パーティーを追放された俺は、隠しスキル《縁下》で世界最強のギルドを作る
第34話 戦争④
──シュユside──
時空間魔法の穴を潜ってリスマン族の里に来たが、まだここまで攻め込まれてはいないのか、里は平和そのものだった。
だけどサシェス族の里が襲われたという情報が出回っているのか、里の護衛の任務に就いている同朋以外は、時空間魔法でサシェス族の里へ応援に向かっている。
私はそんな中を、ペルに跨って駆けていた。
「シュユ殿!」
「おお、アスラン殿」
今回、アデシャ族長とエスタル族長の周辺警護隊と、時空間魔法の穴を死守する護衛隊の隊長を任せられているアスラン殿が、ペルよりも大きな鹿に跨って慌てたように駆け寄ってくる。
「向こうは今どうなっているか分かるか?」
「うむ。サシェス族の里は、セツナ姉様……いや、敵軍エルフのセツナの手により《神包み》の魔法陣が改定され、レグド族とテサーニャ族の侵攻を受けている。現在は同朋達とレアナ殿、リエン殿が対応している為大事にはなっていないが、いつ前線が崩れるか分からん状態だ」
ざっと里を確認したが、まだどこも持ち堪えている。特にレアナ殿とリエン殿のいる場所は、他よりも強固に守られていた。流石、と言うしかない。
だが問題は、ジオウ殿達と敵対している組織……ジオウ殿がエンパイオとやらを押さえ込んでいるとは言え、それと同等の輩がいるとしたら、レアナ殿とリエン殿では……。
……いや、今は二人を信じるしかない。
「なるほど、承知した。俺は護衛隊の布陣確認へ向かう。シュユ殿、もし敵が現れても、決して惑わされぬよう気を付けるのだぞ」
護衛隊長殿は私にも激励の言葉を投げ掛けると、隊の方へ駆けていった。
「……ペル、私達はやぐらへ向かうぞ」
「────!」
神樹デルタへの祈りの最中は、やぐらへ近付くことは許されていない。神樹デルタは、祈りの途中に侵入者が来ることを嫌うからだ。
もし族長以外の存在が近付いた場合、一ヶ月間強制的に眠らされる。その間は、何をしても起きることはないらしい。
でも……何だか、嫌な予感がする。
後頭部がピリつく、嫌な感覚。
こんな曖昧な感覚を頼りに近付くなんて、間違っている。
間違っているけど……くそっ、何なんだこの言いようのない感覚は……!
「ペル、急ぐのだ……!」
「────!」
ペルの走るスピードが上がる。未だかつてない程のスピードだ。
……見えた、やぐらだ! ……え……?
「……何だ、これは……?」
やぐらは崩れ落ち、辺りは血の海。大地は抉れ、焼け焦げている。
そしてそのやぐらの上に立つ、一人のエルフ。
……なん、で……。
「……セツ、ナ……姉様……?」
「……遅かったわね、シュユ。……もう終わりよ」
終わり……? 何を……?
「見なさい、あれを」
あれ……?
上を見上げるセツナ姉様。その視線を辿ると、そこにいたのは……全身から血を流し、虚ろな目をしたアデシャ族長とエスタル族長が、機械的に演舞を舞っていた。
「な、何で……!?」
「あの人達は私に負けた。そして私の魔法で、強制的に演舞を踊らせているの。私の異名、知っているでしょ?」
っ……セツナ姉様の魔法は特殊。相手の精神を壊し、その上に新たな精神を作り出すことで、機械人形を作る特異な魔法。
「傀儡師……」
「大正解。覚えてくれていたみたいで嬉しいわ」
昔、私に微笑んでくれた時と同じ笑顔。それなのにやっている事は、あまりにも……!
「……何故、ここにいるんですか。祈りの最中に近付けば、眠らされることは分かっていたはず……!」
「ふふ。おかしな質問をするのね。……答えは簡単。私の魔法は、全てを凌駕するまでに成長した。それだけよ」
全てを……どういう事だ……?
セツナ姉様は口角を三日月のように歪めると、自らの胸に手を置いた。
「あの方に……クロ様に契約して頂き、私の《神隠し》は生物だけでなく……神すら欺ける力を得た。それが答えよ」
「……な、ん……だと……?」
どういう事だ……? 契約? クロとやらと姉様が? その契約で、姉様の力は上がったというのか……?
それではまるで──ジオウ殿ではないか……?
「さあ、お話は終わり。実の妹に手を下すのは忍びないけど……今の私には、クロ様以外いらない。さようなら、シュユ……愛していたわ」
セツナ姉様が、手の平を私に向ける。
それに対し、私は。
私、は……。
時空間魔法の穴を潜ってリスマン族の里に来たが、まだここまで攻め込まれてはいないのか、里は平和そのものだった。
だけどサシェス族の里が襲われたという情報が出回っているのか、里の護衛の任務に就いている同朋以外は、時空間魔法でサシェス族の里へ応援に向かっている。
私はそんな中を、ペルに跨って駆けていた。
「シュユ殿!」
「おお、アスラン殿」
今回、アデシャ族長とエスタル族長の周辺警護隊と、時空間魔法の穴を死守する護衛隊の隊長を任せられているアスラン殿が、ペルよりも大きな鹿に跨って慌てたように駆け寄ってくる。
「向こうは今どうなっているか分かるか?」
「うむ。サシェス族の里は、セツナ姉様……いや、敵軍エルフのセツナの手により《神包み》の魔法陣が改定され、レグド族とテサーニャ族の侵攻を受けている。現在は同朋達とレアナ殿、リエン殿が対応している為大事にはなっていないが、いつ前線が崩れるか分からん状態だ」
ざっと里を確認したが、まだどこも持ち堪えている。特にレアナ殿とリエン殿のいる場所は、他よりも強固に守られていた。流石、と言うしかない。
だが問題は、ジオウ殿達と敵対している組織……ジオウ殿がエンパイオとやらを押さえ込んでいるとは言え、それと同等の輩がいるとしたら、レアナ殿とリエン殿では……。
……いや、今は二人を信じるしかない。
「なるほど、承知した。俺は護衛隊の布陣確認へ向かう。シュユ殿、もし敵が現れても、決して惑わされぬよう気を付けるのだぞ」
護衛隊長殿は私にも激励の言葉を投げ掛けると、隊の方へ駆けていった。
「……ペル、私達はやぐらへ向かうぞ」
「────!」
神樹デルタへの祈りの最中は、やぐらへ近付くことは許されていない。神樹デルタは、祈りの途中に侵入者が来ることを嫌うからだ。
もし族長以外の存在が近付いた場合、一ヶ月間強制的に眠らされる。その間は、何をしても起きることはないらしい。
でも……何だか、嫌な予感がする。
後頭部がピリつく、嫌な感覚。
こんな曖昧な感覚を頼りに近付くなんて、間違っている。
間違っているけど……くそっ、何なんだこの言いようのない感覚は……!
「ペル、急ぐのだ……!」
「────!」
ペルの走るスピードが上がる。未だかつてない程のスピードだ。
……見えた、やぐらだ! ……え……?
「……何だ、これは……?」
やぐらは崩れ落ち、辺りは血の海。大地は抉れ、焼け焦げている。
そしてそのやぐらの上に立つ、一人のエルフ。
……なん、で……。
「……セツ、ナ……姉様……?」
「……遅かったわね、シュユ。……もう終わりよ」
終わり……? 何を……?
「見なさい、あれを」
あれ……?
上を見上げるセツナ姉様。その視線を辿ると、そこにいたのは……全身から血を流し、虚ろな目をしたアデシャ族長とエスタル族長が、機械的に演舞を舞っていた。
「な、何で……!?」
「あの人達は私に負けた。そして私の魔法で、強制的に演舞を踊らせているの。私の異名、知っているでしょ?」
っ……セツナ姉様の魔法は特殊。相手の精神を壊し、その上に新たな精神を作り出すことで、機械人形を作る特異な魔法。
「傀儡師……」
「大正解。覚えてくれていたみたいで嬉しいわ」
昔、私に微笑んでくれた時と同じ笑顔。それなのにやっている事は、あまりにも……!
「……何故、ここにいるんですか。祈りの最中に近付けば、眠らされることは分かっていたはず……!」
「ふふ。おかしな質問をするのね。……答えは簡単。私の魔法は、全てを凌駕するまでに成長した。それだけよ」
全てを……どういう事だ……?
セツナ姉様は口角を三日月のように歪めると、自らの胸に手を置いた。
「あの方に……クロ様に契約して頂き、私の《神隠し》は生物だけでなく……神すら欺ける力を得た。それが答えよ」
「……な、ん……だと……?」
どういう事だ……? 契約? クロとやらと姉様が? その契約で、姉様の力は上がったというのか……?
それではまるで──ジオウ殿ではないか……?
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