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お犬様のお世話係りになったはずなんだけど………

ブラックベリィ

007★ボルゾイはサイトハウンドです



 溜め息混じりの言葉と、その視線の先でのやり取りに、和輝は肩を竦めてみせる。

「ああいう人達って、たいがいにおいて我がままですから………
 特に小型犬を飼っている人が、そういうの顕著かな?

 一事が万事ですよ………その理由っていうのがねぇ………
 身体が小さいから周りの迷惑にならないって、思っているんですよ

 実際には飼い主のマナーの問題で………
 犬の大きさと迷惑度って関係ないんですけどね

 本音を言えば、もう少しマメに巡回して注意して欲しいですね
 今日だって俺の予定が変わって、こうして早く帰って来たから
 大事には至りませんでしたけどね

 結局は、捨て猫された結果、そこら中に増えた野良猫や放し飼いが原因で
 桜はこうなったんですから……

 その上、誰も桜のコトを助けてくれませんでしたからね
 もっときちんと見回りして下さい

 あと、マジで桜の手当をさっさとしないといけないんですよね
 いい加減、帰るの邪魔しないでくれます?

 言ったでしょう、雑菌はいると膿むんですよ
 それだけ治癒に時間もかかるし、桜がつらい目にあうんです

 それとも、その嫌がらせ……いや、貴方は、変態なんですか?
 もしかして、女の子が怪我している姿を楽しんでいるんですか?

 他の警察官はちゃんと、危ない人達を注意しに行っているのに……

 もしかして、今、この辺の小学校で問題になっている
 小学校の周りを徘徊している変質者なんですか?」

 非難を込めた言葉に、反論を見付けられないが、目の前の超がつく大型犬の存在は見逃せないという偏見に凝り固まった警察官に、和輝ははっきりと再度言う。

「あまり傷口を放置すると、化膿してしまいますので………
 治療しなきゃなりませんから、これで失礼します

 〈レイ〉…〈サラ〉…スタンダップ…カムオン

 あと、これ以上、俺達が家に帰るのを邪魔するなら、訴えますからね
 女の子が怪我で苦しんでいる姿を楽しむ為に、帰宅して治療するのを
 邪魔する、変態嗜好の持ち主は、迷惑なんで、罷免してくださいってね」
 
 進路を塞ぐように立つ警察官に嫌悪を込めた双眸で見下しながら、言外に化膿したらあんたらのセイだと言っても、まだ何か言いたげに纏わり付こうとするのを和輝は無視するコトにした。

 ったく、偏見に凝り固まったヤツは、コレだから困るぜ
 あぁ~…コイツのセイで、嫌なコトを思い出しちまったぜ

 独断と偏見から来る、変な正義感でもって他人を糾弾し
 はき違えた正義とやらで、平気で他人を傷付け、断罪する奴等

 じゃない…ったく、コイツのセイでマジで嫌なコトを思い出しちまったぜ
 こっちは、さっさと桜の傷口の治療してなきゃって思っているのに

 怪我をした桜を腕に抱いたまま、和輝は2頭のボルゾイに号令して、その迷惑な警察官の横をすり抜けて再び歩き出す。

 〈レイ〉も〈サラ〉も、楽しそうに尻尾を振りながら、和輝の両サイドを守るように、ピタッと付いて歩く。
 流石、元はロシア貴族の愛玩犬、護衛犬も兼ねていただけある行動だった。

 和輝の命令に、素直に従う2頭の姿に、迷惑犬を注意して、仲間の元に戻って来た警察官は肩を竦める。

 そして、たった今味わった、困ったオバサンの話しに入るが、やはり超大型犬を連れた和輝が気になり、2頭を連れて歩く姿を何度も振り返っていた。

 ただ、流石に、最後まで和輝達の側に残った者達は、女の子の苦しむ様子を楽しむ変態呼ばわりされただけに、苦笑いするしかなかった。

 そこに、最初に離脱した警察官達も戻ってきていたが、和輝は一切振り返らなかった。

 背中に警察官達の視線を感じていた和輝は、桜を腕に抱いたまま、2頭を連れて何も言わずに、家に向かって歩き続けた。

 そんな中、ずっと沈黙していた桜は、その場から離れ、警察官達の視線が無くなってしばらくしてから、口を開いた。

「…その……ありがとう………すごく助かった………」

 細い声で言う桜に、和輝はクスッと笑って言う。

「まぁー…しょうがねぇーじゃん……
 良猫に横切られたり、犬のケンカにぶち当たったんじゃ

 確か、こいつらって…猟犬だろ…サイトハウウンドって部類の………
 目の前で獲物が走ったりしたら、本能で追いかける習性あんだしさ

 でも、2頭を1人で散歩するっていうのは無茶だと思うぞ
 ちなみに、今の桜の体重って、どれぐらいだ?」

 和輝に、そう話しを振られた桜は?を浮かべながらも、何も考えずに答えた。

「えっ?……体重?……私のか?……
 最近、体重計に乗ってないから、正確なのはわからないけど……

 あまり変動して無いみたいだから、たぶんだけど
 33キロ~34キロぐらいかなぁ?……それがどうかしたのか?」







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