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パーティーを追放された俺は、隠しスキル《縁下》で世界最強のギルドを作る

赤金武蔵

第2話 情報屋は銭ゲバ

 リエンがエルフを執務室に呼ぶ。


 暫くして現れたのは、黄緑色を基調としたワンピースを着て、金属で作られた弓矢を背負っているエルフだった。


 肌の色は白く、目の色は翠色。髪の毛は綺麗な金髪。


 そしてやっぱり特徴的なのは、長く伸びている耳だろう。


「彼女がエルフ族のセラちゃんです。弓矢を武器に風魔法と掛け合わせて超遠距離攻撃を可能にする、私のアンデッドの中でも唯一無二の存在です」


「エルフ族は風魔法が得意なのか?」


「そうですね。得意なのは癒しを与える水、豊穣を与える風、安心を与える光です」


 ほーん。水、風、光かぁ。……それって……。


「それって、何だかジオウみたいね」


 と、俺が思った事と同じ事をレアナが言った。


「思ったが、俺は純人間産の純正人族だ。偶然だろ」


「分かってるわよ。あんたを鑑定しても、種族は人間としか出なかったもの」


 そんな偶然ってあるんだな……って、それは置いといて。


「じゃあ、セラも俺と同じ魔法を使えるのか……」


「いえ、セラちゃんは風魔法だけなんですよ。ジオウさんの《縁下》で魔法の威力や弓矢の射程距離も伸びましたが、属性だけは増えなかったんです」


 ふーん、そんな事もあるんだな。


 セラの体を、頭の先から足先まで観察する。


 ……特に変わった様子はない。耳が長いこと以外は、人間と変わりないぞ。


「ジオウ、あんたジロジロ見すぎ!」


「私の大切なセラちゃんを欲望の眼差しで見ないでくださいっ」


「いや俺死体に欲情する特殊性癖とか持ってないからな!?」


 死体を視姦する趣味も屍姦する趣味も持ち合わせてないからなっ!


 いくら生きてるように動いてても、リエンの動かしてる死体には変わりない。それに欲情するとか、人間終わってるにも程があるだろっ。


「俺の事より、レアナは分かったことないか? ちょっとの事でもいい」


「……そうね……」


 レアナの眼が妖しく光る。多分、《鑑定眼》を使ってるんだろう。それがセラの情報を読み取っていく。


 レアナの鑑定が終わるまで、すこしの時間を置いた。


 だが……。


「……ダメね。死体なら死んだ時の状況や情報を読み取れるはずなんだけど……」


「読み取れない、と?」


「ええ。恐らく死んだのが相当昔で、私の目の力の範囲を超えてるからだと思う」


 ……レアナの眼でも読み取れないとなると、いよいよローラー作戦しかないな。


「レアナ。すまないが、冒険者ギルドと貴族、ミヤビ大商会の依頼を受けながら、エルフについての情報を集めてくれ。護衛はいつも通り、エタを付けろよ」


「分かったわ」


「リエンは、この一週間で集めてきた資料の洗い出しだ。もしかしたら、エルフについての情報があるかもしれない」


「承知しました」


 レアナとリエンが執務室を後にするのを見送り、俺はこの後どうするかを考えた。


 ぶっちゃけ策無し。無しよりの無し。


 レアナほどの人脈もなければ、リエンのような人海戦術も使えない。


 でも、ここで待ち続けるのも性にあわない。


 ……思えば、【白虎】を抜けてからの俺って、一人で何かをしたことって無かったな……直ぐにレアナと出会ったし、リエンも仲間に出来た。……運が良かっただけなのかもなぁ……


 ……よし、ここで俺も何か行動してみよう。善は急げ!


 そうだな……とりあえず闇事情に詳しい情報屋・・・の所に行ってみるか。


 ──────────


「つーわけで、さっさとエルフについて知ってること洗いざらい吐け」


「久々にいきなり来てなんだいそれ?」


 レーゼン王国裏路地。そこを曲がりくねった先にいる、闇の情報屋シュラーケン。こいつと俺は、もう四年の付き合いになる。


 四年前に闇ギルドを潰す時、闇ギルドの場所や人数を全て教えてくれたのがこいつだ。


 それから、たまに闇系の仕事を受ける時は頼りにしている。


「エルフに用がある」


「相変わらず藪からスティックな旦那だ。少しはゆっくりして行きな」


 シュラーケンは禿げ上がった頭をタオルで拭く。


 薄暗い店の中、きらりと光る見事な禿げ頭。日頃の手入れの賜物なのかもな。


「エルフか……オイラもこの道五〇年だが、生きたエルフは見たことねぇ」


「情報は無いのか?」


 聞くと、右手を出してきた。


「ほぅ、生命線が長いな。まだくたばりそうになくて安心した」


「ちげーよ。チップ出せチップ。オイラは情報屋。質問するからには金を払え」


 チッ、相変わらずのジジイだ。


 チップに金貨一枚を出すと、にやぁっと口を歪めた。いや気持ち悪っ。


「エルフの情報だったな。あるにはあるが、文献も古いし正規のものじゃない」


 キセルを吹かし、猛禽類のような目でギロリと睨む。


「理由は聞かん。だがエルフを追うのは止めておけ」


「何でだ?」


「んっ」


 またか……。


 金貨を二枚渡す。


「エルフを追った奴らは、今まで何百、何千と見てきた。だが、探してから一ヶ月も経たず、全員が死んだ。一人も生存者はいない。闇の世界じゃ、エルフはもはや禁忌とさえ言われている」


「……数年前、エルフの死体を売ってた商人がいた。そいつは今どうなってる?」


 金貨を渡しながら聞くと、腕を組んで深く頷いた。


「知っている。商人のラゼルは死体を専門に取り扱っていて、ネクロマンサーに高く売り付けていた。最後に会った時、ネクロマンサーの姉ちゃんに売ってやったと自慢していたぞ。結果、三日と経たず森の中で襲われて死亡した」


 ……そのネクロマンサー、十中八九リエンのことだな。商人のラゼルか……そっち方面でも、探してみよう。


「……さっき言ってた文献、売ってくれないか?」


「たけーぞ」


「金は払う」


 こういう情報屋では金が全てだ。シュラーケンは超一流の情報屋だが、払える金がないと取り合ってくれない。だからって力でどうかしようというものなら、闇の組織に末代まで命を狙われる。


 こいつの情報は信用できる。闇の組織にとって、情報は有益だ。だからシュラーケンは信用でき、家族のような存在として扱われている。


「ふぅ……待ってな」


 シュラーケンは指をクイッと動かすと、背後にあった本棚の中から一冊の本が飛んできた。


「エルフの事はオイラにも分からねぇ。だが、大昔に闇オークションでエルフが売られたことがある。こいつはその時のカタログ。持ってけ」


「……随分古いな。何年前だ?」


「三〇〇年前らしい」


「いや古過ぎだろ!?」


 三〇〇年前の情報なんて要らなすぎる!


「はぁ……まあ、情報があるだけましか……貰ってく。邪魔したな」


「おい」


「あ?」


「金貨二〇〇枚」


「高すぎ!? 一〇〇!」


「二〇〇。嫌なら返せ」


 こい、つ……! びた一文下げないつもりだな……!?


「……はぁ……ほらよ」


「ひひひっ、毎度」


 ったく、金の亡者かこいつは。


「ああそうだ。旦那にいい事教えてやるよ」


 シュラーケンは金貨を一枚一枚、テーブルの上に積み重ねながら、俺に流し目を送る。


「人は裏切る。権力は人を変える。だが、金だけは信じられる。覚えておきな」


「……肝に銘じておく」


「旦那には金づるとして生きていてくれなきゃならねぇ。精々用心するんだな」


 シュラーケンの言葉を頭の片隅におき、俺は裏路地を後にした。

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