パーティーを追放された俺は、隠しスキル《縁下》で世界最強のギルドを作る

赤金武蔵

第26話 死刑宣告?

 見晴台で下界を眺めていると、いつの間にか夜になっていた。


 レアナとリエンは腹が減ったらしく、今は里から出て王都のレストランまで飯を食いに行っている。流石にずっと自然の多い場所にいたら、都会の味が恋しくなったらしい。……俺の分のお土産頼んだけど、何を買ってきてくれるか心配だ……。


 夜になっても森は何の変化もない。シュユが俺に暗視の魔法を掛けてくれたが、夜行性の魔物がうろついているだけだ。


 シュユも俺の隣で弓矢を手入れしながら下界を見ているが、暇なのかさっきから欠伸が絶えない。


「シュユ、眠いなら寝てていいぞ。ここは俺一人で大丈夫だから」


「ふへっ!? も、もう食えんぞ! 腹いっぱい食べて来たからな!」


「誰もお前の腹具合は心配してないから。儀式の準備とか護衛とかで、満足に寝れてないんだろ? 寝ていいぞ」


「疲れてない」


「……船漕いでたぞ」


「眠くない」


 いや間違いなく眠気MAXだろこいつ。


 頬をぺちぺちと叩き、伸びをし、目を擦り……それでも、今にも瞼が閉じそうだ。


「敵はいつ来るか分からないんだろ? いざって時に眠さで使えなくなるなら、今寝て必要な時に体力を残しとけ」


「ぐぬぬ……しかしジオウ殿も寝ていないではないか……」


「俺は一週間寝ずに動けるように鍛えてるからな。ちょくちょく休んでるし、全く問題ない」


「わ、私だってそれくらい出来る! ……すやぁ……」


 あ、寝落ちした。全く……。


 俺が仮眠する用に持ってきていたブランケットを掛けてやると、幸せそうな顔でくるまった。……一応俺も男だから、こんな無防備な姿を晒して欲しくはないんだが……信頼されてるのか、男として見られてないのか、判断に悩むな。


 だからと言って襲うわけないけどな。ここに来て分かったが、シュユは里の皆に好かれている。それを襲ったなんて噂が立ったら、命を狙われるに決まってる。危ない橋は渡らないのが俺のポリシー。


 シュユも寝たし、俺も少し武器の手入れでもしておくか。


 アンサラーを抜き、月の光に照らしながら手入れを始める。


 Sランクダンジョン、アルケミストの大洋館のクリア報酬で手に入れたものだけど……結局のところ、まだこのダガー自体の能力は分かってないんだよな。


 流石にただのダガーって事はないとは思う。ダンジョン報酬で出て来たもの……特に、高ランクになればなるほど、何かしらの特殊な力を持ってるはずなんだ。


 レアナの魔剣レーヴァテインも、リエンのホープジュエリーも、二人の能力に合った装備品だった。だから俺のもそうだと思うんだが……ちゃんとレアナに聞いておけば良かったな。


 布や細い木の棒を使って、細部の汚れを綺麗に落とす。


「……よし。こんなもんかな」


 うんうん。満足のいく出来だ。さっきより輝いて見えるぜ。


 アンサラーを鞘にしまい、腰に下げる。


 ……やる事もなくなっちまったな……いや、見張りを買って出たんだから、やる事はやるけど。流石に何も無さすぎると暇だ。


 やべ、俺も欠伸が……ふわぁ〜……。






「ほう。ジオウよ、貴様中々に暇そうだな」






 ゾッ──。


 この、声……!


 急いで下界を見下ろす。


 どこだっ、どこにいる……!


「はっはっは。我の方からは貴様の慌てぶりがよく見えるぞ、小僧」


「くっ……!」


 この圧倒的強者の余裕……忘れもしない声……!


「地帝のエンパイオ……!」


「我の事を覚えていたか」


「お前の事なんて忘れられるかこの野郎!」


「……男のお前に言われても嬉しくないぞ」


 俺だってそんなつもりで言ってねーよ!


 くそっ、何で姿が見えない……! それなのに、声だけは耳に届いてる……まさか《光学迷彩カモフラージュ》か!?


「慌てるなジオウ。我は下からお前を見上げている。どこから、とは言わんがな」


 ……下にいるのに、何で声がハッキリと聞こえるのかは置いといて……。


「……何しに来た。何の用だ」


 このタイミングで話し掛けてくるなんて、何かあるに決まってる。


 アンサラーを抜き、油断なく構える。


「安心せい。今はまだ、貴様と事を構える気はない」


「敵の言うことを信用しろと?」


「はっはっは、確かにな」


 何なんだよ、さっきから……。


「三日後だ」


「……何だと?」


「三日後に貴様の首を狙う」


 ……俺の、首?


「な、何で……!」


「貴様の能力……いや、スキルか。クロ殿はそれが気に入らないらしくてな。小娘を殺る前に貴様を排除する事が決まった」


 俺のスキル……《縁下》のこと、か? そんな……このスキルは、特定の身内にしか教えてないのに……!


 ……いや、それより。


「何でそれを俺に教えた。俺が逃げると考えないのか」


「逃げても良いぞ。そうすれば、この里全てを地中深くに沈めるだけだ。無論、エルフも、宝樹リシリアも含めてな」


 くっ……つまり人質って訳か……!


「我は戦いたいのだ。全ての力を出し切った貴様と。この意味が分かるか?」


「……精々準備を念入りにしとけって事だろ……」


「然り。では三日後、西の荒野にて待っている。一人で来るように」


「お、おいっ……!」


 …………。


 消えた、か……。


 えっと、つまり……。


「死刑宣告?」

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