食洗機からこんにちは

ペニヲ

初めてのバイト


裕福な家庭で育って
何不自由なく生活をしていた

フランスの美術大学を卒業後
父の友人のレストランで
働かせてもらうことに

働かなくていいのよ、と
母に言われたが
私は、働いてみたかった

仕事って楽しそうじゃない?

バイトすらしたことがない私
何度も客としてこの店には来ている
ここは高級レストラン、
 “トゥルヌソル”
フランス料理と、日本人の口に合う食事も
提供してくれている
私は、中でもビシソワーズが
お気に入り。
祖母も好きなスープで
よく注文をしていた。

コース料理のスープは
玉ねぎをゆっくりと煮込んだ
コンソメスープ、それも美味しいんだけど
私は祖母と食べるビシソワーズが
思い出に残っている。

祖母は、私が中学を卒業してすぐ
亡くなってしまった…

高校には、半年くらい行けず、
祖母が亡くなったことが
つらくて、正直、高校生活をあまり
覚えていない。

バイト初日、注文をミスったり
レジの使い方が分からず
お客様に怒鳴られたり…

散々。やめようかしら。

しょぼくれていたら、
店長の息子のルイが

 初めてだから仕方ないよ!
 大丈夫!僕もよくやるよ!

と、励ましてくれた。
ありがとう。

皿洗いをしてと頼まれ
皿洗いをしていた

こんなに毎日何枚もお皿を
洗っているの?
手が荒れるわ。

高級レストランのこだわりの
アビランド、エルキューイ、
エルメスなどの高いお皿、
ナイフ、フォーク…

 ねぇ、ルイ。食洗機使ってないの?

忙しそうなルイに話かけた

 あ、うちは使わない事になったんだ
そう言われて、食洗機を少し除いた

新品だわ。使ったことがないのね
食洗機でお皿が割れることはないから
使えばいいのに。
これを使えば人件費が浮くわよ。

 あ〜疲れた。これ、使うわね
忙しそうなルイに、
食洗機を使うと言ったが
空返事だった。

食洗機にお皿を入れ
少し休憩する事にした


 おい、起きろ!

ルイが少し怒りながら
私を起こした。

 あら、寝てしまいました。

勝手に厨房の奥の部屋に入って
ソファーで寝ていたのだ。
呆れたルイは、もう上がりの時間だよ
お疲れ様、と言った

 そう、お疲れ様でした
 今日はとても疲れたわ

ルイは無言で洗い物の続きをした

 あ、食洗機を使ったの
 綺麗になったでしょ?

ルイは驚いた顔をして
中を除いた

 中に何も入ってないけど

あら?と言って私も中を見た
ないわね。どこに行ったのかしら。
ルイは、君お皿をどこにやったの?
と聞いてきたが、
私もわからないので、お皿はここに入れて…
そのあとは分からないわと答えた。

ルイは、私がお皿を割って処分したと
考えていたみたいだった。

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