パーティーを追放された俺は、隠しスキル《縁下》で世界最強のギルドを作る
第4話 懐かしのロケットデカ〇イ
マスターに貰ったメモを元に、没落した貴族の屋敷があった場所へ向かう。
場所としては、レーゼン王国の西地区。それも住宅地ではなく、かなり賑わっている商店街だ。
「……懐かしいな……」
西地区は俺が住んでいた場所で、ここも住んでた頃にはよくお世話になった。あまりいい顔はされなかったけど。
「えっと……ここを曲がった所か」
八百屋の角を右に曲がる。け、ど……。
「……あれ? ……ギルド?」
突き当たりにあったのは、俺が世話になっていた冒険者ギルド西支部だった。
……よく見ると、この道見覚えがあるどころじゃない。冒険者ギルドに所属してた時に、いつも通ってた道だ。
え、あれ? 道間違えた?
メモを何度も読み直し、街のプレートに書かれている番号と見比べる。……間違いない。ここの番地だ。
……そういや、ギルドの番地って知らないな……。
と、取り敢えず確認してみよう。
フードを深く被り、八百屋のおっちゃんに話しかける。
「らっしゃい! 何にするよ!」
「じゃあリンゴを一つくれ。……なあ、この番地、あのギルドで間違いないか?」
「お? どれどれ……ああ、間違いねーよ。何だい兄さん。あそこに入るつもりかい? 止めとけ止めとけ。あそこ、ここ最近失敗続きで誰も依頼を出してねーんだ」
失敗続き? ……ああ、俺がいなくなったからか。
てことは、ミミさん俺を問題なく解雇してくれたんだな。あれから気にしたこと無かったが、そんな事になってたんだな……。
……何となく、居心地が悪いな。金払ってさっさと離れよう。
「すまん、今金貨しか持ち合わせてないんだ。釣りはいらん」
「あっ、ちょっと兄さん!?」
金貨を投げ渡して、足早に八百屋とギルドから離れる。
没落貴族の屋敷が冒険者ギルドになってたのは驚きだ。ギルドも、もっと前からあると思ったんだが……。
ギルマスに聞ければ良いが、このタイミングで会うと、何となく面倒な予感がする。
……仕方ない。この付近に、没落貴族がいたことを知ってる人を探すか。住宅地の方にも、当時のことを知ってる人がいるかも──
グイッ。
「っと……ん?」
えっ、何、この布巻き人間は? 誰? 怖っ。
突然の布巻き人間に驚愕していると、布巻き人間はキョロキョロと周りを見渡す。いや、一番怪しいんだけど……。
「……こっち、来てください」
「あっ、ちょっ!?」
無理矢理引っ張らないで!?
店と店の間の狭い通りを連れて行かれる。
三つ、四つめの大通りを横断した所で、ようやく走るスピードが緩まった。
「ま、待ってくれっ! 一体何なんだよ!?」
とにかく手を振りほどく。異様にパワーが強かったな……何者だ?
警戒して見ていると、布巻き人間がゆっくりと振り返った。
……あれ? この布に巻かれてても主張するロケットデカパイ、どこかで……。
「……ジオウさん、ですよね?」
「な、何で俺の名前を……?」
布巻き人間が、頭から被っていた布を取る。と……。
「あ、れ……? ミミさん?」
冒険者ギルド西支部。そこの名物(ロケットデカパイ的に)受付嬢、ミミさんが、やつれた顔で立っていた。
──────────
「……お久しぶりですね」
「ああ。あれから全くのご無沙汰だったからな」
俺は今、ミミさんの借りているアパートのリビングでお茶をご馳走になっていた。
……思いの外、殺風景な部屋だ。ミミさんの事だから、もっと可愛い小物とか置いてるものと思ってたんだけど……。
ミミさん自身も、さっきから体に巻いている布を取らない。何か訳でもあるんだろうか?
「フード被ってたのに、よく俺だと気付いたな」
「ええ、まあ。何となく、ジオウさんと同じ気配がするなーと思ったんです。……前とは違って、顔付きは大分変わってますが」
え、そうか? そんなに変わってるようには見えないが……俺の方も色々あったから、そのせいかもな。
顔をぺたぺたと触っていると、やつれ顔のミミさんが、ほんの少しだけ朗らかに笑った。
「ふふ。やっぱり、中身は変わってないですね。素直と言うか、純粋と言うか」
「これでも一丁前に男として不純を自覚してるけどな」
「そうじゃなくて、心が綺麗なんです」
……心が綺麗、か……。
俺が【白虎】のメンバーにした事を思うと、素直に受け入れられなかった。
「……そんな事もない……」
「……そうです、か。すみません、変な事言って」
「……いや、大丈夫だ」
モヤモヤする雰囲気を一旦切るように、出されたお茶を飲む。
「はぁ……あ、そうだ。冒険者ギルドの事なんだけど……」
「っ……聞きました?」
「ああ。失敗続きだって聞いた」
原因は勿論俺だ。それは分かってる。だけどその事を話す必要は無いし、話すつもりもない。
ミミさんもお茶を飲み、少しずつ話し出した。
「……ジオウさんがギルドを抜けてから、魔物が異様に強くなったと報告を受けました。そのせいで冒険者の皆様が依頼を失敗し続けてしまい……。よって、魔物が強くなっていることを冒険者ギルド本部へと報告をしました」
「最初は本部も取り合ってくれました。偵察、魔物の強さの再測定、他支部からの応援」
「ですが本部が出した結論は、変化無し。何も変わっていなかったんです」
「いえ、変わったのは私達のギルド……原因は今も不明ですが、私達のギルド全体の強さが下がっている。本部はそう結論を出しました」
「そのせいで私達への依頼数は減り、冒険者も引退や他支部への引き抜き……今残っているのは、西支部に愛着のある人達だけなんです」
今の現状を話し、ミミさんはうっすらと涙を浮かべた。
「ご、ごめんなさい。こんな暗い話……」
「大丈夫だ、問題ない」
……びっくりした、な。
今のギルドの状況が、じゃない。
今の話を聞いて、俺の心にまるっきり響かなかった。そこにびっくりした。
おかしい。ちょっと前までは、こういう話を聞くと同情とか、罪悪感を感じてたんだが……。
俺の心、どうしちまったんだ?
……だけど、今の話を聞いて納得いったことがある。
ミミさんが布を取らない理由。
それは、服を着てないからだ。
よく見ると、布と布の隙間から柔肌が見え隠れしてる。
依頼数の低下は、そのままギルド員の収入の低下に繋がる。食えるものもその日凌ぎなんだろう。だから、部屋の中も違和感がある程さっぱりしてるんだ。
自分でも驚く程の冷静さで推理してると、ミミさんが「と、ところで、」と話題を変えた。
「ジオウさんは今何をしているんですか? 見たところ、冒険者では無さそうですが……」
「ああ。まあちょっとした組織を立ち上げたんだ」
「へぇ、良いですね。もし今のギルドを首になったら、ジオウさんの所にお世話になろうかなー」
……なるほど、受付か。そういや、受付の事とか一切考えてなかったな。
もし今後、外部から依頼を受けるとなった時に、そこの仲介役が必要だ。その点ミミさんは、受付のプロと言ってもいい。任せるにはこれ以上の人材もいないだろう。
「……検討しておく」
「えっ……冗談のつもりだったんですが……」
「俺は本気だ。今はまだ無理だが」
外部、つまり、亜人族と繋がりを持たなきゃならない。俺もレアナもリエンも、今はそっちに手一杯でミミさんには構ってられないんだ。
お茶を飲み干すと、席を立った。
「ごちそうさん。久々に話せて良かった」
「は、はい。私もです」
ミミさんに背を向け、アパートを出ようとすると……ふと心がある方向に傾いた。いわゆる気まぐれと言うやつだ。
「そうだ。今の格好も素敵だが、次会う時はもうちょっとましな服で出迎えてくれると嬉しい」
布の袋をミミさんの前に投げ渡すと、傾いて金貨が零れ落ちた。
「えっ!? き、金貨……!?」
「多分五〇枚くらいある。これで暫くは持つだろう。返さなくていいぞ。じゃ」
「ま、待っ──」
アパートを出ると、直ぐに建物の上に飛び上がり、屋根伝いに冒険者ギルドへ向かった。
ミミさんとあんな約束したんだ。時間なんて掛けてられないよな。
場所としては、レーゼン王国の西地区。それも住宅地ではなく、かなり賑わっている商店街だ。
「……懐かしいな……」
西地区は俺が住んでいた場所で、ここも住んでた頃にはよくお世話になった。あまりいい顔はされなかったけど。
「えっと……ここを曲がった所か」
八百屋の角を右に曲がる。け、ど……。
「……あれ? ……ギルド?」
突き当たりにあったのは、俺が世話になっていた冒険者ギルド西支部だった。
……よく見ると、この道見覚えがあるどころじゃない。冒険者ギルドに所属してた時に、いつも通ってた道だ。
え、あれ? 道間違えた?
メモを何度も読み直し、街のプレートに書かれている番号と見比べる。……間違いない。ここの番地だ。
……そういや、ギルドの番地って知らないな……。
と、取り敢えず確認してみよう。
フードを深く被り、八百屋のおっちゃんに話しかける。
「らっしゃい! 何にするよ!」
「じゃあリンゴを一つくれ。……なあ、この番地、あのギルドで間違いないか?」
「お? どれどれ……ああ、間違いねーよ。何だい兄さん。あそこに入るつもりかい? 止めとけ止めとけ。あそこ、ここ最近失敗続きで誰も依頼を出してねーんだ」
失敗続き? ……ああ、俺がいなくなったからか。
てことは、ミミさん俺を問題なく解雇してくれたんだな。あれから気にしたこと無かったが、そんな事になってたんだな……。
……何となく、居心地が悪いな。金払ってさっさと離れよう。
「すまん、今金貨しか持ち合わせてないんだ。釣りはいらん」
「あっ、ちょっと兄さん!?」
金貨を投げ渡して、足早に八百屋とギルドから離れる。
没落貴族の屋敷が冒険者ギルドになってたのは驚きだ。ギルドも、もっと前からあると思ったんだが……。
ギルマスに聞ければ良いが、このタイミングで会うと、何となく面倒な予感がする。
……仕方ない。この付近に、没落貴族がいたことを知ってる人を探すか。住宅地の方にも、当時のことを知ってる人がいるかも──
グイッ。
「っと……ん?」
えっ、何、この布巻き人間は? 誰? 怖っ。
突然の布巻き人間に驚愕していると、布巻き人間はキョロキョロと周りを見渡す。いや、一番怪しいんだけど……。
「……こっち、来てください」
「あっ、ちょっ!?」
無理矢理引っ張らないで!?
店と店の間の狭い通りを連れて行かれる。
三つ、四つめの大通りを横断した所で、ようやく走るスピードが緩まった。
「ま、待ってくれっ! 一体何なんだよ!?」
とにかく手を振りほどく。異様にパワーが強かったな……何者だ?
警戒して見ていると、布巻き人間がゆっくりと振り返った。
……あれ? この布に巻かれてても主張するロケットデカパイ、どこかで……。
「……ジオウさん、ですよね?」
「な、何で俺の名前を……?」
布巻き人間が、頭から被っていた布を取る。と……。
「あ、れ……? ミミさん?」
冒険者ギルド西支部。そこの名物(ロケットデカパイ的に)受付嬢、ミミさんが、やつれた顔で立っていた。
──────────
「……お久しぶりですね」
「ああ。あれから全くのご無沙汰だったからな」
俺は今、ミミさんの借りているアパートのリビングでお茶をご馳走になっていた。
……思いの外、殺風景な部屋だ。ミミさんの事だから、もっと可愛い小物とか置いてるものと思ってたんだけど……。
ミミさん自身も、さっきから体に巻いている布を取らない。何か訳でもあるんだろうか?
「フード被ってたのに、よく俺だと気付いたな」
「ええ、まあ。何となく、ジオウさんと同じ気配がするなーと思ったんです。……前とは違って、顔付きは大分変わってますが」
え、そうか? そんなに変わってるようには見えないが……俺の方も色々あったから、そのせいかもな。
顔をぺたぺたと触っていると、やつれ顔のミミさんが、ほんの少しだけ朗らかに笑った。
「ふふ。やっぱり、中身は変わってないですね。素直と言うか、純粋と言うか」
「これでも一丁前に男として不純を自覚してるけどな」
「そうじゃなくて、心が綺麗なんです」
……心が綺麗、か……。
俺が【白虎】のメンバーにした事を思うと、素直に受け入れられなかった。
「……そんな事もない……」
「……そうです、か。すみません、変な事言って」
「……いや、大丈夫だ」
モヤモヤする雰囲気を一旦切るように、出されたお茶を飲む。
「はぁ……あ、そうだ。冒険者ギルドの事なんだけど……」
「っ……聞きました?」
「ああ。失敗続きだって聞いた」
原因は勿論俺だ。それは分かってる。だけどその事を話す必要は無いし、話すつもりもない。
ミミさんもお茶を飲み、少しずつ話し出した。
「……ジオウさんがギルドを抜けてから、魔物が異様に強くなったと報告を受けました。そのせいで冒険者の皆様が依頼を失敗し続けてしまい……。よって、魔物が強くなっていることを冒険者ギルド本部へと報告をしました」
「最初は本部も取り合ってくれました。偵察、魔物の強さの再測定、他支部からの応援」
「ですが本部が出した結論は、変化無し。何も変わっていなかったんです」
「いえ、変わったのは私達のギルド……原因は今も不明ですが、私達のギルド全体の強さが下がっている。本部はそう結論を出しました」
「そのせいで私達への依頼数は減り、冒険者も引退や他支部への引き抜き……今残っているのは、西支部に愛着のある人達だけなんです」
今の現状を話し、ミミさんはうっすらと涙を浮かべた。
「ご、ごめんなさい。こんな暗い話……」
「大丈夫だ、問題ない」
……びっくりした、な。
今のギルドの状況が、じゃない。
今の話を聞いて、俺の心にまるっきり響かなかった。そこにびっくりした。
おかしい。ちょっと前までは、こういう話を聞くと同情とか、罪悪感を感じてたんだが……。
俺の心、どうしちまったんだ?
……だけど、今の話を聞いて納得いったことがある。
ミミさんが布を取らない理由。
それは、服を着てないからだ。
よく見ると、布と布の隙間から柔肌が見え隠れしてる。
依頼数の低下は、そのままギルド員の収入の低下に繋がる。食えるものもその日凌ぎなんだろう。だから、部屋の中も違和感がある程さっぱりしてるんだ。
自分でも驚く程の冷静さで推理してると、ミミさんが「と、ところで、」と話題を変えた。
「ジオウさんは今何をしているんですか? 見たところ、冒険者では無さそうですが……」
「ああ。まあちょっとした組織を立ち上げたんだ」
「へぇ、良いですね。もし今のギルドを首になったら、ジオウさんの所にお世話になろうかなー」
……なるほど、受付か。そういや、受付の事とか一切考えてなかったな。
もし今後、外部から依頼を受けるとなった時に、そこの仲介役が必要だ。その点ミミさんは、受付のプロと言ってもいい。任せるにはこれ以上の人材もいないだろう。
「……検討しておく」
「えっ……冗談のつもりだったんですが……」
「俺は本気だ。今はまだ無理だが」
外部、つまり、亜人族と繋がりを持たなきゃならない。俺もレアナもリエンも、今はそっちに手一杯でミミさんには構ってられないんだ。
お茶を飲み干すと、席を立った。
「ごちそうさん。久々に話せて良かった」
「は、はい。私もです」
ミミさんに背を向け、アパートを出ようとすると……ふと心がある方向に傾いた。いわゆる気まぐれと言うやつだ。
「そうだ。今の格好も素敵だが、次会う時はもうちょっとましな服で出迎えてくれると嬉しい」
布の袋をミミさんの前に投げ渡すと、傾いて金貨が零れ落ちた。
「えっ!? き、金貨……!?」
「多分五〇枚くらいある。これで暫くは持つだろう。返さなくていいぞ。じゃ」
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