冷遇タンク 〜魔王軍に超高待遇でヘッドハンティングされた〜
第7話 対決
「おっ……おおおっ……!?」
ハフマンは押されに押され、遂に魔王の間の壁まで追いやられた。
「チッ、情けねぇぜ……おい変われハフマン! 俺がやる!」
と、獣人の男が吠える。
「下がっていろリオン!」
「テメェが下がってろ!」
おい、仲間割れしてる暇があるのか?
「一人、二人増えたところで変わらんぞ」
「「っ! テメェアアアアアアアアア!」」
リオンの姿が、人型から二足歩行のライオンへと変わる。
「《ライオネル・クロー》!」
リオンの腕が巨大化し、鋭利な爪が凶悪さを増す。
挟撃か。なら。
「《フル・シールド》」
俺の持つ大盾が十枚のプレート状に崩れ、俺を囲うように浮かび上がる。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラッッッ!!!!」
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!」
ハフマンの《メテオ・ラッシュ》と、リオンの《ライオネル・クロー》を全て防ぐ。
どんなにフェイントを入れようと、どんなにパワーを込めようと、その全てを防ぎ、弾き、俺へのダメージを許さない。
はぁ……いくらやっても無駄だと言うのに。
「何やってるのかしら、あの子達は……イム、私達も行くわよ」
「俺、マザル。ルシ、要ラナイ」
「要らないって酷くない?」
ん? どうやら、残りのあいつらも混ざるみたいだ。
「そこの二人、来な。四人まとめて相手してやるよ」
「……調子乗ってるわね」
「調子、乗ッテル。俺、潰ス」
イムとルシが、ムッとした顔で俺に向かって走って来た。
さあ……俺を楽しませてみろ。
◆◆◆
──私は、夢を見ているのだろうか?
背中に冷や汗が流れてるのが分かる。
私の防衛本能が、この人間はヤバいと警告を上げる。
かれこれ十分弱。私達四人で、休む暇を与えず攻撃をしたはず。
私達は魔王軍幹部。四天王と呼ばれ、人間は愚か同族の魔族からも畏れられる存在。
その四人の猛攻を前にして、この男は……今だ、無傷で仁王立ちしていた。
もう、私の魔力は底を尽きている。
スライムのイムも、もう原型を留めていない。
獣人のリオンは獣化も解け、血だらけになった腕を力なく垂らしている。
ハフマンも全ての腕の拳が砕け、跪いていた。
私達、四人を相手にしても、決して折れず、決して負けず、決して砕くことの出来ない……最強の、盾。
おかしい……二〇年以上前に戦った人間のタンクは、こんなに堅くなかった。
……何なの、この男は……本当に……人間、なの……?
この人間に勝てないことへの屈辱。
この人間に届かないことへの絶望。
今まで生きてきて、これ程の感情を持ったのは、メネット様と対峙した時以来。……いや、それ以上かも……。
私達の攻撃を受けきった人間は、ゆっくりと私達を見渡し、口を開いた。
「ふむ……もうおしまいか?」
……あぁ……この男は……この方は、まだ本気すら出していなかったのね……。
その言葉を聞き、私は……私達は、静かに敗北を受け入れた……。
◆◆◆
あっっっっっぶねぇ……! もう少しでスキルを破られる所だった……!
一人一人なら問題ないけど、流石にまとめては調子に乗り過ぎました。すみません。
いやー、メネット程じゃないが、四天王が束になるとやっぱりヤバいな。強さの桁が違いすぎる。
「はい、ご苦労様でした、皆さん。どうです? レトさんは凄いでしょ?」
メネットが、まるで自分のことのようにドヤ顔を決める。お前何もしてないだろ……。
「……悔しいが、認める他ないな……」
「クソッ……おい人間! 次は俺一人でお前に勝てるようになってやるよ!」
「認メル。人間、仲間」
「ええ。私達四人で負けたのです。受け入れるしかないでしょう」
ホッ……良かった。これで受け入れられなかったら、どうしようかと思ってた。
「師匠、カッコよかったですのー! ムニもやりますの!」
「師匠様、エルもやりますの!」
ムニとエルが、俺の腰に抱き着いてくる。まあ、人間の俺でもあれくらい強くなれるんだし、こいつらが本気出したらいつか俺を超えるかもな。
「あの、メネット様。発言をよろしいでしょうか?」
「はい、ルシちゃん」
「私達は、今まで四天王として最強を自負して来ました。その攻撃を受け切った、彼のステータスを見たいのですが……」
「あ、そう言えば私も見せてもらったことがないですね。レトさん、いいですか?」
んー……ま、減るもんでもないし、別にいいか。
「いいぞ。ほれ」
ステータスボードと呼ばれる、自分の能力値を示したものを開くと、この場にいる全員に見せた。
ステータス
名前:レト・タンカー
レベル:850
職業:タンク
物理攻撃力:35,000
物理防御力:999,999,999
魔法攻撃力:0
魔法防御力:999,999,999
スピード:14,500
スキル:タンク系スキル全般
「「「「「…………はあっ!?」」」」」
まあ、そんなリアクションになるよな。
苦笑いを浮かべてると、ムニとエルは俺の肩によじ登って、目を輝かせた。
「師匠の物理防御力と魔法防御力、すっっっごいですの!」
「かっちかちですの!」
「だろ? お前達にも、このステータスを目指してもらうからな」
「「はいですのー!」」
うむ、元気な返事だ。
「「「「「待て待て待て待て!?」」」」」
え、何?
「な、なななな何ですかこの異常な数値は!? こんなの有り得ないですよ!?」
「いや、実際有り得てるし……」
「で、でも……一体どうやって……!?」
「あ、どうやってって聞かれても答えないぞ。悪いが、ここから先はタンクを目指す奴にしか教えないんだ」
なんて言ったって、数千年に及ぶタンカー家の秘伝が詰まってるからな。
そう易々と教えられんのよ。
「今の弟子はムニとエルだ。今は、この二人以外に教えるつもりはない」
二人の頭を撫でると、俺の肩の上でにへへーと笑った。可愛い奴らだ。
と、何だかんだあったが、俺は無事(?)魔王軍へと迎え入れられたのであった。
さあ、いよいよ始まるぞ、タンク復興の道が!
ハフマンは押されに押され、遂に魔王の間の壁まで追いやられた。
「チッ、情けねぇぜ……おい変われハフマン! 俺がやる!」
と、獣人の男が吠える。
「下がっていろリオン!」
「テメェが下がってろ!」
おい、仲間割れしてる暇があるのか?
「一人、二人増えたところで変わらんぞ」
「「っ! テメェアアアアアアアアア!」」
リオンの姿が、人型から二足歩行のライオンへと変わる。
「《ライオネル・クロー》!」
リオンの腕が巨大化し、鋭利な爪が凶悪さを増す。
挟撃か。なら。
「《フル・シールド》」
俺の持つ大盾が十枚のプレート状に崩れ、俺を囲うように浮かび上がる。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラッッッ!!!!」
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!」
ハフマンの《メテオ・ラッシュ》と、リオンの《ライオネル・クロー》を全て防ぐ。
どんなにフェイントを入れようと、どんなにパワーを込めようと、その全てを防ぎ、弾き、俺へのダメージを許さない。
はぁ……いくらやっても無駄だと言うのに。
「何やってるのかしら、あの子達は……イム、私達も行くわよ」
「俺、マザル。ルシ、要ラナイ」
「要らないって酷くない?」
ん? どうやら、残りのあいつらも混ざるみたいだ。
「そこの二人、来な。四人まとめて相手してやるよ」
「……調子乗ってるわね」
「調子、乗ッテル。俺、潰ス」
イムとルシが、ムッとした顔で俺に向かって走って来た。
さあ……俺を楽しませてみろ。
◆◆◆
──私は、夢を見ているのだろうか?
背中に冷や汗が流れてるのが分かる。
私の防衛本能が、この人間はヤバいと警告を上げる。
かれこれ十分弱。私達四人で、休む暇を与えず攻撃をしたはず。
私達は魔王軍幹部。四天王と呼ばれ、人間は愚か同族の魔族からも畏れられる存在。
その四人の猛攻を前にして、この男は……今だ、無傷で仁王立ちしていた。
もう、私の魔力は底を尽きている。
スライムのイムも、もう原型を留めていない。
獣人のリオンは獣化も解け、血だらけになった腕を力なく垂らしている。
ハフマンも全ての腕の拳が砕け、跪いていた。
私達、四人を相手にしても、決して折れず、決して負けず、決して砕くことの出来ない……最強の、盾。
おかしい……二〇年以上前に戦った人間のタンクは、こんなに堅くなかった。
……何なの、この男は……本当に……人間、なの……?
この人間に勝てないことへの屈辱。
この人間に届かないことへの絶望。
今まで生きてきて、これ程の感情を持ったのは、メネット様と対峙した時以来。……いや、それ以上かも……。
私達の攻撃を受けきった人間は、ゆっくりと私達を見渡し、口を開いた。
「ふむ……もうおしまいか?」
……あぁ……この男は……この方は、まだ本気すら出していなかったのね……。
その言葉を聞き、私は……私達は、静かに敗北を受け入れた……。
◆◆◆
あっっっっっぶねぇ……! もう少しでスキルを破られる所だった……!
一人一人なら問題ないけど、流石にまとめては調子に乗り過ぎました。すみません。
いやー、メネット程じゃないが、四天王が束になるとやっぱりヤバいな。強さの桁が違いすぎる。
「はい、ご苦労様でした、皆さん。どうです? レトさんは凄いでしょ?」
メネットが、まるで自分のことのようにドヤ顔を決める。お前何もしてないだろ……。
「……悔しいが、認める他ないな……」
「クソッ……おい人間! 次は俺一人でお前に勝てるようになってやるよ!」
「認メル。人間、仲間」
「ええ。私達四人で負けたのです。受け入れるしかないでしょう」
ホッ……良かった。これで受け入れられなかったら、どうしようかと思ってた。
「師匠、カッコよかったですのー! ムニもやりますの!」
「師匠様、エルもやりますの!」
ムニとエルが、俺の腰に抱き着いてくる。まあ、人間の俺でもあれくらい強くなれるんだし、こいつらが本気出したらいつか俺を超えるかもな。
「あの、メネット様。発言をよろしいでしょうか?」
「はい、ルシちゃん」
「私達は、今まで四天王として最強を自負して来ました。その攻撃を受け切った、彼のステータスを見たいのですが……」
「あ、そう言えば私も見せてもらったことがないですね。レトさん、いいですか?」
んー……ま、減るもんでもないし、別にいいか。
「いいぞ。ほれ」
ステータスボードと呼ばれる、自分の能力値を示したものを開くと、この場にいる全員に見せた。
ステータス
名前:レト・タンカー
レベル:850
職業:タンク
物理攻撃力:35,000
物理防御力:999,999,999
魔法攻撃力:0
魔法防御力:999,999,999
スピード:14,500
スキル:タンク系スキル全般
「「「「「…………はあっ!?」」」」」
まあ、そんなリアクションになるよな。
苦笑いを浮かべてると、ムニとエルは俺の肩によじ登って、目を輝かせた。
「師匠の物理防御力と魔法防御力、すっっっごいですの!」
「かっちかちですの!」
「だろ? お前達にも、このステータスを目指してもらうからな」
「「はいですのー!」」
うむ、元気な返事だ。
「「「「「待て待て待て待て!?」」」」」
え、何?
「な、なななな何ですかこの異常な数値は!? こんなの有り得ないですよ!?」
「いや、実際有り得てるし……」
「で、でも……一体どうやって……!?」
「あ、どうやってって聞かれても答えないぞ。悪いが、ここから先はタンクを目指す奴にしか教えないんだ」
なんて言ったって、数千年に及ぶタンカー家の秘伝が詰まってるからな。
そう易々と教えられんのよ。
「今の弟子はムニとエルだ。今は、この二人以外に教えるつもりはない」
二人の頭を撫でると、俺の肩の上でにへへーと笑った。可愛い奴らだ。
と、何だかんだあったが、俺は無事(?)魔王軍へと迎え入れられたのであった。
さあ、いよいよ始まるぞ、タンク復興の道が!
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