公爵令嬢クリスのトラウマ

　私の人生が大きく変化したのは１０歳の時、王家主催の社交パーティーに参加した。
　この国では１０歳になると社交界デビューしなければならない、と言うルールがあって私もこの日の為にダンスやマナーのレッスンを受けてきた。
　何せ、同世代には王子様がいてこの社交パーティーも王子様の婚約者選びも兼ねている。
　両親の私に対する期待も半端なく『絶対に王子と親しくなるんだぞっ！』とか『最初が肝心なんだから愛想よくしなさいっ！』とか口煩く言われてきた。
　私も『アーメント家の為にっ！』と気合いが入っていた。
　今考えてみたらわかるんだけど私の失敗の理由の１つに慣れないヒールを履いて来てしまった事にある。
　普段から履いているならまだしもこの時私は初めてヒールを履いたので動きづらかった。
　ヒールを履いての動きの練習もしておけば良かった······。
　両親に付き添ってもらいながら王子様に挨拶をする時がやって来た。
「はじめまして、クリス・アーメントと申します」
「第一王子のレイスだ、今日は来てくれてありがとう」
　挨拶はちゃんと出来て安心したのだがこの直後に悲劇はやって来た。
　一歩踏み出そうとした瞬間、私は盛大にスッ転んでしまったのだ。
「ぶへらっ！？」
　しかも顔面からダイブしてしまい私は顔を抑えてのたうち回った。
　痛いのもあるし王子様の前での大失態で恥ずかしかった。
「だ、大丈夫かい？」
「ひ、ひゃいなんとか······」
　周りの視線が痛くてその場から逃げたい気持ちになった。
　が、悲劇はこれで終わらなかった。
　勢いよく立ち上がろうとした瞬間、バランスを崩して今度は後ろに倒れてしまった。
「ギャンッ！！」
　後頭部をもろに打ってしまったは私は気を失ってしまい気がついたら自宅のベッドの中でした······。
　こうして私の社交デビューは大失敗に終わりその後出る事もなかった。

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