

 「今、うちで使っている水は地下から
  ポンプで汲み上げている井戸水なんだ」

 よほど喉が渇いていたらしく、桜にそう説明している間に、あっさりと飲みきった2頭は、エヘラッと笑って無意識の胸張りポーズをとっていた。

 「勿論、病院の診療時に使っていたのは
  水道水だけどな…ぅん? できたかな?
  一応、桜には珈琲な
  ミルクや砂糖は入れるのか?」







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