お犬様のお世話係りになったはずなんだけど………

ブラックベリィ

005★警官VS和輝



 和輝かずきは、桜に向かって言う。

「まぁ…取り敢えず…その手足……ウチで治療した方が良いな……」

 そう言う和輝かずきに、おっとり刀で来た警官達が話しかける。

「………そこの君………その犬……君のいぬかい?」

 その問いかけを聞いた瞬間、和輝かずきの抱き上げた腕の中で、桜がビクンッと身体を揺らす。
 大きな犬を連れ歩いたコトをとがめられると感じて………。

 そんな桜に、ちょっと同情したした和輝かずきは、問いかけてきた警官達へと視線を向ける。

 小柄こがらな桜が、2頭の超大型犬に引きられている姿を見て
 誰かが通報したんだな……まったく、余計なことを………

 縮こまった桜の様子に、内心で舌打ちした和輝かずきは、警官達を観察する。

 ったく、今頃かよ…遅すぎだろう……その上で、いかにもな質問て……
 なんの為の警察なんだか………けっ…お巡りさんじゃなくて……

 ひまわりさんって改名した方がイイんじゃねぇ~のか?
 ったく……いや、言わねぇ~けどよぉ~…面倒だから

 こういう、親切ごかしふうに問いかけてくる
 お巡りって面倒くさいんだよなぁ……はぁ~…うざいぜ

 そんなコトを内心で思いつつも、和輝かずきは人当たりの良い表情をこころがけながら言う。

「ああ…お騒がせすみませんでした…この2頭は、俺が飼っているいぬです
 普段は、俺も一緒にこいつらの散歩しているのですが
 今日は用事があって、桜に散歩を頼んだんです

 ほら、ここ最近、全然天気が良くなかったので………
 幸い、俺の用事もそんなに時間を取られずに帰って来れたんですけどね

 どうやら、途中で俺の匂いに気付いたようで、俺ンところに向かって
 嬉しそうに走って来ちゃったんですよ」

 和輝かずきは、その2頭は危険だと、注意しようとする警官達の言葉をさえぎるように、先を制してそう言う。
 そして、自分の前でおとなしくお座りしている2頭のいぬの頭を、当然のように撫でる。
 が、その内心は………。

 あぁ……うざったい……初動がとろくさいクセに………
 こいつら連れた桜を注意する暇あったら

 引き綱外して野放しにしているのや
 引き綱をやたらとズルズルと伸ばして、ダラダラと歩いている

 迷惑なオバサンやオジサンを注意しろってーの
 引き綱の意味ねぇーコトしてんだから

「見ての通り、2頭とも、普段はこの通りおとなしいいぬなんです
 今、なんでこんなところで暴走したのかを、桜に聞いたところなんです

 本当に、困ったもんですよねぇ~………
 ちゃ~んと、管理されていない猫やいぬってヤツは

 今も、少し前に性悪な野良猫がケンカしながら飛び出して来て
 眼前を横切られたコトに驚いて走ってしまったようです

 あと、飼い主不在らしい、野良犬のらいぬがケンカしているのを見て
 更に興奮してしまったようなんですよね

 この辺でも、まだいるんですねぇ~……野良犬のらいぬ……怖いですよね
 ケンカしているってコトは、何匹か居たってコトですよね

 危ないですから、早く捕獲なりなんなりして欲しいですね
 良かったですよ、こいつらにケンカを売りに来なくて………

 野良ってコトは、狂犬病きょうけんびょうや色々なワクチンを打っていないいぬですもんね
 そういうのは、市民の安全の為にも、ちゃんとしてもらいたいですよね

 いや、それにしても、本当に、すみませんでした 
 2頭のボルゾイの散歩を、桜ひとりで行かせたのは、俺の落ち度です
  
 警察官の皆さんには、大変ご心配をおかけしましたが……

 この通り、この2頭のボルゾイは、由緒正しい優秀な血統を持つ
 厳しく躾けられたボルゾイです

 その辺の、躾けというモノをまるっきり出来ていない危険ないぬとは
 見ての通り、全然違いますから大丈夫ですよ」

 そう和輝かずきは言い切り、にっこりと笑う。

 





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