パーティーを追放された俺は、隠しスキル《縁下》で世界最強のギルドを作る
第25話 斬首
『旦那様ぁ……旦那、様から頂いたのぉ……返してよぉ……返してよおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!』
「うっ!?」
「キャッ!?」
さ、さっきより速いぞ……!? あの鞭のような動きっ、どうにかしないと……!
「このっ、止まれ! 《絶氷の牢獄》!」
炎竜のブレスでも溶けない(とされている)氷属性最強の捕縛魔法だ! この中なら暴れられないだろ!
『邪魔あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!』
咆哮。
たったそれだけで最強の捕縛魔法にヒビが入った。
「うっそだろ……!?」
物理でも魔法でもなく、咆哮でヒビを入れるのか……!?
人面百足はその隙を逃さず限界までとぐろを巻き、まるで打ち出すように円形状に胴体を振るったことで、《絶氷の牢獄》が粉々に砕かれた。
半狂乱状態の人面百足は、まるで駄々をこねる子供のように暴れ回る。
これじゃあ、コアを壊そうにも狙いが定まらない……!
「ジオウ、どうする!?」
「どうするもこうするも、どうにかして押さえ付けるしかない!」
それにこんな無造作に暴れられたら、リエンのアンデッド軍も直ぐに消えちまう……!
「ぐっ……! お、お二人共! 私の部下が五〇体を切りました!」
「何!?」
さっきまで、まだ一〇〇体以上いたはずだろ!? まさか、さっきの暴走で半分以上削られたのか!?
「うかうかしてられない! レアナ、お前のパワーであいつを一瞬でも止めてくれ!」
「やっぱあんた、私のことゴリラだって揶揄してるでしょ!? あーもー了解よ!」
レアナは全身に炎を纏わせ、更にパワーを強化した。
俺も、風魔法を体に纏ってスピードを強化する。
『そこかぁ!? 私の仮面を奪った盗っ人おおおおおおおおおおおお!!! シねぇ! 死んで償えあああああ!!!』
降ってくるのは拳と胴体の雨。だが、それをレアナとアンデッド軍の攻撃が弾き返す。
「うちのボスを簡単にやれると思わないでよ!」
「数が減った分操作も精密です! 護り抜きます!」
お前ら……。
……女が覚悟決めて気張ってんのに、男の俺が頑張らない訳にはいかない、か。
「すーーーー……はぁーーーー……すーーーー……んっ」
息を止め、心音を小さくし、標的に向かって全神経を集中する。
俺に向かってくる攻撃は、躱さず、防御しない。皆が弾いてくれると知ってるから。
だから俺は、ありったけを……!
さっき編み出した風魔法、《空中歩法》を使い、空気のクッションを幾つも作って跳び上がる。
真っ直ぐ、ただ真っ直ぐ、真上に。
その意図を理解したのか、レアナとリエンが動く。
「《炎釘》!」
さっき突き刺したままの剣。そこに、渾身の蹴りを叩き込むと、剣が根元まで突き刺さる。
「どおおおおおりゃあああああああ!!!」
そのままの勢いで壁に叩きつけ、自分が展開している重力魔法で更に押し潰される。
『いづあああああああああ!? あづいいだいアヅイイダイあああああああああああああああああああああああ!?』
ビクビクと痙攣させながらのたうち回る人面百足。
その真下に、見たことがある魔法陣が展開され、巨大な黒い手が召喚された。
「ギガントデーモン、捕まえなさい!」
人面百足をすっぽりと覆うギガントデーモンの手。それが重力魔法をものともせず、人面百足を握り締める。
『いぎいいいいいいぃ!? やだぁ! ごめんなさい旦那様! ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい! 狭いよ痛いよやだよおおおおおおお!!!』
暴れ、這い出ようとしてもギガントデーモンの手からは逃れられない。
俺は《空中歩法》で加速を重ね、天井近くまで跳ね上がっていた。
真下に見える、泣き叫ぶ女の顔。
俺は最後の加速を重ね、真下に跳躍。
「《瞬剣・暴嵐》!」
刹那──首を切り裂く感覚と共に、目の前に女性の首が舞った。
その顔は、憤怒に塗れた表情ではなく……悲しい、笑顔だった。
『……ぁぁ……ありがとう……』
その瞬間、頭の中に大量の映像が流れ込んできた。
『旦那様、お食事の時間です』
『旦那様、もっと当主様としての自覚を持ってください』
『全くもう、旦那様ったら……』
『旦那様。……いえ、呼んでみただけです。ふふっ』
『仮面? これを私に? ……センス皆無ですね。え? 嫌です、これは私が頂いたのですから、返しませんっ』
『旦那様……私なんかで良いんですか……? ……嬉しい……ありがとう、ございます……!』
『旦那様。サシャは旦那様を、愛しています』
これは……この人の、記憶……?
幸せそうな記憶だ……。
だけど……。
『旦那様? このお部屋は何ですか……?』
『旦那様っ、どうしてサシャを置いていくのですか!?』
『旦那様! 旦那様っ! 助けて下さい、旦那様ぁ!』
『痛い! 旦那様止めて下さい! この管を抜いてくださ……ああああああああああああああああああああああああ!? 痛い痛い痛い痛い痛い!? だんなっ、ざまああああああああ!?』
『だず、げ、で……だ、んなざ、ま……』
……酷い。酷すぎる……。
この人……サシャさんは、愛するグレゴリオ・アルケミストに無理矢理この姿にさせられたんだ……。
目を背けようにも流れてくる映像には逆らえない。
サシャさんを人面百足に変えたグレゴリオは、恍惚とした顔でサシャさんを見上げ……自分の身を、サシャさんに食わせた。
『だんなざま……だんな様……旦那、さ、ま……』
ここで映像が消え、俺の意識は途切れた。
「うっ!?」
「キャッ!?」
さ、さっきより速いぞ……!? あの鞭のような動きっ、どうにかしないと……!
「このっ、止まれ! 《絶氷の牢獄》!」
炎竜のブレスでも溶けない(とされている)氷属性最強の捕縛魔法だ! この中なら暴れられないだろ!
『邪魔あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!』
咆哮。
たったそれだけで最強の捕縛魔法にヒビが入った。
「うっそだろ……!?」
物理でも魔法でもなく、咆哮でヒビを入れるのか……!?
人面百足はその隙を逃さず限界までとぐろを巻き、まるで打ち出すように円形状に胴体を振るったことで、《絶氷の牢獄》が粉々に砕かれた。
半狂乱状態の人面百足は、まるで駄々をこねる子供のように暴れ回る。
これじゃあ、コアを壊そうにも狙いが定まらない……!
「ジオウ、どうする!?」
「どうするもこうするも、どうにかして押さえ付けるしかない!」
それにこんな無造作に暴れられたら、リエンのアンデッド軍も直ぐに消えちまう……!
「ぐっ……! お、お二人共! 私の部下が五〇体を切りました!」
「何!?」
さっきまで、まだ一〇〇体以上いたはずだろ!? まさか、さっきの暴走で半分以上削られたのか!?
「うかうかしてられない! レアナ、お前のパワーであいつを一瞬でも止めてくれ!」
「やっぱあんた、私のことゴリラだって揶揄してるでしょ!? あーもー了解よ!」
レアナは全身に炎を纏わせ、更にパワーを強化した。
俺も、風魔法を体に纏ってスピードを強化する。
『そこかぁ!? 私の仮面を奪った盗っ人おおおおおおおおおおおお!!! シねぇ! 死んで償えあああああ!!!』
降ってくるのは拳と胴体の雨。だが、それをレアナとアンデッド軍の攻撃が弾き返す。
「うちのボスを簡単にやれると思わないでよ!」
「数が減った分操作も精密です! 護り抜きます!」
お前ら……。
……女が覚悟決めて気張ってんのに、男の俺が頑張らない訳にはいかない、か。
「すーーーー……はぁーーーー……すーーーー……んっ」
息を止め、心音を小さくし、標的に向かって全神経を集中する。
俺に向かってくる攻撃は、躱さず、防御しない。皆が弾いてくれると知ってるから。
だから俺は、ありったけを……!
さっき編み出した風魔法、《空中歩法》を使い、空気のクッションを幾つも作って跳び上がる。
真っ直ぐ、ただ真っ直ぐ、真上に。
その意図を理解したのか、レアナとリエンが動く。
「《炎釘》!」
さっき突き刺したままの剣。そこに、渾身の蹴りを叩き込むと、剣が根元まで突き刺さる。
「どおおおおおりゃあああああああ!!!」
そのままの勢いで壁に叩きつけ、自分が展開している重力魔法で更に押し潰される。
『いづあああああああああ!? あづいいだいアヅイイダイあああああああああああああああああああああああ!?』
ビクビクと痙攣させながらのたうち回る人面百足。
その真下に、見たことがある魔法陣が展開され、巨大な黒い手が召喚された。
「ギガントデーモン、捕まえなさい!」
人面百足をすっぽりと覆うギガントデーモンの手。それが重力魔法をものともせず、人面百足を握り締める。
『いぎいいいいいいぃ!? やだぁ! ごめんなさい旦那様! ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい! 狭いよ痛いよやだよおおおおおおお!!!』
暴れ、這い出ようとしてもギガントデーモンの手からは逃れられない。
俺は《空中歩法》で加速を重ね、天井近くまで跳ね上がっていた。
真下に見える、泣き叫ぶ女の顔。
俺は最後の加速を重ね、真下に跳躍。
「《瞬剣・暴嵐》!」
刹那──首を切り裂く感覚と共に、目の前に女性の首が舞った。
その顔は、憤怒に塗れた表情ではなく……悲しい、笑顔だった。
『……ぁぁ……ありがとう……』
その瞬間、頭の中に大量の映像が流れ込んできた。
『旦那様、お食事の時間です』
『旦那様、もっと当主様としての自覚を持ってください』
『全くもう、旦那様ったら……』
『旦那様。……いえ、呼んでみただけです。ふふっ』
『仮面? これを私に? ……センス皆無ですね。え? 嫌です、これは私が頂いたのですから、返しませんっ』
『旦那様……私なんかで良いんですか……? ……嬉しい……ありがとう、ございます……!』
『旦那様。サシャは旦那様を、愛しています』
これは……この人の、記憶……?
幸せそうな記憶だ……。
だけど……。
『旦那様? このお部屋は何ですか……?』
『旦那様っ、どうしてサシャを置いていくのですか!?』
『旦那様! 旦那様っ! 助けて下さい、旦那様ぁ!』
『痛い! 旦那様止めて下さい! この管を抜いてくださ……ああああああああああああああああああああああああ!? 痛い痛い痛い痛い痛い!? だんなっ、ざまああああああああ!?』
『だず、げ、で……だ、んなざ、ま……』
……酷い。酷すぎる……。
この人……サシャさんは、愛するグレゴリオ・アルケミストに無理矢理この姿にさせられたんだ……。
目を背けようにも流れてくる映像には逆らえない。
サシャさんを人面百足に変えたグレゴリオは、恍惚とした顔でサシャさんを見上げ……自分の身を、サシャさんに食わせた。
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