パーティーを追放された俺は、隠しスキル《縁下》で世界最強のギルドを作る
第12話 聖と邪の博物館
「ほほー。これが金剛桃か……」
執務室に集まる俺、レアナ、リエン、シュユは、それぞれの成果を出し合っていた。
金剛桃と呼ばれるだけあり、見た目は完全に桃の形をしたダイヤモンドだ。不思議なことに、反対側まで透き通って見える。
「これ、中身詰まってるんだよな? すっかすかに見えるんだけど」
「無論だ。金剛桃は光を乱反射させ、中身が詰まってないように錯覚させる。そうする事で、他の魔物に果実そのものを食べさせないようにしているのだ」
「いや誰が食うんだよこんなの……」
「色々いるぞ。ダイヤモンドタートルすら噛み砕くことで有名な、超雑食の喰い狂い熊。鉱石を主食にするストーンイーターが知れ渡っているな。当然奴らも、栄養がないと錯覚している金剛桃には手を出さない」
なるほど……確かにシュユに教えてもらわなきゃ、これに中身が入ってるなんて思わなかったろうな。
「ご苦労だったな、二人共。疲れ……たろうな」
はは……二人共、机に突っ伏してるな。若干やつれてるように見えるのは見間違いじゃないだろう。相当大変だったみたいだが……大丈夫か?
「疲れたなんてもんじゃないわ……まさか、この歳で全力砂遊びを三時間もするなんて思わなかったもの……」
「私も、ネクロマンサーとしての力をこんな長時間フル稼働したの初めてで……今にも干からびそうです……」
うん、ダメそうだ。
苦笑いを浮かべていると、シュユが仕方ないと言った感じで蜂蜜を取り出した。
「本来は神樹デルタに供えるものだからダメなのだが、二人には手伝ってくれた恩がある。少しだけだが、スーパーハニービーの蜜を舐めさせてやろう」
「蜂蜜程度じゃ私の疲れは取れがぼっ!?」
「レアナちゃぎゃぶっ!?」
ティースプーンに乗せられた蜂蜜を、無理矢理二人の口の中にぶち込んだ。
その瞬間、二人の体がほんのり黄金に輝くと、青白くなっていた顔色が徐々に赤みを帯び、目をカッと見開かせた。
「うわ……うわ何これ……!? 体力どころか、精神的疲労も全快したわよ!?」
「いえ、枯渇しかけていた魔力も回復しています! 何ですかこれ!?」
……さっきまで指一本動かすのも大変そうだったのに、ティースプーン一杯の蜂蜜で回復した……? これが、超超超希少種のスーパーハニービーだけが集めた、蜂蜜の力なのか……。
「ふふふ。凄いだろ? スーパーハニービーの集める蜜は、状態異常や体力を全て全快以上にしてくれる。恐らく今の二人は、今までで一番いい感じになってるだろう」
「確かに……言葉にしづらいですけど、この感覚は今までに味わったことがないですね」
「今なら金剛桃でも握り潰せそうだわ」
止めろよ? 絶対止めろよ?
──────────
砂埃塗れの二人を風呂に押し込み、俺はシュユと執務室で話をしていた。
「神樹デルタに供えるのはこれだけでいいのか?」
「私の担当はこれだけだ。他の同朋は、聖剣の欠片、天使の羽、神狼フェンリルの牙、神秘の雫を集めに行っている。これでもスーパーハニービーの蜂蜜と金剛桃は、簡単に手に入る部類なのだ」
確かにそのラインナップを聞いたら、俺達の集めた二つなんて苦労のくの字も無いな……。
ふむ……。
「もしかしたら、その四つとも家にあるかもな」
「何だと!? 本当か!? 何故だ、何故あるんだ洗いざらい吐け!」
「あぼぼぼぼぼぼぼはなせえええええええっ!」
やめやめやめやめろろろろろろろろっ!
「あ、すまん……つい興奮してしまって……」
「げほっ、げほっ……い、いや、俺も唐突だった」
シュユは深呼吸をして落ち着いたのか、ティーカップを手に……あ、落ち着いてないな。手がガッタガタだ。
「どんなものかは分からないから、シュユ自身で探してくれ。案内する」
「あ、ああ……」
シュユとペルを連れ、執務室にあるもう一つの扉を開けると、直ぐに地下へ続く階段が現れた。《ライト》の魔法を使い、足元を照らしながらその中を降りる。
確かアルケミストの大洋館を攻略した後、リエンが館中に散らばっていた錬金術の材料を、一つの部屋に纏めていたはずだ。リエン曰く、珍しい物も大量にあったらしい。あそこなら或いは……。
「お、おぉ……? 何だ、この雰囲気は……」
「…………!」
シュユとペルが何かを感じ取ったのか、俺の背後で体を強ばらせる。
「どうしたんだ?」
「……この下から漂ってくる感じ……不思議だ。神聖なオーラや邪悪なオーラが入り交じっていて、気味が悪い……」
「…………!」
身震いするシュユと、それに寄り添うようにしているペル。俺は何も感じないけど、自然と共存するエルフには感じるものがあるのかもな……。
神聖なオーラと邪悪なオーラか……グレゴリオの野郎、一体どんな物を集めてやがったんだ……?
若干の緊張感を持ち、螺旋状に続く階段を降りると、その先に合金で出来た扉が現れた。
扉の中央に手を翳して魔力を流し込む。
『ジオウ・シューゼンの魔力を確認──ロック解除』
鍵が開く重厚な音と共に、扉が自動的に横にスライドした。
「な、何だこれは……!?」
「元々この館の持ち主だった奴が、セキュリティ面を考えて作り出した仕掛けだ。今は念の為、俺の魔力を流さないと開かないようになっている」
「……人間界と言うのはこんなものが蔓延っているのか……」
いや、この仕掛けがあるのこの館だけだと思うが……まあ良い。
部屋の中に入ると、七つの棚が平行に並び、それが二〇メートルも連なっていた。
「……凄いな……まるで、聖と邪の博物館だ」
「俺はここで待ってるから、好きに探してくればいい」
「あ、ああ……!」
シュユは緊張した面持ちで部屋の中に入っていき、棚を物色し始めた。一応リエンが種類ごとに分けているから、そう手間は掛からないとは思うが……。
執務室に集まる俺、レアナ、リエン、シュユは、それぞれの成果を出し合っていた。
金剛桃と呼ばれるだけあり、見た目は完全に桃の形をしたダイヤモンドだ。不思議なことに、反対側まで透き通って見える。
「これ、中身詰まってるんだよな? すっかすかに見えるんだけど」
「無論だ。金剛桃は光を乱反射させ、中身が詰まってないように錯覚させる。そうする事で、他の魔物に果実そのものを食べさせないようにしているのだ」
「いや誰が食うんだよこんなの……」
「色々いるぞ。ダイヤモンドタートルすら噛み砕くことで有名な、超雑食の喰い狂い熊。鉱石を主食にするストーンイーターが知れ渡っているな。当然奴らも、栄養がないと錯覚している金剛桃には手を出さない」
なるほど……確かにシュユに教えてもらわなきゃ、これに中身が入ってるなんて思わなかったろうな。
「ご苦労だったな、二人共。疲れ……たろうな」
はは……二人共、机に突っ伏してるな。若干やつれてるように見えるのは見間違いじゃないだろう。相当大変だったみたいだが……大丈夫か?
「疲れたなんてもんじゃないわ……まさか、この歳で全力砂遊びを三時間もするなんて思わなかったもの……」
「私も、ネクロマンサーとしての力をこんな長時間フル稼働したの初めてで……今にも干からびそうです……」
うん、ダメそうだ。
苦笑いを浮かべていると、シュユが仕方ないと言った感じで蜂蜜を取り出した。
「本来は神樹デルタに供えるものだからダメなのだが、二人には手伝ってくれた恩がある。少しだけだが、スーパーハニービーの蜜を舐めさせてやろう」
「蜂蜜程度じゃ私の疲れは取れがぼっ!?」
「レアナちゃぎゃぶっ!?」
ティースプーンに乗せられた蜂蜜を、無理矢理二人の口の中にぶち込んだ。
その瞬間、二人の体がほんのり黄金に輝くと、青白くなっていた顔色が徐々に赤みを帯び、目をカッと見開かせた。
「うわ……うわ何これ……!? 体力どころか、精神的疲労も全快したわよ!?」
「いえ、枯渇しかけていた魔力も回復しています! 何ですかこれ!?」
……さっきまで指一本動かすのも大変そうだったのに、ティースプーン一杯の蜂蜜で回復した……? これが、超超超希少種のスーパーハニービーだけが集めた、蜂蜜の力なのか……。
「ふふふ。凄いだろ? スーパーハニービーの集める蜜は、状態異常や体力を全て全快以上にしてくれる。恐らく今の二人は、今までで一番いい感じになってるだろう」
「確かに……言葉にしづらいですけど、この感覚は今までに味わったことがないですね」
「今なら金剛桃でも握り潰せそうだわ」
止めろよ? 絶対止めろよ?
──────────
砂埃塗れの二人を風呂に押し込み、俺はシュユと執務室で話をしていた。
「神樹デルタに供えるのはこれだけでいいのか?」
「私の担当はこれだけだ。他の同朋は、聖剣の欠片、天使の羽、神狼フェンリルの牙、神秘の雫を集めに行っている。これでもスーパーハニービーの蜂蜜と金剛桃は、簡単に手に入る部類なのだ」
確かにそのラインナップを聞いたら、俺達の集めた二つなんて苦労のくの字も無いな……。
ふむ……。
「もしかしたら、その四つとも家にあるかもな」
「何だと!? 本当か!? 何故だ、何故あるんだ洗いざらい吐け!」
「あぼぼぼぼぼぼぼはなせえええええええっ!」
やめやめやめやめろろろろろろろろっ!
「あ、すまん……つい興奮してしまって……」
「げほっ、げほっ……い、いや、俺も唐突だった」
シュユは深呼吸をして落ち着いたのか、ティーカップを手に……あ、落ち着いてないな。手がガッタガタだ。
「どんなものかは分からないから、シュユ自身で探してくれ。案内する」
「あ、ああ……」
シュユとペルを連れ、執務室にあるもう一つの扉を開けると、直ぐに地下へ続く階段が現れた。《ライト》の魔法を使い、足元を照らしながらその中を降りる。
確かアルケミストの大洋館を攻略した後、リエンが館中に散らばっていた錬金術の材料を、一つの部屋に纏めていたはずだ。リエン曰く、珍しい物も大量にあったらしい。あそこなら或いは……。
「お、おぉ……? 何だ、この雰囲気は……」
「…………!」
シュユとペルが何かを感じ取ったのか、俺の背後で体を強ばらせる。
「どうしたんだ?」
「……この下から漂ってくる感じ……不思議だ。神聖なオーラや邪悪なオーラが入り交じっていて、気味が悪い……」
「…………!」
身震いするシュユと、それに寄り添うようにしているペル。俺は何も感じないけど、自然と共存するエルフには感じるものがあるのかもな……。
神聖なオーラと邪悪なオーラか……グレゴリオの野郎、一体どんな物を集めてやがったんだ……?
若干の緊張感を持ち、螺旋状に続く階段を降りると、その先に合金で出来た扉が現れた。
扉の中央に手を翳して魔力を流し込む。
『ジオウ・シューゼンの魔力を確認──ロック解除』
鍵が開く重厚な音と共に、扉が自動的に横にスライドした。
「な、何だこれは……!?」
「元々この館の持ち主だった奴が、セキュリティ面を考えて作り出した仕掛けだ。今は念の為、俺の魔力を流さないと開かないようになっている」
「……人間界と言うのはこんなものが蔓延っているのか……」
いや、この仕掛けがあるのこの館だけだと思うが……まあ良い。
部屋の中に入ると、七つの棚が平行に並び、それが二〇メートルも連なっていた。
「……凄いな……まるで、聖と邪の博物館だ」
「俺はここで待ってるから、好きに探してくればいい」
「あ、ああ……!」
シュユは緊張した面持ちで部屋の中に入っていき、棚を物色し始めた。一応リエンが種類ごとに分けているから、そう手間は掛からないとは思うが……。
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