パーティーを追放された俺は、隠しスキル《縁下》で世界最強のギルドを作る
第24話 族長の娘
リスマン族族長、エスタルとその護衛に囲まれ、族長の家にやって来た。
構造的には全く違うが、家の上にある樹木はアデシャ族長の家と変わらないように見える。
だけどこの樹から溢れ出る、宝樹リシリアを凌ぐ程の、濃密な気配。
神樹デルタ。その苗、か……。
家の中に入ると、真っ先に族長の部屋へと通された。
が、そこには既に先客がいた。
緩いウェーブの掛かったショートボブのエルフの女の子が、簀巻きにされてムスッとした顔で転がっていた。
それを見たエスタル族長が頭を抱えた。
「全く……トルエ! 座ってなさいと言ったのに、何故そんな格好で……!」
「つーん。ボク悪くないもん。手伝ってくれるって言ったから、お言葉に甘えただけだもん」
「ですがアナタは全く仕事をせず、あの方達に押し付けたそうですね。全く、昔からアナタは──」
……何だ? どういう事だ?
「シュユちゃん。彼女、どなたですか?」
「……エスタル族長の一人娘のトルエ様だ。本来、天使の羽の捜索を行うのはあの方だったのだ」
ああ……あのサボってばかりだって言う、シュユの同朋か。それがバレて簀巻きにされてるんだな……。
「……おいお前。ボクをそんな憐れむような目で見るんじゃない」
「憐れんでないぞ。頭の出来に同情はしてるが」
「馬鹿にするなー!」
芋虫がじたばたと暴れるが、エスタル族長がつまみ上げて無理矢理椅子に座らせた。小柄とは言え、片手で軽々と……エルフ族は魔法も得意みたいだけど、全体的に身体能力も高いみたいだな。
「さあ、お座り下さい。今お茶を入れさせます」
「失礼します、エスタル族長」
右からシュユ、俺、レアナ、リエンの順で座り、正面にエスタル族長、トルエが座る。
「ジオウさん、レアナさん、リエンさん。まずはお礼を言わせて下さい。何でも天使の羽でなく、大天使ミカエルの羽を提供してくれたとか……」
「あ、はい。今はシュユに持たせていますが、確かに」
シュユに目配せすると、鞄から金剛桃、スーパーハニービーの蜂蜜、そして大天使ミカエルの羽を取り出した。
「……何から何まで本当にありがとうございます。それと同時に謝罪させて下さい。本来、我が愚女が見つける筈だったものを……」
「あ、サンキュー。ふにゃっ!?」
うわ、その脳天チョップはマジで痛そう……。
「いったー! 何すんのさ父上! ボクだってちゃんとお礼しなきゃっていう良心はあるのに!」
「だったらそれなりの態度を示しなさい! アナタは全てにおいていつも軽いんですよ!」
……何で俺達、ここまで来て親子喧嘩を見させられてんの?
シュユも同じ事を思ったのか、咳払いをしてこっちに注目させた。
「……それで、私達がここに来たのは他でもありません。時空間魔法で、サシェス族の里とリスマン族の里を繋げる許可を頂きたいのです」
「手紙でも書いていたあれですね。構いませんよ。今までサシェス族の皆さんと交流をする時に、不便な思いもして来ましたから。行き来が楽になるのでしたら、それに越したことはありません」
思ったより簡単に許可を出してくれた。
「あ、ありがとうございます。では早速……!」
「あの、話を遮るようですみませんが、ちょっと良いですか?」
ん? リエン?
全員の視線を受けて、リエンが申し訳なさそうに話し出す。
「えっと……時空間魔法なのですが、私の使役するアンデッドが使えるんです。ですが、ここの空気ではアンデッドを召喚するのは難しいと思うんですが……」
……あー……確かに。リスマン族の里は、アデシャ族長の家の裏手と同じかそれ以上に神聖な空気が満ちている。ここでアンデッドの誰かを召喚したら、間違いなく浄化されるな。
「そうですねぇ……神々の気配は、《神包み》で消す事は出来ます。ですが気配は消せても、そこにある事には変わりません。なので里の中でアンデッドを召喚するのはやめた方が良いかと思います」
となると、時空間魔法を繋げるとしたら里の外か……仕方ない。それなら時空間魔法用に樹木を改良したり、結界を張ったりしなきゃな……。
「それならボク、良い場所知ってるよ〜」
すると、今まで不貞腐れていたトルエが目を輝かせて立ち上がった。
「良い場所ですか? 里の中にアンデッドが存在できる場所なんてありましたっけ?」
「あるある! ボクが案内するよ! だから縄を解いてプリーズ!」
「……全く。今回だけですよ」
エスタル族長が指を動かすと、トルエを縛っていた縄が光となって消えた。
「ふいぃ〜楽になった〜。それじゃ、付いてきて〜」
トルエの案内の元、家の中を歩いていくと、一階のとある部屋の前に案内された。
「……ここ、客間じゃないですか。ここがそうですか?」
「うん。ボク、神聖な空気も良いけど普通の自然的な空気も好きなんだよねぇ。だからこの部屋に結界を張って、週一で外の空気と入れ替えをしてるんだよ。たまにここで寝てるし」
「……私に黙ってまたこんな事を……」
頭を押さえるエスタル族長。分かるぞその頭痛を覚える気持ち。
客間に入った瞬間、一気に空気が変わったのを感じた。外の空気と里の空気って、こんなに違うのか……改めて、ここが特別な空間なんだと認識するな。
「さあ、えっと……リエンさんだっけ? ここならどう? いい感じ?」
「超バッチリです。いけます」
リエンが目を閉じて集中すると、足元に魔法陣が現れ、エタが召喚された。
「エタちゃん。お願いします」
指をクイッと動かすと、部屋の壁に紫色の穴が現れた。俺達は慣れたもんだが、トルエとエスタル族長は目を見張っている。
「うわ、何か凄いねこれ……!」
「時空間魔法……見るのは初めてですね」
エスタル族長でも見た事ないのか。やっぱり時空間属性ってのは、珍しいもんなんだな。
そのまま少し待っていると、向こうから人影が見えてきた。
「む……お、出たの。久々じゃの、エスタル」
「お久しぶりです、アデシャ。……本当に向こうと繋がっているのですね」
「うむ。これで、サシェス族とリスマン族の絆は更に強固なものになる。此度の戦争も、我らの勝利で終わらそうぞ」
「勿論です」
アデシャ族長とエスタル族長が互いに握手を交わす。
これで一応、俺達のお使いは終わりだな。
後は……あいつらを迎え撃つための準備を進めるだけだ。
構造的には全く違うが、家の上にある樹木はアデシャ族長の家と変わらないように見える。
だけどこの樹から溢れ出る、宝樹リシリアを凌ぐ程の、濃密な気配。
神樹デルタ。その苗、か……。
家の中に入ると、真っ先に族長の部屋へと通された。
が、そこには既に先客がいた。
緩いウェーブの掛かったショートボブのエルフの女の子が、簀巻きにされてムスッとした顔で転がっていた。
それを見たエスタル族長が頭を抱えた。
「全く……トルエ! 座ってなさいと言ったのに、何故そんな格好で……!」
「つーん。ボク悪くないもん。手伝ってくれるって言ったから、お言葉に甘えただけだもん」
「ですがアナタは全く仕事をせず、あの方達に押し付けたそうですね。全く、昔からアナタは──」
……何だ? どういう事だ?
「シュユちゃん。彼女、どなたですか?」
「……エスタル族長の一人娘のトルエ様だ。本来、天使の羽の捜索を行うのはあの方だったのだ」
ああ……あのサボってばかりだって言う、シュユの同朋か。それがバレて簀巻きにされてるんだな……。
「……おいお前。ボクをそんな憐れむような目で見るんじゃない」
「憐れんでないぞ。頭の出来に同情はしてるが」
「馬鹿にするなー!」
芋虫がじたばたと暴れるが、エスタル族長がつまみ上げて無理矢理椅子に座らせた。小柄とは言え、片手で軽々と……エルフ族は魔法も得意みたいだけど、全体的に身体能力も高いみたいだな。
「さあ、お座り下さい。今お茶を入れさせます」
「失礼します、エスタル族長」
右からシュユ、俺、レアナ、リエンの順で座り、正面にエスタル族長、トルエが座る。
「ジオウさん、レアナさん、リエンさん。まずはお礼を言わせて下さい。何でも天使の羽でなく、大天使ミカエルの羽を提供してくれたとか……」
「あ、はい。今はシュユに持たせていますが、確かに」
シュユに目配せすると、鞄から金剛桃、スーパーハニービーの蜂蜜、そして大天使ミカエルの羽を取り出した。
「……何から何まで本当にありがとうございます。それと同時に謝罪させて下さい。本来、我が愚女が見つける筈だったものを……」
「あ、サンキュー。ふにゃっ!?」
うわ、その脳天チョップはマジで痛そう……。
「いったー! 何すんのさ父上! ボクだってちゃんとお礼しなきゃっていう良心はあるのに!」
「だったらそれなりの態度を示しなさい! アナタは全てにおいていつも軽いんですよ!」
……何で俺達、ここまで来て親子喧嘩を見させられてんの?
シュユも同じ事を思ったのか、咳払いをしてこっちに注目させた。
「……それで、私達がここに来たのは他でもありません。時空間魔法で、サシェス族の里とリスマン族の里を繋げる許可を頂きたいのです」
「手紙でも書いていたあれですね。構いませんよ。今までサシェス族の皆さんと交流をする時に、不便な思いもして来ましたから。行き来が楽になるのでしたら、それに越したことはありません」
思ったより簡単に許可を出してくれた。
「あ、ありがとうございます。では早速……!」
「あの、話を遮るようですみませんが、ちょっと良いですか?」
ん? リエン?
全員の視線を受けて、リエンが申し訳なさそうに話し出す。
「えっと……時空間魔法なのですが、私の使役するアンデッドが使えるんです。ですが、ここの空気ではアンデッドを召喚するのは難しいと思うんですが……」
……あー……確かに。リスマン族の里は、アデシャ族長の家の裏手と同じかそれ以上に神聖な空気が満ちている。ここでアンデッドの誰かを召喚したら、間違いなく浄化されるな。
「そうですねぇ……神々の気配は、《神包み》で消す事は出来ます。ですが気配は消せても、そこにある事には変わりません。なので里の中でアンデッドを召喚するのはやめた方が良いかと思います」
となると、時空間魔法を繋げるとしたら里の外か……仕方ない。それなら時空間魔法用に樹木を改良したり、結界を張ったりしなきゃな……。
「それならボク、良い場所知ってるよ〜」
すると、今まで不貞腐れていたトルエが目を輝かせて立ち上がった。
「良い場所ですか? 里の中にアンデッドが存在できる場所なんてありましたっけ?」
「あるある! ボクが案内するよ! だから縄を解いてプリーズ!」
「……全く。今回だけですよ」
エスタル族長が指を動かすと、トルエを縛っていた縄が光となって消えた。
「ふいぃ〜楽になった〜。それじゃ、付いてきて〜」
トルエの案内の元、家の中を歩いていくと、一階のとある部屋の前に案内された。
「……ここ、客間じゃないですか。ここがそうですか?」
「うん。ボク、神聖な空気も良いけど普通の自然的な空気も好きなんだよねぇ。だからこの部屋に結界を張って、週一で外の空気と入れ替えをしてるんだよ。たまにここで寝てるし」
「……私に黙ってまたこんな事を……」
頭を押さえるエスタル族長。分かるぞその頭痛を覚える気持ち。
客間に入った瞬間、一気に空気が変わったのを感じた。外の空気と里の空気って、こんなに違うのか……改めて、ここが特別な空間なんだと認識するな。
「さあ、えっと……リエンさんだっけ? ここならどう? いい感じ?」
「超バッチリです。いけます」
リエンが目を閉じて集中すると、足元に魔法陣が現れ、エタが召喚された。
「エタちゃん。お願いします」
指をクイッと動かすと、部屋の壁に紫色の穴が現れた。俺達は慣れたもんだが、トルエとエスタル族長は目を見張っている。
「うわ、何か凄いねこれ……!」
「時空間魔法……見るのは初めてですね」
エスタル族長でも見た事ないのか。やっぱり時空間属性ってのは、珍しいもんなんだな。
そのまま少し待っていると、向こうから人影が見えてきた。
「む……お、出たの。久々じゃの、エスタル」
「お久しぶりです、アデシャ。……本当に向こうと繋がっているのですね」
「うむ。これで、サシェス族とリスマン族の絆は更に強固なものになる。此度の戦争も、我らの勝利で終わらそうぞ」
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