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パーティーを追放された俺は、隠しスキル《縁下》で世界最強のギルドを作る

赤金武蔵

第18話 嫌悪

「愛しき眷属達よ、奴らの肉体を食い散らかし、我が眼を持ってくるのだ」


 くっ……! 一体一体は弱いけど、数が多すぎる……このままじゃ……!


 一点型の白炎ではなく、範囲型の蒼炎を操りゴキを消滅させていく。


 アンデッドマジシャンが物理結界を張ってくれているから、撃ち漏らしたゴキが私達に近付くことはない。けど……よく見るとこのゴキ……結界を食い破ろうとしてる!?


「この!」


 この結界は物理攻撃を防ぐが、魔法攻撃は通す。それを利用し、内側から燃やしていく。でも、かなりキツイ……!


「り、リエン! 広範囲の魔法、お願い出来る!?」


「にぎゃーーーーー! 無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理ーーーーーーーー!!!!」


 あっちもあっちで、手一杯みたい……どうしよう、このままじゃ……!


「リエン、一旦任せるわ!」


「ふぇっ!? わわわわわわわわ分かりましたぁ!」


 レーヴァテインを鞘にしまい、魔力を練る。広範囲の魔法は苦手だけど……行くわよ!


「《フレア・ウェーブ》!」


 発動直後、目の前に現れたのは巨大な炎の波。それが、私達を中心に円状に広がっていく。


 威力は、私の他の魔法に比べると落ちる。だけどゴキを殲滅するくらいなら、これで十分よ!


「た、たしゅかったぁ……」


 涙目でへなへなとへたり込むリエン。ちょっ、まだ終わってないわよ!?


「ふむ……アビス・コックローチでは、流石に荷が重過ぎたか。ならば」


 っ! また別の気配!?


「いでよ、我が眷属……アビス・ジャイアント・コックローチ」


 ……え。


「で……でかあぁ!?」


 次々に出て来る巨大ゴキ。大きさからして、蟲王ゴーレムと同じくらいデカい……!


 数は十体……! こんなの、生きてきた中で見たことないわよ……!?


「────!?!?!?」


 最早声にもならない声を上げるリエン。その影響なのか、アンデッド達は訳の分からない動きで狙いが定まっていない。


「このっ、このぉ!」


 アビス・コックローチより耐久力が高いからか、私の魔法でも燃やし尽くせない……! 頭が吹っ飛んでも、半身が燃え尽きても、それでも私達の方へ向かってくる……!


 いや、これはもう耐久力じゃなくて、生命力……! こんなのが蔓延ってるなんて、深淵ってなんなのよ……!?


 それでも、一体一体を着実に倒していく。流石に死んでも動くことはないみたいね!


「り、リエンっ、踏ん張って! まだちっこい奴らもこっちに来てるんだから!」


「は、はひぃ〜……!」


 リエンは、もう見てるこっちが泣きたくなるくらい涙目だ。私だって泣けるものなら泣きたいわよ……!


「まだ足りぬか。まさか、アビス・ジャイアント・コックローチの生命力を上回る力を持つとは、クロムウェルの言う通り中々の虫けらだ。……ならば、別のも増やそう」


 えっ……増やす!?


 その直後、穴から次々に現れる巨大なゴキ、ムカデ、蜂、カマキリ、ハエ、蜘蛛、ワーム……その他諸々、異様な数と種類の昆虫型モンスター……!?


「無理無理無理無理っ、キモいキモいキモいキモい!」


「ピーーーーーーーーーーーッッッ!?!?!?」


 あーーーーーもう! ジオウっ、早く戻って来なさいよぉ!


   ◆◆◆


 ──ジオウside──


「……ここが、セツナの深層意識か……?」


 気が付くと俺とシュユは、異界ではない場所に並んで立っていた。


 何と言うか……思ったよひファンシーな空間だ。そらはピンク色で、大地は平坦ではなく丸っこい。それに、そこら辺にお菓子が生えたり、玩具が散らばったりと……まるで小さな女の子が思い描くような空間だ。


「まさか……姉様の心の中が、こんな子供っぽいものだったなんて……」


「確かに……セツナと関わってる時間は短いが、表面とのギャップが凄まじいな」


 直感だが、セツナの傀儡師パペット・マスターとしての力や知識欲なんかは、この子供らしい深層意識が元になってるんだろう。


「だけど、こうまで広いと探すのは大変そうだな……レアナの《千里眼》があればいいんだが……」


 辺りを見回してみる。すると。


『お兄ちゃん、シュユねぇね。セツナは目の前を真っ直ぐ行った所にいる、です』


「ん? クゥ?」


「なっ!? この声は……!?」


 頭の中に声が響いた。だけど、俺の中にいる感覚はない。どこにいるんだ?


『クゥは外でお兄ちゃん達を見てる、です。道案内する、です』


「おお、頼むぞ」


『はい、です。でもお外も今大変、です。リエンねぇね号泣、です』


 は? 号泣? あいつが?


「……分からないが、急いだ方が良さそうだな。行くぞ、シュユ」


「う、うむ。走りながらでいいから、今の状況を説明してくれると助かるのだが……」


「分かった。とにかく走るぞ」

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