パーティーを追放された俺は、隠しスキル《縁下》で世界最強のギルドを作る

赤金武蔵

第16話 突入前の作戦会議

 あれから、周囲を最大限に警戒して進むこと二週間。結局エンパイオやクロは現れず、俺達はグレゴリオ市へやって来た。


 レアナが市長に面会している間、俺とリエンは小高い丘の上に登り、アルケミストの大洋館がある森を眺めていた。


 正確には、俺が森全体を眺め、リエンはエタを操って森の中を先行させている。死体との視界を共有出来る、ネクロマンサーならではの索敵方法だ。


「こっから歩いて二日で、アルケミストの守護森林。その先にあるのがアルケミストの大洋館か……どうだリエン、見えるか?」


「うーん……エタちゃんの速さで既に守護森林まで来たんですが、Aランク級の魔物が休みなく襲ってくるので、中々進めないですね……」


 流石Sランクダンジョン。辿り着くまでが遠すぎるな……。


「分かった。まずはエタを戻してくれ」


「はい」


 リエンが指を操ると、俺の隣にエタが現れた。服は返り血で汚れ、怪我をしているのか右頬がぱっくりと割れている。


「お疲れ様、エタ」


 死んでいるから感情も、思考も無いと分かってながらも、エタの頭を撫でて労う。


 エタの時空間魔法には、一度行った場所へ瞬間移動出来るものもある。エタが先行してくれたおかげで、守護森林までは楽に行けるようになった。


「ジオウさん、私は? 私は?」


「ああ。リエンもサンキューな。欲を言えば、大洋館まで行けたら良かったんだが……」


「それは仕方ないですよ。私は視界を共有していましたが、あの数の魔物は異常です。大洋館までの距離も分かりませんし、下手をすると三日三晩休みなく戦いながら進むことになります」


 噂には聞いていたが、やっぱり守護森林の守りの硬さはえげつないな……。


 上空も、飛龍やサラマンダーが占拠していて、むしろ地上より危険な場所だ。飛んでいくのも無謀だな。


「ジオウさん。私の部下を囮にすれば、なんとか進めると思いますが、どうです?」


「いや、それはダメだ。あいつらは大洋館攻略に必要不可欠だからな」


 アルケミストの大洋館がSランクダンジョンとされてるのは、大洋館の中だけだ。アルケミストの守護森林はダンジョンではなく、ダンジョンへ向かう道中・・扱いにされている。


 その道中で主力を使い潰すのは得策ではない。


 だから別の方法を探さなきゃな……。


「リエン、魔物の強さは、俺と比べてどうだ?」


「一体一体なら問題なく倒せます。ただ、数の暴力で押し返されてしまうかと」


 なるほどな……討伐ランクAの魔物でも、俺が倒せるレベルの奴らか。


 一度、自分達の戦力を確認する。


 俺はコンバットナイフを主要武器に、スピードと魔法で翻弄して戦うタイプ。

 レアナは両刃剣を主要武器に、パワーで押せ押せのタイプ。


 リエンはネクロマンサーで、死体のタイプによってはスピード、パワー、盾役タンク回復役ヒーラー、魔術師など、全体を補える万能タイプ。ただ、本人は殆ど攻撃手段がない。


 だけど今回は余りリエンを疲れさせたくない。理由は先に言った通りだ。


 だから今回の主力は俺とレアナ。それと少しの死体。


 これだけでアルケミストの守護森林を抜ける方法を考えないと……。


 森の先を見つめ、作戦を練ってはボツにし、練ってはボツにしていくと、丘の下からレアナが登ってくるのが見えた。


「あ、いたいた。ここにいたのね」


「ああ。市長と話は終わったのか?」


「ええ。でも面倒臭いことになりそうよ」


 レアナが苦虫を噛み潰したような顔をする。


「面倒臭いって、守護森林のことか? 安心しろ、今まさに作戦を練ってる所だ」


 全くめどは立たないけど。


「それもそうだけど、また別のベクトルの面倒事よ」


「……それ俺達に関係ある?」


「私達というより、どちらかと言うとジオウの方ね」


 俺の?


 何を言うのかと待っていると、神妙な顔で爆弾を落とした。










「【白虎】が来てるわ」


 …………。


 あ、作戦、思い付いた。

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