話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

お犬様のお世話係りになったはずなんだけど………

ブラックベリィ

010★桜、ひっそりと落ち込む



 ボルゾイを2頭連れた兄の姿を見付けた2人は、嬉しそうに和輝に駆け寄ってくる。

 駆け寄る優奈と真奈に、和輝の左右に付いて素直に歩いていた2頭のボルゾイ〈レイ〉と〈サラ〉は、自分達に向かって走り寄って来た2人に、嬉しそうにしながら、飛び掛る態勢をとる………が。
 
 そんな状況を瞬時に理解りかいした優奈と真奈は、和輝が2頭を制止する為に命令を出す前に、鋭い声で命令する。

「「ストップ…ステイッ…ダウンッ」」

 優奈と真奈のハモッたサラウンドでの命令に、後ろ足で立ち上がりかけた2頭のボルゾイは、ピタッと動きを止めて、素直にその場にスタッと伏せて見せる。
 それを見た桜は、心底ガックリする。

 どぉーして、飼い主である桜の言うコトを聞かないのにぃ~
 他人の命令に対して、こんなにきちんと従うのよぉ~
 それも、どう見ても私より遥かに年下の女の子達にぃ……ぐっすん…

「ふぅ~…危ない危ない……
 流石に、あの大きさのワンちゃに飛び掛れたら怪我しちゃうもん
 でも、とっても素直で可愛いね、真奈ちゃん」

「うん、本当にね、優奈……ところで、和輝兄ぃ…
 この2頭って…もしかしなくても、その人の犬?って
 うわぁ~…すごい怪我だらけじゃん」

 2人の妹のそれぞれの言葉に頷きながら、和輝は今日もらった、昨日までのバイト代の中から、ツイッと1万円を出して言う。

「あぁ…野良猫と放し飼いの犬に続けざまにぶち当たったらしい
 それよりも、2頭ともかなり毛玉とか出来ているから………

 100円均一にでも行って、毛梳きに必要な道具を買って来てくれよ
 ペットコーナーにでも行けば、それなりの物が有るだろう

 ああ…残った分は………今月のお小遣いとしてやる……仲良く分けろよ」

 和輝の言葉と共に差し出された1万円を受け取った優奈は、真奈を振り返る。

「わぁ~い…真奈ちゃん……あまった分は、今月のお小遣いだってぇ~
 早く買いに行こうよ……うふ…何を買おうかなぁ……」

 そんな優奈に対して、少しだけ達観している分、ややクールな真奈が溜め息混じりに頷く。
 なまじ一卵性の双子なだけに、優奈の気持ちが手に取るように、よぉ~く理解わかるのだ。

「はいはい……ようするに、優奈は、あの2頭のボルゾイを
 早くいじりたいんだね」

 そう言って、そのまま買い物に出かけようとする双子の妹達に、和輝はすかさず注意する。

「あ~こらこら…そこを曲がって、少し行けばすぐに家なんだから
 とりあえずは、家に入ってカバン置いてから買い物に行け
 その方が、ゆっくりと選べるぞ」

 和輝からの言葉に、ペロッと舌を出した優奈は、隣りを歩く真奈に肩を竦めてみせる。

「怒られれちゃった…」

 そんな優奈に、真奈は何時もの調子で応える。

「当たり前でしょう優奈、和輝兄ぃの言う通りだよ
 どうせ、家はもうすぐそこなんだからさ

 邪魔なカバンを置いてから、買い物行こうね
 優奈だって、ゆっくりとお手入れの道具を選びたいでしょ」

 そんなクールな真奈に、優奈が頬をぷぅ~っと膨らませて言う。

「ぶぅ~…真奈ちゃんだって……あの子達に早く触りたいでしょう
 どぉ~してそんなにクールなのぉ…滅多に無いチャンスなのに………」









「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く