パーティーを追放された俺は、隠しスキル《縁下》で世界最強のギルドを作る
第3話 強くなるために
念の為に、ネズヒコに声が聞こえないように、風魔法で音を遮る。
「おい、鴨がネギを背負って来たぞ」
「表現が独特過ぎですが……ジオウさんの言いたいことは分かります」
リエンが呆れたように言うと、ミミさん以外うんうんと頷いた。
「え? あ、あの、何のことですか?」
「ミミさん。俺達【虚ろう者】は、絶賛勢力拡大中だ。それは説明したな?」
「は、はい……」
「今俺達の資金源になってるのは、レアナの指名依頼主のミヤビ大商会と貴族が二つ。それにエルフ族の里だ。そろそろ、もう一つ資金源を確保したいと思ってたところなんだよ」
「え……ま、まさかっ」
そう、そのまさかだ。
自分でも分かるほど、人の悪い笑みを浮かべてネズヒコを見る。
「俺達の力であいつを獣王にする。その恩を着せて、あいつを俺達と獣人の国のパイプ役に無理やり据える」
俺の案を、ミミさんは唖然と、他の奴は呆れたように聞いていた。
「まあ、私は賛成だけど……どうするの? ジオウと契約するの?」
「いいや、契約はしない。弱いまま俺と契約すると、倍増した力を自分の力と勘違いするだろうからな」
特に、あそこまで明確に敵意や憎悪を抱いてると、獣王になったとしても間違いなく今の獣王の二の舞だ。
「だがジオウ殿。少年はかなり頑固そうに見えるが、私達の誘いに乗ってくるか?」
「乗る。絶対に」
これは予感ではなく、確信だ。
俺は話しを切り上げると、ネズヒコの元に戻った。
「ネズヒコ、一つ提案がある。が、その前に聞く」
「何っスか?」
「お前の獣としての本能からして、後ろのこいつらはどう見える?」
「どう、って……」
ネズヒコは首を動かしてレアナ達を見る。
その顔が徐々に青ざめていき、体中から脂汗が吹き出した。
今ネズヒコの目で、こいつらがどう見えてるかは分からないが……反応を見るに、化け物か何かに見えてるだろうな。
「こいつらと獣王トラキチは、どっちが強い?」
「み、皆さんの方がお強いっス……!」
まあ、そりゃそうだろう。今この世界で、こいつらより強い奴なんてそうそういないだろうからな。
「その上で提案だ。こいつらが、お前を獣王が倒せるレベルまで育て上げる。お前が獣王を倒したい本当の理由は聞かない。どうだ、悪くない提案だと思わないか?」
「んなっ!?」
ネズヒコは驚いたような顔をしたが、直ぐに警戒するような目で俺を睨む。
「……何が目的っスか……!」
やっぱ気になるよな。
「端的に言えば、お前が獣王を倒せば俺達にも利益がある。お前も強くなって、本当の目的のために正々堂々と獣王を倒せる。どうだ?」
「…………っ」
……悩んでるな。まあ、そりゃそうか。俺だって同じ立場なら、悩むに決まってる。
ネズヒコは腕を組み、首を捻り、考えに考えて……。
「……お願いするっス……自分、どうしても強くなって、あいつを倒したいっス!」
「よし! なら条件だ!」
「承諾後に条件提示って酷くないっスか!?」
それを言うなら、俺にこれを仕込んだアデシャ族長に文句言ってくれ。
「お前を強くする条件。それは、お前が次期獣王になることだ」
「…………へぁ?」
唖然とすること数秒。ネズヒコは顔を真っ青にして全力で首を横に振った。
「む、無理無理無理! 無理っス! 自分に王様なんて無理っスよ!」
「何でだ?」
「だ、だって自分、ネズミの獣人っス……王様は代々肉食の獣人しかなれなくて……それにチビだし……」
「だからこそだ」
「……え?」
ネズヒコの前にしゃがみこみ、真っ直ぐ目を見る。
「お前は、今の獣人の国で虐げられている人達の気持ちをよく知っている。お前は、ネズミの獣人故に弱い者の気持ちをよく知っている。弱い者の味方であるお前は、誰よりも優しく、偉大な王になれる。俺が保証する」
さあネズヒコ、後はお前の心次第だぞ。
待つこと数秒か、十数秒か……ネズヒコは、ゆっくり口を開いた。
「……自分に……なれる、っスか……?」
「ああ」
「……強く、なれる、っスか……?」
「勿論だ」
「……みんなを、助けられる、っスか……?」
「お前が望むなら」
「…………」
今まで、憎悪と怒りの感情しか見えなかった瞳に……しっかりとした信念のようなものが芽生えた。
「自分……自分、やるっス! 頑張るっス!」
「おう。なら俺達のことは、これから先生と呼ぶように。あとで自己紹介も兼ねて、うちに行こうな」
「おっス! 先生方、ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いするっス!」
平伏叩頭。砂浜の上で綺麗な土下座をするネズヒコ。
…………。
クックックックック……今まで獣人の国との交流は諦めていたが……思わぬ所で、いい拾い物をしたぜ……。
「……ジオウ、あんた詐欺師?」
「今のジオウ君、かなりの悪人面よ……」
「お兄ちゃん、悪魔、です」
失礼な、黙らっしゃい。
「おい、鴨がネギを背負って来たぞ」
「表現が独特過ぎですが……ジオウさんの言いたいことは分かります」
リエンが呆れたように言うと、ミミさん以外うんうんと頷いた。
「え? あ、あの、何のことですか?」
「ミミさん。俺達【虚ろう者】は、絶賛勢力拡大中だ。それは説明したな?」
「は、はい……」
「今俺達の資金源になってるのは、レアナの指名依頼主のミヤビ大商会と貴族が二つ。それにエルフ族の里だ。そろそろ、もう一つ資金源を確保したいと思ってたところなんだよ」
「え……ま、まさかっ」
そう、そのまさかだ。
自分でも分かるほど、人の悪い笑みを浮かべてネズヒコを見る。
「俺達の力であいつを獣王にする。その恩を着せて、あいつを俺達と獣人の国のパイプ役に無理やり据える」
俺の案を、ミミさんは唖然と、他の奴は呆れたように聞いていた。
「まあ、私は賛成だけど……どうするの? ジオウと契約するの?」
「いいや、契約はしない。弱いまま俺と契約すると、倍増した力を自分の力と勘違いするだろうからな」
特に、あそこまで明確に敵意や憎悪を抱いてると、獣王になったとしても間違いなく今の獣王の二の舞だ。
「だがジオウ殿。少年はかなり頑固そうに見えるが、私達の誘いに乗ってくるか?」
「乗る。絶対に」
これは予感ではなく、確信だ。
俺は話しを切り上げると、ネズヒコの元に戻った。
「ネズヒコ、一つ提案がある。が、その前に聞く」
「何っスか?」
「お前の獣としての本能からして、後ろのこいつらはどう見える?」
「どう、って……」
ネズヒコは首を動かしてレアナ達を見る。
その顔が徐々に青ざめていき、体中から脂汗が吹き出した。
今ネズヒコの目で、こいつらがどう見えてるかは分からないが……反応を見るに、化け物か何かに見えてるだろうな。
「こいつらと獣王トラキチは、どっちが強い?」
「み、皆さんの方がお強いっス……!」
まあ、そりゃそうだろう。今この世界で、こいつらより強い奴なんてそうそういないだろうからな。
「その上で提案だ。こいつらが、お前を獣王が倒せるレベルまで育て上げる。お前が獣王を倒したい本当の理由は聞かない。どうだ、悪くない提案だと思わないか?」
「んなっ!?」
ネズヒコは驚いたような顔をしたが、直ぐに警戒するような目で俺を睨む。
「……何が目的っスか……!」
やっぱ気になるよな。
「端的に言えば、お前が獣王を倒せば俺達にも利益がある。お前も強くなって、本当の目的のために正々堂々と獣王を倒せる。どうだ?」
「…………っ」
……悩んでるな。まあ、そりゃそうか。俺だって同じ立場なら、悩むに決まってる。
ネズヒコは腕を組み、首を捻り、考えに考えて……。
「……お願いするっス……自分、どうしても強くなって、あいつを倒したいっス!」
「よし! なら条件だ!」
「承諾後に条件提示って酷くないっスか!?」
それを言うなら、俺にこれを仕込んだアデシャ族長に文句言ってくれ。
「お前を強くする条件。それは、お前が次期獣王になることだ」
「…………へぁ?」
唖然とすること数秒。ネズヒコは顔を真っ青にして全力で首を横に振った。
「む、無理無理無理! 無理っス! 自分に王様なんて無理っスよ!」
「何でだ?」
「だ、だって自分、ネズミの獣人っス……王様は代々肉食の獣人しかなれなくて……それにチビだし……」
「だからこそだ」
「……え?」
ネズヒコの前にしゃがみこみ、真っ直ぐ目を見る。
「お前は、今の獣人の国で虐げられている人達の気持ちをよく知っている。お前は、ネズミの獣人故に弱い者の気持ちをよく知っている。弱い者の味方であるお前は、誰よりも優しく、偉大な王になれる。俺が保証する」
さあネズヒコ、後はお前の心次第だぞ。
待つこと数秒か、十数秒か……ネズヒコは、ゆっくり口を開いた。
「……自分に……なれる、っスか……?」
「ああ」
「……強く、なれる、っスか……?」
「勿論だ」
「……みんなを、助けられる、っスか……?」
「お前が望むなら」
「…………」
今まで、憎悪と怒りの感情しか見えなかった瞳に……しっかりとした信念のようなものが芽生えた。
「自分……自分、やるっス! 頑張るっス!」
「おう。なら俺達のことは、これから先生と呼ぶように。あとで自己紹介も兼ねて、うちに行こうな」
「おっス! 先生方、ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いするっス!」
平伏叩頭。砂浜の上で綺麗な土下座をするネズヒコ。
…………。
クックックックック……今まで獣人の国との交流は諦めていたが……思わぬ所で、いい拾い物をしたぜ……。
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