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パーティーを追放された俺は、隠しスキル《縁下》で世界最強のギルドを作る

赤金武蔵

第2話 悪魔の中

 時空間魔法で大洋館に戻ると、俺達は最奥の執務室を模様替えした。


 リエンのアンデッド軍とレアナに指示を出し、中央の空間に大きな空きを作る。準備はこれだけだ。


「指示通りにやったけど、これで何をするの?」


「まあ見てろ。リエン、ギガントデーモンの手を召喚してくれ」


「え? ああ、はい」


 リエンが魔法陣を展開すると、そこから禍々しいギガントデーモンの手があらわ現れた。俺の記憶通り、こいつも右手だ。


「え……ま、まさかジオウさんっ、こいつを……!?」


「流石リエン。話が早い」


「ダメです! 絶対ダメです!」


 拒否早くないか?


「ああ、お前のコレクションが一つ無くなるのが嫌なのは分かるが……」


「そうじゃありません! ジオウさんの腕が生えるなら、私のコレクションの一つや二つなんてどうなってもいいです! ですが、ギガントデーモンの手ですよ!? ハーフとは言え悪魔ですよ、悪魔! 分かってるんですか!?」


「分かってる、分かってる。だが、ただの義手やお前の並のコレクションだと、シュユ救出には間に合わない。こいつが必要なんだ」


 俺達の前にそびえ立つギガントデーモンの手。時間があるなら、こいつなんかに頼りたくはない。でも今はそんなことは言ってられないんだ。


 リエンがまた何か言い出そうと口を開きかけると、レアナが「ねぇ」と割り込んできた。


「こいつが何だって言うの? ただのでっかい腕じゃない」


 ……なるほど。レアナは、悪魔ってものを知らないらしい。


「……そうだ、ただのでっかい腕を俺に移植する。それだけだ」


「何を言ってるんですか。ただのでっかい腕なんかじゃありません」


「黙れリエン」


「いいえ黙りません」


 俺とリエンの睨み合い。数瞬の間を置いて、リエンが話し出した。


「悪魔というのは冷酷で、狡猾で、執念深く、残酷です。そしてその生命力は、他の全ての種族を凌ぐと言われています。……この手も、今は手だけなので動けませんが……悪魔の意思は、そこにあります」


「……生きてるってこと?」


「生きてはいません。ただ、悪魔の肉片を手に入れようとし、触れた者の肉体と強制的に融合するんです。精神を蝕み、魂を乗っ取り、意識を殺す。そうすることで肉体を器とし、悪魔として復活するんです」


「なっ!?」


 ああ、言っちゃったよ……こうなったらレアナの奴。


「だ、ダメよ絶対! 絶対ダメ!」


 ほらな、反対される。


「安心しろ。過去に一度悪魔とやり合ったことがあるが、話は通じる。俺を信じろ」


「話が通じる? 通じたからってなんなのよ! あんた、自分の命を軽く見すぎなんじゃないの!?」


「バカめ。俺以上に俺の命を重んじてる奴はいないぞ」


「そうじゃないわよ! こんなの、自殺未遂もいいところじゃない! そんなこと絶対させないわよ!」


 レアナの鋭い眼差しが俺を射抜く。


 レアナも、リエンも、本当に俺のことを大切に思ってくれてるんだなぁ……。


「でもな……俺がこの先、お前達と肩を並べるには、これしかないんだよ」


 ギルドマスターだから椅子にふんぞり返ってるだけなんて、それこそただのチェアマンだ。俺はそんなこと許せないし、二人にも……これから増えるであろう仲間にも、どんな顔をして接していいのか分からない。


 これは、俺の覚悟でもある。


「それじゃあ……行ってくる」


「させません!」


 リエンが俺を妨害しようと、アンデッド軍を操作する。


 だが、俺の初期加速がそれを上回り、ギガントデーモンの手に肉薄した。


 トータル速度ならもう負けてるかもしれないが、初期加速ならまだ俺の方が上だな。精進しろよ、リエン。


「さあ悪魔。念願の肉体だぞ──話し合おうぜ」


 タッチ。


   ◆◆◆


「……ここは……」


 真っ黒な空間。上下左右どっちを向いても黒く、自分が今ちゃんと地面に立ってるのかさえ怪しく感じる。


 そもそも地面なんてあるのかも分からない。ただただ、黒い空間。


 それなのに俺の体はハッキリと見える。光源なんてどこにも無いのに、不思議な感じだ。


 なるほど、ここが悪魔の中か。うん、個性的でとてもいいと思う。俺には良さは分からんが。


 さーて、お目当てのギガントデーモンちゃんはどちらでしょうかっと……。


 ……この辺にいなさそうだな。向こうの方に歩いて……。


 ひょい。


 ……ひょい? ん、あれ? なんか……浮いてる? 襟首掴まれてる気が……?


 ……おい……おいおいおい。まさか……。


 浮遊感を覚えつつ、体が硬直してるのが分かる。


 掴まれたまま、体が空中でゆっくり向きを変え……。






『お兄ちゃん、誰?』






 でっかいロリ・・・・・・がそこにいた。


 …………。


 んんッ!?

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