パーティーを追放された俺は、隠しスキル《縁下》で世界最強のギルドを作る

赤金武蔵

第27話 神頼み

「な、何よそれぇ!?」


「ほほほ本当に行く気ですか!?」


 翌日、戻ってきたレアナとリエンに昨日あったことを伝えると、予想通りの反応が返ってきた。


「ああ。あっちも一人だろうし、エンパイオに限って約束は違えないだろう。奴は俺が抑えるから、こっちは頼んだぞ」


「いや頼んだぞって……! あんた、あの化け物とタイマン張るって言ってんのよ! だったら私も……!」


「向こうの狙いは俺の前に、レアナでもある。お前を連れて行くことは出来ない」


 取り付く島もないと思ったのか、レアナが悔しそうな顔で俯いた。


「な、なら私が……いえ、エタちゃんを付けます。前と同じく、エタちゃんと一緒に相手をすれば……」


「無理だな。恐らくエタでも瞬殺される。奴の強さは、お前もよく分かってるだろ。里への襲撃を警戒、対処しながら、エンパイオの方も対応する事になる。それなら、エタも含めて里を守ってくれた方が良い」


「で、すが……」


 ……まあ、二人が心配してくれる気持ち、嬉しいよ。俺だって、どっちかが同じような事を言ったらすげー心配するだろうし。


「……それなら、二人に少し頼みがあるんだが、聞いてくれるか?」


「も、勿論! 何でも言うこと聞くわ!」


「私達に出来る事なら、何なりと!」


 お、おお。やる気MAXだな……。


「レアナ。俺の武器、アンサラーを一旦預ける。《鑑定眼》で、アンサラーの能力を全て紙に書き出して欲しい」


「分かったわ!」


「リエン。ローブの魔法をもっと掛けて欲しい。特にスピード特化の魔法と、魔法耐性の魔法を」


「任せてください!」


 二人にアンサラーとローブを預けると、直ぐに作業に取り掛かった。


 エンパイオとの決闘まで、あと二日……俺に出来る事、何かないか……?


「む? ジオウ殿、何を渋い顔をしているのだ?」


「……シュユか。いや、ちょっと二日後に死にそうだから、何かいい手段はないかと思って」


「死!? ジオウ殿死ぬのか!?」


「死なないために準備してる。シュユ、何かいい案はないか?」


「……神頼み?」


「却下だバカタレ」


 神頼み程度でエンパイオを退けられたら世話ないだろ。


 だけどシュユは、慌てたようにワタワタと手を忙しなく動かした。


「た、ただの神頼みではないぞ! 実際に神に頼むのだ!」


「は? 気でも狂ったか?」


「正気だ! お前が今どこにいるか、よく考えてみろ!」


 どこって、サシェス族の里……あ。


「宝樹リスマン、か?」


「そうだ! 神樹デルタでも良いが、今は儀式で近付くことすら規制されているからな。宝樹リスマンなら問題ないぞ」


 なるほど……確かに、宝樹リスマンの苗は神の世界に一番近い。普通の神頼みより、断然効果はありそうだ。


 そうと決まれば!


「あれ? ジオウさん、どちらに行くんですか?」


 ローブに魔法を掛けることに集中していたリエンが、こっちに気付いた。


 それに釣られて、レアナもこっちを見る。


「ああ、ちょっと宝樹リスマンにな」


「何かあったのですか?」


 まあ、何かあったと言うか、奇跡を祈ると言うか。


「ちょっと神頼みに」


 ──────────


「今は誰もやぐらは使っていない。本来なら族長しか使ってはダメだが、ここを使って良いぞ」


「良いのか? バレたらどうする?」


「甘んじて罰を受けるさ。それに、アデシャ族長なら許してくれるだろう」


 確かに。二つ返事でOKを出しそうだ。


 サムズアップして爆笑してるアデシャ族長をイメージしていると、「それに、」とシュユが続けた。


「ジオウ殿程の実力者が、死にそうだと言ったのだ。私に出来る事はこれくらいだが……神は必ず、ジオウ殿の願いを聞き届けてくれるだろう」


「シュユ……ああ、ありがとうな。じゃ、二日後の日の出になったら呼びに来てくれ」


 軽くハイタッチをし、やぐらの上に飛び乗る。


 思ったより広い舞台の中心に胡座を組んで座ると、目を閉じて精神を集中させる。


 深く、深く、深く。


 音を、匂いを、気配を……外界からの刺激を全て遮断し、深層精神へと目を向け……。


 ……………………………………………………。




















『──汝、試練を受けるか?──』




















「え?」


「おお!? な、何だ、起きてたのか……」


 ……は? えっと……?


「シュユ……何か言ったか?」


「いや、起きてたのか、と……」


「違う。その前だ」


「特に何も……約束通り、今は二日後の朝だ。それまで護衛をしていたが、特に誰かが近づいた気配も無かったぞ」


「そんな馬鹿な。あの声、ハッキリと聞こえて……」


 ……あれ? ……あの声って、なんの事だっけ……?


「……いや、すまん。気のせいだったみたいだ」


「そ、そうか。大丈夫か? 疲れてないか?」


「ああ、不思議とな。むしろ絶好調だ」


「そうか……ならいい。今から族長の家に行くぞ。レアナ殿とリエン殿が待っている。相当張り切ってたから、良いものが出来たと言っていたぞ」


 そっか、二人も頑張ってくれたんだな……二人には感謝しないとな。


 異様な体の軽さに逆に違和感を覚えながらも、二人の待つ族長の家に向かった。

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