パーティーを追放された俺は、隠しスキル《縁下》で世界最強のギルドを作る
第18話 族長
扉を潜ると、まず最初に目を引いたのは、今までの板張りの床ではなく、まるで草を編んだような床だった。シュユが部屋に入る前に靴を脱いでいるのを見て、俺達も真似して靴を脱ぐ。
右に本棚、左の壁には世界地図。中央には何も無いが、広くもなく、狭くもない、シンプルな作りの部屋だ。
そしてその先。一番奥には、俺たちのいる床から一段高くなっている床に、妖艶の塊のようなエルフが座っていた。更に奥には三日月形の窓が開いていて、外から陽の光が差し込む。
服、と言うよりは、シルクの布を乱雑に纏っているような姿のエルフ。肘掛に右肘を乗せ、横座りのまま俺達を出迎えた。
シュユが膝を折り畳むようにして座るのを見て、俺達も同じように座る。って、何この座り方、足首とか痛すぎるんだけど。
シュユが床に手を付き、土下座をするように頭を下げる。
「族長。シュユ、ただいま戻りました」
「苦しゅうない。楽にせよ」
「はっ」
族長の言葉に、シュユは頭を上げた。
「族長、この者達が、私の供物集めを手伝ってくださった、ジオウ殿、レアナ殿、リエン殿です」
「……ジオウ・シューゼンだ」
「レアナ・ラーテンよ」
「リエン・アカードです」
それぞれ自己紹介をすると、族長は俺から見て左からリエン、レアナ、俺、シュユの順番に舐め回すような視線で見る。
「なるほど。そなた達がシュユの手伝いをしてくれたのじゃな」
「「「っ……」」」
耳から直接脳に語りかけてくるような、柔らかくも圧のある、中毒性のある声。今回は幻惑魔法は使ってないみたいだが……この声が、この人の素の声なんだろう。
「妾の名はアデシャ。サシェス族族長として、礼を言う。ありがとう」
「……俺達もエルフ族に恩を売るためにやった事だ。礼なんていらない」
この手の相手に隠し事は無理だ。俺の勘がそう言っていた。
正直に返すと、アデシャ族長は快活に笑った。
「くかかかかっ! やはり面白いなお主。この妾を前に、そこまで豪胆に話せる者はそうはいないぞ」
……地帝のエンパイオといい、アデシャ族長といい、ある一定の強さを持つ奴らは、なんで俺をそんなに面白がるんだ。別に面白いことはしてないんだが……。
アデシャ族長は目に涙を浮かべながら、俺を射抜くように見つめてきた。
「ふむ……妾の魔法を一度で破り、肝も据わっている。それに歳にしては良い風格を漂わせているのぅ……だからこそ惜しい。これ程の男が、寿命の短い人間族というのはな……」
「……過大評価してくれてるみたいだが、俺はそんな大層なものじゃない」
「お主こそ自分を過小評価し過ぎじゃ。それは、横の二人の方が分かっているのではないか?」
横の二人?
レアナとリエンをチラッと見ると、うんうんと深く頷いていた。いや、別に俺はある程度強いだけの一般ピーポーなんだが。別に最強って訳でもないし、やれる事をやってるだけで……何か調子狂うな。
その時、シュユがコホンと咳払いをした。
「あの、族長。そろそろ話を進めてもよろしいでしょうか?」
「お? ああ、そうじゃったな。すまんすまん」
アデシャ族長は扇を開くと、無言で俺を見つめた。どうやら、俺から話をしろってことみたいだな。
「……今回、俺達がシュユを助けたのは他でもない。里に俺達の拠点を置く許可をくれ」
俺達の存在と目的を簡潔に伝えた。里を守る変わりに金品を要求する、と言ったら聞こえは悪いが、つまりはそういう事になる。
それを伝えると、アデシャ族長はにこやかに頷いた。
「うむ、良いぞ!」
いや軽いな!?
俺達三人は唖然としていたが、シュユはやっぱり、と言った顔をしている。
「シュユから聞いていると思うが、妾も革新派の一人。革新派は他族から刺激を取り入れ、エルフとしての可能性を広げる目的もある。ギルドも、今のサシェス族の里にはないものじゃ。寧ろこちらから頭を下げてお願いするところじゃぞ」
「そ、そうかっ。ありがとう、アデシャ族長!」
「ただし条件じゃ」
……このタイミングでそれを言うのはズルいと思うが……こっちはもう断れない立場だ。仕方ない。
レアナとリエンを見ると、俺を見てコクリと頷いた。
「……俺達に出来ることなら、何でもやろう」
「……この度の戦争、不穏な空気が流れている。奴らに神樹の実を渡せば、エルフ族や人間族だけでない。世界そのものを巻き込む何かが起こる気がする。お主達には、それを阻止するよう立ち回ってもらいたいのじゃ」
……凄いな。俺達はクロ達の組織を知ってるから、その予感はしているが……アデシャ族長はただの直感でそう感じ取っているのか。
「……勿論だ。任せてくれ」
「……かたじけない」
目を伏せて感謝の言葉を述べる。
が、次の瞬間には目を爛々と輝かせて立ち上がった。
「よし! なら今日は客人を大いに歓迎しようではないか! 酒と肉を持って来るのじゃ! ジオウ、必要なら女も付けるぞ!」
「え!? それは願っても……あ、いや止めときますすみません」
だから二人して目の光を消して睨まないでほしい。冗談、冗談だから。
二人は俺からアデシャ族長に目を向けると、怯むことなく睨みつける。
「ジオウには女なんて必要ないもんっ。何なら金輪際そんなの必要ないわ!」
「そうですっ、ジオウさんに女は必要ありませんから!」
「俺には子孫を残す権利すらないの!?」
流石にまだ二十一歳の油の乗った男だぞ! 将来的には結婚とか色々と憧れるお年頃だからな!?
「くかかかかっ! 冗談じゃ! お主達のような可愛らしい女子を連れているのだから、わざわざ無粋な真似はせんよ!」
……あぁ、何だろう……アデシャ族長と話してると、すっげぇ疲れるんだけど……。
その後、族長宅で行われた盛大な歓迎会に、俺、レアナ、リエンは揃って飲み潰された。
アデシャ族長、樽三つ空けてもケロッとしてるとか酒豪すぎだろ……。
右に本棚、左の壁には世界地図。中央には何も無いが、広くもなく、狭くもない、シンプルな作りの部屋だ。
そしてその先。一番奥には、俺たちのいる床から一段高くなっている床に、妖艶の塊のようなエルフが座っていた。更に奥には三日月形の窓が開いていて、外から陽の光が差し込む。
服、と言うよりは、シルクの布を乱雑に纏っているような姿のエルフ。肘掛に右肘を乗せ、横座りのまま俺達を出迎えた。
シュユが膝を折り畳むようにして座るのを見て、俺達も同じように座る。って、何この座り方、足首とか痛すぎるんだけど。
シュユが床に手を付き、土下座をするように頭を下げる。
「族長。シュユ、ただいま戻りました」
「苦しゅうない。楽にせよ」
「はっ」
族長の言葉に、シュユは頭を上げた。
「族長、この者達が、私の供物集めを手伝ってくださった、ジオウ殿、レアナ殿、リエン殿です」
「……ジオウ・シューゼンだ」
「レアナ・ラーテンよ」
「リエン・アカードです」
それぞれ自己紹介をすると、族長は俺から見て左からリエン、レアナ、俺、シュユの順番に舐め回すような視線で見る。
「なるほど。そなた達がシュユの手伝いをしてくれたのじゃな」
「「「っ……」」」
耳から直接脳に語りかけてくるような、柔らかくも圧のある、中毒性のある声。今回は幻惑魔法は使ってないみたいだが……この声が、この人の素の声なんだろう。
「妾の名はアデシャ。サシェス族族長として、礼を言う。ありがとう」
「……俺達もエルフ族に恩を売るためにやった事だ。礼なんていらない」
この手の相手に隠し事は無理だ。俺の勘がそう言っていた。
正直に返すと、アデシャ族長は快活に笑った。
「くかかかかっ! やはり面白いなお主。この妾を前に、そこまで豪胆に話せる者はそうはいないぞ」
……地帝のエンパイオといい、アデシャ族長といい、ある一定の強さを持つ奴らは、なんで俺をそんなに面白がるんだ。別に面白いことはしてないんだが……。
アデシャ族長は目に涙を浮かべながら、俺を射抜くように見つめてきた。
「ふむ……妾の魔法を一度で破り、肝も据わっている。それに歳にしては良い風格を漂わせているのぅ……だからこそ惜しい。これ程の男が、寿命の短い人間族というのはな……」
「……過大評価してくれてるみたいだが、俺はそんな大層なものじゃない」
「お主こそ自分を過小評価し過ぎじゃ。それは、横の二人の方が分かっているのではないか?」
横の二人?
レアナとリエンをチラッと見ると、うんうんと深く頷いていた。いや、別に俺はある程度強いだけの一般ピーポーなんだが。別に最強って訳でもないし、やれる事をやってるだけで……何か調子狂うな。
その時、シュユがコホンと咳払いをした。
「あの、族長。そろそろ話を進めてもよろしいでしょうか?」
「お? ああ、そうじゃったな。すまんすまん」
アデシャ族長は扇を開くと、無言で俺を見つめた。どうやら、俺から話をしろってことみたいだな。
「……今回、俺達がシュユを助けたのは他でもない。里に俺達の拠点を置く許可をくれ」
俺達の存在と目的を簡潔に伝えた。里を守る変わりに金品を要求する、と言ったら聞こえは悪いが、つまりはそういう事になる。
それを伝えると、アデシャ族長はにこやかに頷いた。
「うむ、良いぞ!」
いや軽いな!?
俺達三人は唖然としていたが、シュユはやっぱり、と言った顔をしている。
「シュユから聞いていると思うが、妾も革新派の一人。革新派は他族から刺激を取り入れ、エルフとしての可能性を広げる目的もある。ギルドも、今のサシェス族の里にはないものじゃ。寧ろこちらから頭を下げてお願いするところじゃぞ」
「そ、そうかっ。ありがとう、アデシャ族長!」
「ただし条件じゃ」
……このタイミングでそれを言うのはズルいと思うが……こっちはもう断れない立場だ。仕方ない。
レアナとリエンを見ると、俺を見てコクリと頷いた。
「……俺達に出来ることなら、何でもやろう」
「……この度の戦争、不穏な空気が流れている。奴らに神樹の実を渡せば、エルフ族や人間族だけでない。世界そのものを巻き込む何かが起こる気がする。お主達には、それを阻止するよう立ち回ってもらいたいのじゃ」
……凄いな。俺達はクロ達の組織を知ってるから、その予感はしているが……アデシャ族長はただの直感でそう感じ取っているのか。
「……勿論だ。任せてくれ」
「……かたじけない」
目を伏せて感謝の言葉を述べる。
が、次の瞬間には目を爛々と輝かせて立ち上がった。
「よし! なら今日は客人を大いに歓迎しようではないか! 酒と肉を持って来るのじゃ! ジオウ、必要なら女も付けるぞ!」
「え!? それは願っても……あ、いや止めときますすみません」
だから二人して目の光を消して睨まないでほしい。冗談、冗談だから。
二人は俺からアデシャ族長に目を向けると、怯むことなく睨みつける。
「ジオウには女なんて必要ないもんっ。何なら金輪際そんなの必要ないわ!」
「そうですっ、ジオウさんに女は必要ありませんから!」
「俺には子孫を残す権利すらないの!?」
流石にまだ二十一歳の油の乗った男だぞ! 将来的には結婚とか色々と憧れるお年頃だからな!?
「くかかかかっ! 冗談じゃ! お主達のような可愛らしい女子を連れているのだから、わざわざ無粋な真似はせんよ!」
……あぁ、何だろう……アデシャ族長と話してると、すっげぇ疲れるんだけど……。
その後、族長宅で行われた盛大な歓迎会に、俺、レアナ、リエンは揃って飲み潰された。
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