パーティーを追放された俺は、隠しスキル《縁下》で世界最強のギルドを作る
第9話 神樹を取り巻く環境
シュユを連れた俺達は、まずレアナの部屋に戻り、大洋館へと繋げている扉の前に立った。
「これからお前を、俺達のアジトに連れていく。そこで互いに有益な情報を交換しよう。今ならまだ引き返せるが、向こうに着いたら本格的に逃げられないぞ? どうする?」
「愚問だ。確かに神樹デルタへの供え物も大事だが、それは他の者も集めている。私としてはセツナ姉様の安否と救出も最重要。罰は当たるまい」
……シュユはセツナのこと、本当に尊敬してたんだな……でなきゃ、こんな優しい顔なんて出来ない。
「……分かった。じゃあ行くぞ」
扉を開けると、その先にはエタがお辞儀をして出迎えてくれていた。相変わらずの無表情だけど、その口が小さく開く。
「ジオウさん、レアナちゃん。お帰りなさい」
どうやらリエンが、エタを通して帰ってくるのを待っててくれたらしい。
「おう、ただいま」
「リエン、ただいま。すっごいの捕まえたわよ」
「何ですか? カブトムシ?」
「そこまでガキじゃないわよ!?」
いや、レアナはちょっと子供っぽい所もあるが……今はそれはいいや。
レアナがシュユの背中を押し、エタの前に立たせた。
「見てリエン! 私の野草シチューでエルフが釣れたわ! 正真正銘、本物のエルフよ!」
「えっ!? あの劇物で!?」
「あ、あれはレシピがそれ用だったからよ! 私のせいじゃないわ!」
「と言うか、その話だと私が劇物に釣られたような感じになってるぞ! 私じゃない! ペルが釣られたんだ!」
突然売られたペル。見ろ、めっちゃビックリした顔してるじゃないか。可哀想に。
「取り敢えず執務室に集合。そこで彼女の紹介をする」
「分かりました」
エタは少しお辞儀をすると、ランタンを持って俺達の前を歩く。
それに付いていくと、シュユが鼻をヒクヒクと動かした。
「……なあ、ジオウ殿。奴は死肉か?」
「ああ。うちにはネクロマンサーがいる。あの子は、そいつが使役してるアンデッドだ。……もしかして、エルフってそう言うのダメか?」
「いや、私は革新派だからダメではない。だが我らエルフは自然に身を任せている。自然派の奴らは、恐らく受け入れないだろうな」
なるほどな。エルフの間にもそう言った派閥があるのか……。
多分だけど、伝統と時間の流れを重きに置くのが自然派。外部からの刺激を取り入れて発展させていこうとしてるのが革新派なんだろう。
今回捕まえられたのが、革新派で良かった……でないと、革新派のエルフを探す羽目になってたからな。
暫く廊下を歩き、執務室へやって来た。既にリエンは執務室のソファーに腰を掛けている。
「お帰りなさい、お二人共。そして初めましてエルフさん。私がネクロマンサーのリエンです。主にここの管理と、守護を任されています」
「リエン殿、だな。私の名はシュユ。訳あって、暫くここで行動を共にすることになった。よろしく頼む」
よし、これで全員との自己紹介は終わったな。
「皆座ってくれ。そしてシュユ。まずは俺達が掴んでる、セツナの情報について教えておく。一部憶測もあるが、良いか?」
「無論だ。セツナ姉様の手がかりになるのなら、例え確率が1%以下でも欲しい。頼む」
「……分かった」
今俺達の知るセツナに関しての情報を、全て話した。クロと呼ばれる男のいる組織で生かされ、二ヶ月後の神樹デルタに関する何かを企んでいることも。
憶測も交えて話すと、シュユは一つ残らずメモを取っていた。その顔は真剣そのものだ。
「奴らが神樹デルタを狙う理由は分からない。ここで聞きたいんだけど、神樹デルタにはどんな効果があるんだ?」
そもそもだが、神樹何てものがこの世に存在することを初めて知ったんだ。恐らくエルフの中でも秘匿され続けてきたんだろう。
シュユは出された紅茶に口をつけ、ゆっくりと話し出した。
「……神樹デルタは、リスマン族の崇拝する樹だ。それが二〇〇〇年に一度、巨大な花を開花させ、一晩にして実をつける。それが今から二ヶ月後の満月の日だ」
「その木の実には、一時的にだが口に含んだ者の力を数百倍から数千倍にすると言われている。私達はリスマン族とは違う部族だが、実をつける度に共闘し、神樹デルタを守っている」
「他族にも信仰する樹はある。私の所属するサシェス族は、宝樹リシリアを信仰している。聖樹アーベラを信仰するのはレグド族。天樹オメガを信仰するのはテサーニャ族」
「レグド族とテサーニャ族は、毎回のように徒党を組んでリスマン族へ攻め込んでくる。リスマン族とサシェス族は共闘して撃退するが、今回も、恐らく来るだろう」
……てことは、今回はその中にクロの組織も来るってことか……もしかしたら、あのエンパイオも……。
もし本当に今回の戦いにエンパイオが来ることがあったら、本格的にまずい。俺じゃ絶対勝てないし、強くなったとは言え最悪レアナも殺されるだろう。
……色々と対策を考えなきゃな。
ぐるぐると考えていると、シュユが話を続けた。
「クロなるものが欲してるのは、間違いなく神樹デルタの実だ。セツナ姉様を手に入れたのも、詳しい場所や実をつける時期を知っているからだろう」
うん……? だとしたら、おかしいな……。
「あのー、すみません。そこまで凄い木の実なのでしたら、セツナさんもそんな悪い人には渡したくないんじゃ……」
俺の疑問に思ってる事を、リエンが代表して聞いてくれた。
それはシュユも思ってたのか、顔を引きつらせる。
「……分からん……私も、セツナ姉様も、母様から神樹デルタの重要性は耳にタコが出来るほど聞かされていた。私達は、リスマン族と共に神樹デルタを守る事に誇りを持っていた。……いたんだが……」
シュンと落ち込むシュユ。
……ま、こればっかりは本人に直接聞かないと分からない事だな。
「……神樹デルタを取り巻く環境は良く分かった。それを踏まえた上で、俺達はリスマン族、サシェス族に味方をする」
「えっ!? い、いいのか……?」
「勿論だ。あんな奴らに神樹デルタを渡したら、どうなるか考えたくもない。ついでにセツナも助けて、また姉妹仲良く暮らして行けるようにしてやるよ」
それにここで二つの部族に恩を売っておけば、今後【虚ろう者】の活動を広げられるかもしれないからな。一つより二つの方がお得だろ?
「……ありがとう……ありがとう、ジオウ殿……!」
俺の手を握り、涙目で感謝の言葉を繰り返すシュユ。ちょっとドキッとしたのは内緒だ。
「ま、任せろ。その代わり、俺の願いを何でも一つ聞く件、忘れるな?」
「不潔ね」
「不潔ですね」
「やはりエロ大魔王か貴様……!」
「ちげーっつってんだろ話をややこしくするな!」
「これからお前を、俺達のアジトに連れていく。そこで互いに有益な情報を交換しよう。今ならまだ引き返せるが、向こうに着いたら本格的に逃げられないぞ? どうする?」
「愚問だ。確かに神樹デルタへの供え物も大事だが、それは他の者も集めている。私としてはセツナ姉様の安否と救出も最重要。罰は当たるまい」
……シュユはセツナのこと、本当に尊敬してたんだな……でなきゃ、こんな優しい顔なんて出来ない。
「……分かった。じゃあ行くぞ」
扉を開けると、その先にはエタがお辞儀をして出迎えてくれていた。相変わらずの無表情だけど、その口が小さく開く。
「ジオウさん、レアナちゃん。お帰りなさい」
どうやらリエンが、エタを通して帰ってくるのを待っててくれたらしい。
「おう、ただいま」
「リエン、ただいま。すっごいの捕まえたわよ」
「何ですか? カブトムシ?」
「そこまでガキじゃないわよ!?」
いや、レアナはちょっと子供っぽい所もあるが……今はそれはいいや。
レアナがシュユの背中を押し、エタの前に立たせた。
「見てリエン! 私の野草シチューでエルフが釣れたわ! 正真正銘、本物のエルフよ!」
「えっ!? あの劇物で!?」
「あ、あれはレシピがそれ用だったからよ! 私のせいじゃないわ!」
「と言うか、その話だと私が劇物に釣られたような感じになってるぞ! 私じゃない! ペルが釣られたんだ!」
突然売られたペル。見ろ、めっちゃビックリした顔してるじゃないか。可哀想に。
「取り敢えず執務室に集合。そこで彼女の紹介をする」
「分かりました」
エタは少しお辞儀をすると、ランタンを持って俺達の前を歩く。
それに付いていくと、シュユが鼻をヒクヒクと動かした。
「……なあ、ジオウ殿。奴は死肉か?」
「ああ。うちにはネクロマンサーがいる。あの子は、そいつが使役してるアンデッドだ。……もしかして、エルフってそう言うのダメか?」
「いや、私は革新派だからダメではない。だが我らエルフは自然に身を任せている。自然派の奴らは、恐らく受け入れないだろうな」
なるほどな。エルフの間にもそう言った派閥があるのか……。
多分だけど、伝統と時間の流れを重きに置くのが自然派。外部からの刺激を取り入れて発展させていこうとしてるのが革新派なんだろう。
今回捕まえられたのが、革新派で良かった……でないと、革新派のエルフを探す羽目になってたからな。
暫く廊下を歩き、執務室へやって来た。既にリエンは執務室のソファーに腰を掛けている。
「お帰りなさい、お二人共。そして初めましてエルフさん。私がネクロマンサーのリエンです。主にここの管理と、守護を任されています」
「リエン殿、だな。私の名はシュユ。訳あって、暫くここで行動を共にすることになった。よろしく頼む」
よし、これで全員との自己紹介は終わったな。
「皆座ってくれ。そしてシュユ。まずは俺達が掴んでる、セツナの情報について教えておく。一部憶測もあるが、良いか?」
「無論だ。セツナ姉様の手がかりになるのなら、例え確率が1%以下でも欲しい。頼む」
「……分かった」
今俺達の知るセツナに関しての情報を、全て話した。クロと呼ばれる男のいる組織で生かされ、二ヶ月後の神樹デルタに関する何かを企んでいることも。
憶測も交えて話すと、シュユは一つ残らずメモを取っていた。その顔は真剣そのものだ。
「奴らが神樹デルタを狙う理由は分からない。ここで聞きたいんだけど、神樹デルタにはどんな効果があるんだ?」
そもそもだが、神樹何てものがこの世に存在することを初めて知ったんだ。恐らくエルフの中でも秘匿され続けてきたんだろう。
シュユは出された紅茶に口をつけ、ゆっくりと話し出した。
「……神樹デルタは、リスマン族の崇拝する樹だ。それが二〇〇〇年に一度、巨大な花を開花させ、一晩にして実をつける。それが今から二ヶ月後の満月の日だ」
「その木の実には、一時的にだが口に含んだ者の力を数百倍から数千倍にすると言われている。私達はリスマン族とは違う部族だが、実をつける度に共闘し、神樹デルタを守っている」
「他族にも信仰する樹はある。私の所属するサシェス族は、宝樹リシリアを信仰している。聖樹アーベラを信仰するのはレグド族。天樹オメガを信仰するのはテサーニャ族」
「レグド族とテサーニャ族は、毎回のように徒党を組んでリスマン族へ攻め込んでくる。リスマン族とサシェス族は共闘して撃退するが、今回も、恐らく来るだろう」
……てことは、今回はその中にクロの組織も来るってことか……もしかしたら、あのエンパイオも……。
もし本当に今回の戦いにエンパイオが来ることがあったら、本格的にまずい。俺じゃ絶対勝てないし、強くなったとは言え最悪レアナも殺されるだろう。
……色々と対策を考えなきゃな。
ぐるぐると考えていると、シュユが話を続けた。
「クロなるものが欲してるのは、間違いなく神樹デルタの実だ。セツナ姉様を手に入れたのも、詳しい場所や実をつける時期を知っているからだろう」
うん……? だとしたら、おかしいな……。
「あのー、すみません。そこまで凄い木の実なのでしたら、セツナさんもそんな悪い人には渡したくないんじゃ……」
俺の疑問に思ってる事を、リエンが代表して聞いてくれた。
それはシュユも思ってたのか、顔を引きつらせる。
「……分からん……私も、セツナ姉様も、母様から神樹デルタの重要性は耳にタコが出来るほど聞かされていた。私達は、リスマン族と共に神樹デルタを守る事に誇りを持っていた。……いたんだが……」
シュンと落ち込むシュユ。
……ま、こればっかりは本人に直接聞かないと分からない事だな。
「……神樹デルタを取り巻く環境は良く分かった。それを踏まえた上で、俺達はリスマン族、サシェス族に味方をする」
「えっ!? い、いいのか……?」
「勿論だ。あんな奴らに神樹デルタを渡したら、どうなるか考えたくもない。ついでにセツナも助けて、また姉妹仲良く暮らして行けるようにしてやるよ」
それにここで二つの部族に恩を売っておけば、今後【虚ろう者】の活動を広げられるかもしれないからな。一つより二つの方がお得だろ?
「……ありがとう……ありがとう、ジオウ殿……!」
俺の手を握り、涙目で感謝の言葉を繰り返すシュユ。ちょっとドキッとしたのは内緒だ。
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