パーティーを追放された俺は、隠しスキル《縁下》で世界最強のギルドを作る

赤金武蔵

第35話 ファイナルラウンド

「……っ! チッ!」


 っ!? ば、爆発……!?


 セツナ姉様が振り向きざまに手を振るうと、爆熱と爆風を風圧で吹き飛ばした。一体何が……!?


「ぐっ……ふっ……! セツ、ナァ……!」


「……驚いた。今の状態で意識を保っていられるなんてね」


 え? ……アデシャ、族長……?


 上を見上げると、今だに演舞を止めない二人の族長。でもアデシャ族長だけは、セツナ姉様を怒りのこもった目で睨み付けていた。


 凄い……セツナ姉様の精神魔法を受けてるのに……!


「おっ、おおおおおお!」


 演舞を踊りながらさっきと同じ炎属性の魔法を使うアデシャ族長。だけどセツナ姉様はそれを片手で捌いている。


「しつこいわね……あなたは大人しく踊ってなさい」


「がっ……!?」


 っ! せ、精神魔法の上乗せ……!? これ以上やったらアデシャ族長の精神が……!


「ぉ……ぁ……ぐっ……!? しゅ、ユ……逃げろ……逃げて、ジオウ達に……!」


「っ。しつこい……!」


「がああああああああ!?」


 ま、また!


「姉様止めろ! 止めてくれ! これ以上はダメだ! 族長が死んでしまう……!」


「それが何?」


 ……ぇ……?


 無機質で、作られたような瞳。命にまるで興味がないのか、不気味なまでに冷たい視線……何で……何でそこまで冷たい目を出来るんだ、セツナ姉様……?


「私にはクロ様だけいればいい。クロ様という至上の存在の為なら、かつての恩人でも、妹すら殺す。そこに躊躇いはないわ」


 ……あぁ……本当に……本当に、変わってしまったのですね、セツナ姉様……。


 ……不思議な感じだ。生きていると知った時は嬉しかったのに……心にぽっかりと穴が空いたような、虚しい気持ちだけが残ってる。


 何故、姉様は……!


「せ、つな……セツナああああああ!!!」


「っと……危ないじゃない」


 くっ……! 渾身の拳を簡単に避けられた……!


「許さない……セツナ、貴様は敵だ!」


「奇遇ね。私もあなたの事は敵だと思っているわ」


 背負っている弓を構えて引き絞る。物理的な矢はそこにはないが、次の瞬間には金色に光る魔力の矢が現れた。


「《光矢・破砕アロー・ブレイク》!」


 スピードと破壊力を兼ね備えた魔力の矢! 如何にセツナであろうと……!


「《光矢・破砕アロー・ブレイク》」


 なっ! 弓も無いのに私の《光矢・破砕アロー・ブレイク》を!? ここまで力の差が……!


 間一髪セツナの矢を避けると、背後の地面を抉った。速さも強さも私以上、か……!


「《氷結の吐息ブリザードブレス》!」


 アデシャ族長から放たれる絶対零度の氷魔法。あの状態でここまでの魔法を使うなんて……。


「無駄よ」


 だがそれも、セツナは涼しい顔で防御する。ダメージを負っているとはいえ、アデシャ族長の魔法も……!


「今、だ! シュユっ、行けェあ!!」


「っ! ……必ず戻ります!」


 ペルの腹を蹴って走り出す。とにかく今はジオウ殿の元に!


「逃がさないわ」


 っ! また《光矢・破砕アロー・ブレイク》……!?


「《六花の氷盾ダイヤモンド・ガード》!」


 アデシャ族長の防御魔法……! 凄い、セツナの魔法を少しも通してない……!


「セツナァ……貴様の相手は妾じゃぞ……!」


「……煩わしいわね……殺すわよ」


「やってみぃや……妾はこの状況でも、貴様程度に遅れは取らんぞ──!」


 ──────────


 ──ジオウside──


「《ロック・ガトリング》」


「くっ……!」


 またこれか……! 数が異様に多いぞ……! これじゃあ回避するだけで精一杯だ……!


 せめて何か一つ切っ掛けがあれば!


「ただ飛んでるだけでは羽虫と同じだぞ」


 っ! 別の魔法の気配……後ろっ、デカい……!


「……なっ、んじゃこりゃあああああああああああああ!?」


 壁、いや波!? 土で出来た巨大な津波か!?


「絡み付け」


「しまっ──!」


 土津波に気を取られて、《八岐大蛇ヤマタノオロチ》が四肢に巻き付いて……!


「《ロック・ガトリング》」


 下から残り四つの頭から放たれる《ロック・ガトリング》、背後には土津波……!


「吹退べ暴風! 《暴風龍の怒りラース・テンペスト》ォ!」


 体から噴き出す暴れ狂う風。それが《ロック・ガトリング》を吹き飛ばし、土津波を乱雑に抉った。


「おおおおおっりゃあ!」


 四肢に巻き付く《八岐大蛇ヤマタノオロチ》の頭を引きちぎる。硬いが……暴風龍の風さえあれば、力技でも行けるな……!


「ほう、魔法の威力も申し分ないな。ただの速さ自慢って訳でも無さそうだ」


「速さだけでやって行けるほど、この世界も甘くないだろ!」


「はっ、よく分かっているではないか!」


「これでも伊達に死線は潜ってないんでねぇ!」


 《暴風龍の怒りラース・テンペスト》を体に纏わせ、《空中歩法エア・ウォーク》で加速する。そのおかげで、飛んでくる石玉を避けなくても風が破壊していった。


 なるほどな、こういう使い方もあるのか……!


「《ロック・ガトリング》程度じゃ、もう足止めにもならんか」


「ならこのまま何も出来ずに死んでくれ!」


「それは出来ない相談だ。……少々時間を掛けすぎたな。蹴りを付けさせて貰おう」


 っ……何だ? エンパイオの奴、懐から出した何かを地面に……?


 この、嫌な気配……まさかっ、魔石……!?


 魔力を圧縮した魔力液。それが数千年、数万年に渡って凝縮され、固形化した幻の鉱石……! あいつ、ここに来てそんなものを……!?


 地面に転がった魔石。エンパイオがそれを踏み付けた瞬間、緋色の魔力が吹き荒れた。


「さあ──ファイナルラウンドだ」

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