パーティーを追放された俺は、隠しスキル《縁下》で世界最強のギルドを作る

赤金武蔵

第28話 対決①

 シュユに聞いたところ、二人は寝ずに俺の武器やローブに向かい合ってくれていたらしく、ついさっきまで作業をしていたらしい。


 飯とトイレ休憩以外、全ての時間を割いてくれたようだ。


 ホント、俺には勿体ない仲間だよ……。


 シュユが先頭で歩き、客室の前で止まった。


「二人共、ジオウ殿を連れてきたぞ」


 ゴスッ! ガタガタガタ、ゴシャア!


 おぅ!? な、何だ!? 何があったんだ!?


「レアナ、リエン! 大丈夫か!?」


 まさか敵襲か!?


「だだだ大丈夫! 大丈夫だからちょっと待って!」


「まだ入っちゃダメですよ! 絶対開けないで下さい!」


 ……どういう事だ?


「ジオウ殿……彼女らも乙女なのだ。察してやってくれ」


「察すって……別に俺は臭いとか見た目とか気にしないぞ」


 寧ろ、俺の為にそこまでやってくれたんだ。感謝こそすれ、貶すなんて絶対にしない。


「だ、か、ら! それを気にするのが乙女なのだ! お前の考えは関係ない!」


「お、おぅ……分かったよ」


 そんなに怒らなくても……。


 ……お? 音が止んだぞ。


「は、入っていいわよ」


「じゃ、失礼する」


 部屋に入ると、二人は忙しなく手櫛で髪を整えていた。


 でも……目の下のくままでは、隠しきれてない。


 それくらい、一生懸命やってくれたんだな……。


「じ、ジオウ。早速だけど、これがアンサラーの能力一覧よ。かなり複雑だけど、使い方を間違えなければ相当強いことが分かったわ」


 アンサラー……意味は、“回答者”……?


 読み進めていくと……なるほどな。複雑だが、奇襲には持ってこいの武器って事か。


 次にリエンが、畳んだローブを差し出してきた。


「こちらがローブです。追加で魔法反射、物理反射、衝撃吸収、圧力減少、魔力コントロール上昇、魔法力上昇、破壊力上昇、俊敏性上昇、回避率上昇、オートヒールを掛けました。一つずつ、魔法を崩さずエンチャントしたので、これくらいしか出来ませんでしたが……」


 ……十分過ぎるだろ。何でそんなしょんぼりしてんの。いや可愛いけど。


「二人共……本当にありがとう。これだけあれば、今日が命日にならずに済みそうだ」


「死んだらあの世に行って殺すわ」


「あ、死ぬなら体は綺麗にお願いします」


「……ははっ。上等」


 二人は拳を突き出してきて、それに拳を合わせた。


 何だろうな。分からんけど……。


「負ける気がしねぇ」


 ──────────


 西の荒野。


 普段は凶暴な魔物が蠢く危険地帯だが、この日は息を潜めて影に隠れていた。


 それもそのはずだ……この暴力的な覇気。これを感じて逃げ出さない魔物はいないだろう。


「……ふぅ……行くか……」


 歩みを進めるが、一歩ずつ重く、押し潰すような圧力がのしかかる。


 だけど……ローブのお陰で、その全てを苦にする事なく進めるぞ。流石だな、リエン。


 濃密な圧力の中を涼しい顔で進むと、圧力の元凶が見えてきた。地面に座り込み、目を閉じている。余裕の表れか、集中しているのか……何にしても、あんな格好でも全く隙がないのは、変わらないな。


「……来たか、ジオウ」


 ……目を開けずに、俺が来たのを察知したか……気配探知の魔法を使ってるようには見えないが、どういうカラクリだ?


「……待たせたな」


「ふっ、待ってなどおらん」


 ゆっくり目を開け、幽鬼のように立ち上がる。


 その動作だけで分かる。やっぱこいつ、とことん化け物だ。


「……ほう、顔付きが三日前とは違うな。見違えたぞ」


「俺には頼りになる仲間がいるからな。そいつらのお陰だ」


「それもあるだろうが……不思議だ。何故そこまで強くなれた。三日前とは別人のようだ」


 ……何だ、何が言いたいんだ……?


「……特に何もしてないが」


「ふん。あくまでシラを切るつもりか。まあ、敵に秘密を話す程愚かでもあるまい」


 いや、何か勘違いしてるみたいだけど、俺自身は神頼みくらいしかしてないぞ。


 距離にして十メートル。俺も、エンパイオも、既に攻撃圏内だ。


「……なるほど。クロ殿が貴殿を警戒する理由が分かった」


「お前のような化け物を従えてる奴が、俺を警戒するのか?」


「ふっ……あの方の前では、我らなど赤子も同然よ」


 おいおい、それがマジなら……向こうが危ないんじゃないか!?


「……悪いが時間が無さそうだ。さっさと始めよう」


「同意だ」


 地面に突き刺していた剣を抜き、自然体の構えを取るエンパイオ。ただ剣を持った棒立ちの状態が、隙のない完璧な構えに見える。


 対して俺は素手。左手を開手で前に。右手を拳で脇に。深く腰を落とす。


「む? ジオウ、得物はどうした」


「まずは様子見って事で」


「……ふはははは! やはり貴殿は面白い! ……だが、それは少々悪手であるぞ?」


 一歩。たった一歩で十メートルの距離を潰し、剣を振り下ろそうとするエンパイオが目の前に迫って来た──。

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