パーティーを追放された俺は、隠しスキル《縁下》で世界最強のギルドを作る

赤金武蔵

第16話 圧倒的絶句

 俺達は早速館に戻ると、それぞれ準備を始める。


 まあ準備と言っても、俺はいつもの茶色のローブとアンサラーだけだ。荷物らしい荷物は特に持っていかない。邪魔になると面倒だからな。


 その格好で執務室を出ようとすると、レアナとリエンが執務室に入ってきた。


「あ、丁度良かったジオウ。あんたに渡す物があったの」


「渡す物?」


「はい、こちらです」


 リエンがグイッと紙袋に入った何かを突き出してきた。持ってみると……すっげぇ軽いな。まるで何も入ってないみたいだ。


 紙袋の中に手を突っ込むと、手触りのいいものが入っている。何これ?


「お……おおっ、カッコイイ……!」


 出て来たのは、黒を基調に金色の刺繍が入っている、全身を覆い隠すほど巨大なローブだ。しかもサイズも俺の普段から使っているローブと同じ!


「どうしたんだよ、これ」


「私達のリーダーが、いつまでもこんな不格好な安物を着てたら、私達の価値もそれ相応に見られちゃうからね。私達からのプレゼントよ」


「王族御用達の専門店、オーダークリエイトで、オーダーメイドで作ってもらいました。デザインはレアナちゃん。魔法付与は私がしました」


 オーダークリエイト!? 【白虎】時代に何度か行ったことあるけど、あそこ相当高い店だぞ!? 


「こ、こんな高価なもの……良いのか?」


「勿論! あんたの為に作ったんだから、ありがたく思いなさい!」


「レアナちゃん、この為に夜も寝ないでデザインしたんですよ」


「そそそそそれは言わないでって言ったじゃない! あれよ、私デザインが好きなだけだから!」


 レアナ……俺のためにそんな……。


「……レアナ、ありがとう。お疲れ様」


「そっ……!? つ、疲れてなんかないわよっ、好きでやった事だもん……」


 出たー! 久々の髪モフモフ! あぁ〜可愛いなぁ……。


 可愛さにほのぼのしていると、レアナが思い出したように人の悪い笑みを浮かべ、リエンを見る。


「あれぇ? そう言えば、デザインは私がしたけど、リエンもどうしてジオウの背格好まで知ってるのかしら? 肩幅とか首周りとか、色々教えてくれたのってリエンよねぇ?」


「え? だって将来、もしかしたら私のアンデッドになるかもしれない体ですよ? それくらい知ってて当然じゃないですか?」


「…………」


 レアナ、絶句。圧倒的絶句。


 と言うか、リエンのこの気持ち悪いストーカーみたいな感じ、久々に聞いたな……。俺も今の発言はドン引きを通り越して身の危険を感じるぞ……。


 ま、まあ、今はそれ所じゃないのは分かってる。うん、気持ちを切り替えるぞ、俺。しっかりしろ。


「そ、それで、ローブにはどんな魔法が付与されてるんだ?」


「はい。魔法障壁、超魔法障壁、物理障壁、超物理障壁、身体強化三重掛け、状態異常無効化、精神攻撃阻害、浄化魔法、自動修復魔法、体温調節魔法ですね。アンデッドマジシャンを使って、少々掛けさせてもらいました」


 少々? 今少々って言ったか? 王族の使ってるローブでさえもう少し控えめだぞ? これ、もしかしたら国宝級ローブよりめちゃめちゃな魔法掛かってるぞ? そこんとこ分かってる?


 いや、感謝はしてる。してるけど、限度というものがだね……。


「……あ、ありがとう」


 ……折角掛けてくれたんだし、このままでいいか。それに何かあった時のために、わざわざ魔法を解除するのも馬鹿な事だしな。


 ローブを着て、腰にアンサラーを携える。軽いと言うか、本当に着ているのか分からなくなるほどの軽さだ。


「うん、良いじゃない。似合ってるわよ」


「はい、とてもよくお似合いです」


「二人共……ありがとな」


 折角二人がくれたんだ。これに見合うだけの活躍を見せなきゃな。


 二人を伴って玄関ホールに戻る。既にシュユとペルは準備を終えて待っていた。


「すまん、待たせた」


「問題ない。だがここからエルフ族の里まで二週間は掛かる。急ぎ出発しよう」


「あ、その件なら大丈夫だ。リエン」


 リエンに合図を出すと、指をクイッと動かし、エタを時空間転移で呼び寄せた。


「さっきこのエタをエルフ族の里まで向かわせた。これで時空間転移で、いつでも向かえる」


「……え、いや、早過ぎないか? 二週間をたった数時間で?」


「エタなら二週間くらいの距離、二、三時間で踏破出来るぞ」


 俺のスキルレベルも上がって、リエンの使役するアンデッドも強くなっている。スピードなら、恐らく今うちにいるメンバーでトップだろう。


 ……うん、俺は良いんだ。俺は影。俺は縁の下の力持ち。皆が強くなってくれればそれで良い。


 若干心にダメージを負った気がするが……それは置いといて。


「リエン。頼む」


「はい。皆さん行きますよ」


 エタを中心に魔法陣が浮かび上がると、視界が大きく歪み、次の瞬間には辺りは森になっていた。


「ここがエルフの里……」


 その時。


「っ! 全員伏せろ!」


 魔法障壁結界を発動。


 飛んできた数十の弓矢・・・・・を全て弾き返した。


「くっ! レグド族とテサーニャ族の矢だ!」


「そんなっ、私達の居場所が最初からバレてたの!?」


「いやっ、恐らく探知結界の類だ! これから不可視の魔法を使う! ジオウ殿はそれまで持ち堪えていてくれ!」


「分かった!」


 まだ飛んでくる矢を弾き落とすが……徐々に数が多くなってくる……!


 シュユが目を閉じて、何らかの魔法を使う。すると、次の瞬間には矢が飛んでこなくなった。


「……これでもう大丈夫だ」


「……何を使ったんだ? 《光学迷彩カモフラージュ》ではないよな?」


「うむ。《神隠し》と呼ばれる、エルフ族に伝わる魔法の一つだ。姿だけでなく、気配や音、魔力、探知魔法の効果も全て消す。持続時間は長くはないから、今のうちに移動しよう」


 エルフ特有の魔法か……確かにこれがあれば、エルフの姿を見ることなんて出来ないだろうな……。


 だけど、まさかこんな所で奇襲を受けるなんて思わなかった。これは、気を引き締めて行かないといつやられるか分からないな。


「……レアナ、リエン。警戒レベルを少し上げろ。今ここが、既に戦場だと思え」


「了解」


「分かりました」


 俺達は、シュユとペルを先頭にして足速にその場を後にした。


 結局その後、レグド族とテサーニャ族の奇襲を受けることは無かった。

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