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パーティーを追放された俺は、隠しスキル《縁下》で世界最強のギルドを作る

赤金武蔵

第12話 精霊化

「お遊びが過ぎたようね。差し出せなんてもう言わないわ。……お前の眼を寄越せ!」


 セツナの傀儡達が、一斉にレアナとリエンに襲い掛かり、セツナ自身も魔法で攻撃する。


「くっ……! レーヴァテイン!」


 レアナがそれを迎撃するが、ダメージを負ってるのか動きが鈍いように見える。リエンのアンデッド軍も、レアナを守るように立ち回ってるから、思うように動けなさそうだ。


 これを止めるには、セツナの注意を逸らすしかない。


 正直、セツナの強さは底が知れない。元のスペックは、俺が今まで会ってきた誰よりも高いだろう。その上クロとの契約でステータス値が上がってる上に……こいつから感じる負の感情は、レイガのそれを遥かに上回っているように感じる。


 それなのにまだ自我を保って、クロの為に動いている……妙な違和感がある。何でこいつは、この状態で自我を……?


「……今は考えても仕方ない、か」


 今は少しでも加勢する……!


 アンサラーを構え、セツナへ向けて宙を蹴る。


「《暴風龍の怒りラース・テンペスト》!」


 更に体の周りへ暴風龍の風を纏わせる。エンパイオの魔法も砕いた暴風だ。いくらセツナとは言え、これを突破するのは容易じゃないだろ……!


 セツナへ近付くにつれて、傀儡が俺に向かって攻撃を仕掛けてくる。恐らくフルオートで、近づく奴を攻撃する仕組みなんだろうが、暴風のおかげで俺に触れることなく弾かれていく。


「あら、ジオウ君。私の所に来てくれる気になったのね、嬉しいわ」


「残念だが、アウトオブ眼中だ!」


 暴風龍の風をアンサラーに纏わせ、近くにいる傀儡を片っ端から粉砕していく。俺自身の加速と暴風龍の風、それにアンサラーの効果で、俺でもこれくらいの攻撃力は出せるようになった。


「……不思議ね。どうしてあんな小娘に構うのかしら? 私なら、あなたの力を一〇〇パーセント……いえ、一二〇パーセント引き出すことが出来る。……強く、なりたくはないの? 力が欲しくないの?」


 …………。


「一つ聞く。お前は、力が欲しいのか?」


「ええ。この腐った世界を滅ぼせるだけの力がね」


 セツナの目に映る、おぞましく、狂ったような負の感情。


 そうか……セツナの内にある負の感情の源泉は、こいつだったか……。


 三〇〇年に渡って奴隷として扱われ、売られ、買われ、また売られ……そうして見てきた、この世の醜悪。そいつがセツナの心を蝕んでるんだ。


 それは多分、俺には想像出来ないほどの……。


 傀儡を一体、また一体と倒しながらセツナに迫るが、セツナは余裕そうな……いや、憎しみを滲ませた笑みを浮かべて俺を見つめてきた。


「私なら、あなたの潜在能力を全て引き出せる。その代わりあなたのスキルで、私の力を強くする……いい取引だと思──」


「断る!」


「……まだ全部言ってないわよ」


「全部言ってても断る!」


 こいつは一つ勘違いをしている。俺が力を欲してる? 俺が強くなりたい、と?


「俺は別に、力なんていらない。必要最低限、自分自身の身を守れる力があればっ」


 俺が死ねば、あいつらが死ぬ。それだけは絶対あっちゃならない。なら、俺の身を守れるだけの力があれば、俺にはなにもいらねぇ。


「……なら、何故あなたはここにいるの? 護身なら、逃げるのも一つの手じゃない?」


「大切な仲間を拉致られて黙って待ってられるほど、俺も出来た大人じゃないんだよ! お前も逆の立場なら、シュユを助けに行くだろ!?」


 この問いかけに出した、セツナの答え。それは……。


「どうかしらね。──必要とあらば、切り捨てるわ」


 自分の妹ですら何とも思っていない、無機質な感情だった。


 こいつ……!


「ならお前の妹は、俺が貰う!」


「あげないわ。欲しいのなら、奪ってご覧なさい」


 セツナの傀儡が、大半がレアナ達ではなく俺の方へ向かってくる。


「お前達、ジオウさんを守りなさい!」


 が、すんでのところでリエンのアンデッド軍が割り込み、アンデッド軍と傀儡の入り交じった乱戦状態になった。


「レアナ! 俺とお前でセツナを叩く!」


「了解よ!」


 レアナがレーヴァテインから蒼炎を撒き散らし、セツナに迫る。俺も、暴風龍の風を纏い、飛翔した。


「学習しないわね。私には魔法も、物理も無効にする力がある。──《精霊化エレメンタル》」


 セツナの体が、淡く光る。


 こいつは、精霊魔法か……自分の体を精霊そのものにし、魔法も物理もすり抜ける魔法……。


 だが……想定通りだ。


「リエン!」


「ええ、準備出来てます! 行きますよ、セラちゃん!」


 リエンの隣にいたセラが、俺達に向けて腕を伸ばし、そして──俺達の体が、淡い光を纏う。


 まるで、セツナと同じように・・・・・・・・・


「宝舞神楽・蒼炎剣!」


「《瞬剣・暴嵐ブラスト》!」


「っ!?」


 身を翻して、俺達の攻撃を避けるセツナ。その頬には、冷や汗が見て取れる。


「思った通りね、ジオウ」


「ああ」


 精霊魔法は、魔法や物理の干渉を受けず、素通りする魔法だ。


 だったら、精霊魔法同士はどうなるか。


 結果はご覧の通り。セツナは、俺とレアナの攻撃を避け、逃げた。つまり、精霊魔法同士ではお互いに干渉することが出来る。


《縁下》のスキルは、リエンを通してセラにも影響を及ぼしている。その影響により、セラも精霊魔法を使えるようになっていた。


 セラの精霊魔法により、俺とレアナの体を精霊化させる。そうすることで、セツナの精霊魔法にも対抗しうる術を得た。


「……どういうこと……? 精霊魔法は、限られたエルフにしか使えない魔法なのに……!」


「その限られたエルフってのが、うちにもいたんだよ」


 さあ……反撃だ。

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