パーティーを追放された俺は、隠しスキル《縁下》で世界最強のギルドを作る
第14話 巨悪の存在
背中を嫌な汗が伝うのが分かる。
今までかなり動き回っていた。心拍数も上がってる。
それなのに、体は冷水を浴びたように冷たく冷え切っている。
体が震え上がるのを必死で押さえ付け、ナイフを構え直す。
そうしてる間も、エンパイオは隙一つ見せなかった。
ははっ、笑えないなこりゃ。
「ふむ……見た目は取り繕っても、気配や目の奥の恐怖は拭えない。だがそれは仕方のないことだ」
「っ……バレバレって訳ね」
「然り。我と剣を交えた強者は、圧倒的な力の差に打ちひしがれる。今までの強者と同じだ」
ああ、その気持ち痛いほど分かる。
絶対的な強者を目の前にし、足がすくみ、闘志が折られるあの嫌な感覚。
でも、それだけだ。
心を静かに……荒立たせず……凪のように……。
「──む?」
…………よし。戻った。
「ほう! ジオウとやら、精神コントロールが図抜けているな! その歳でそこまでの境地に至るとは、面白いぞ!」
「それはどうも。これでも死線をくぐり抜けてきた数は、誰にも負けてないんでね」
  【白虎】時代は、Sランク依頼に何度も行き、何度も死にかけ、何度も踏み越えてきた。
そう易々と俺の心は折れねーよ……!
「はっはっは! 面白いなぁ、本当に面白い! 長生きして良かった! 貴様のような若者に出会えるとは、我の人生も捨てたもんじゃないな!」
エンパイオはツボに嵌ったのか、ずっと笑っている。
それなのに俺が踏み込めないのは、こんな状況でも全く隙がないからだ。ここまで隙がないと、戦う手段が限られてくるぞ。
「貴様は面白い。このまま修行を積めば、いずれは我のいる場所まで来れるだろう」
「じゃあ俺を生きて帰して、レアナのことも諦めてくれないか?」
「それは聞けん相談だ。あの小娘の眼は、依頼主の……いや、我ら全ての希望なのだ」
……レアナの《鑑定眼》に、そこまで執着するなんて……一体何が目的なんだ……?
「……聞いていいか? 何でレアナの眼が必要なんだ?」
「先にも言ったが、力ずくで聞き出してみよ。……お喋りはここまでだ」
くそ、まだ体力がしっかりと回復してないんだが……やるしかないか!
エンパイオは剣を構え、こちらを見据える。
殺気が肌を突き刺すようだ……!
「いざ……ん?」
……何だ? いきなり避けて……。
エンパイオがさっきいた場所に目を凝らすと……あれは、シノビの使うクナイ、か? てことは……。
次の瞬間、俺とエンパイオの間に、黒ずくめのシノビが十二人現れた。どうやら、リエンが気を利かせてこっちに寄越してくれたみたいだ。
シノビが一斉にエンパイオに襲い掛かる。
「……はぁ……笑止」
っ! 一瞬で全員やられたんだけど!?
「この様な有象無象を寄越すとは、貴様の仲間は間抜けか? この程度で我を止められると思うたか」
いや思いません。正直、このシノビなら俺一人でも一瞬で終わらせられる。
リエン、応援は助かるが、流石に足止めにもならない──。
「あら。間抜けとは、私の事でしょうか?」
「っ!?」
……なん、だ? 何が起きた?
本当に一瞬の出来事でよく分からなかったが……エンパイオの頬に、傷を付けた……?
さっきまで余裕の表情を見せていたエンパイオが、頬から血と冷や汗を垂らす。
地面に跪いている影が、まるで陽炎のように立ち上がる。
「……貴様か。このシノビを操っているのは」
エンパイオの言葉に、影はゆっくりと頷いた。
しかしそこにいたのはリエンではなく……。
「ええ。ですが正確には、この体を通した先にいる操作者、ですけどね」
森の中では余りに場違いな、メイド服と身の丈以上の巨剣を振り回す、例の元Sランク冒険者だった。
「お前……リエン、だよな?」
「はい、ジオウさん。今は彼女……エタちゃんの体を通じ、会話をしています」
そうか……こいつは心強い応援だ。
「……先程のシノビとは、全てが違うな。なるほど、そ奴が本命の応援か」
「はい。ですが、この子が来た時点で、いえ、頬に傷を付けた時点で、勝敗は決まっています」
「……ふふふふ……ふはははははは! ジオウ、貴様の仲間も面白いな! 気に入ったぞ!」
おっさんに気に入られても嬉しかねーが……リエンの言っているのは、どういう事だ?
「見たところそっちの侍女の体は、相当力を秘めているな。ならば、我も本気を──ごぽっ」
……え、吐血……?
エンパイオが、大量の血を吐き出して膝をつく。
これ、もしかして……。
「リエン。もしかして毒か……?」
「その通りです。この子の持っている巨剣は、猛毒竜ヒドラの牙から作られたものです。本来ならかすり傷一つで死に至らしめるものですが……何ですかこの人、死んでないんですが」
猛毒竜ヒドラと言えば、二〇〇年前にこの大陸、タルナード大陸を毒の海に沈めようとした、超危険生物……だよな?
そんな竜の剣……毒の量も、即効性も半端じゃないんだろうが……。
「……奴は、地帝のエンパイオだ。恐らくこの程度の攻撃では、まだ倒れないぞ」
「……本物ですか?」
「恐らく」
現に、今こうして苦しそうに血を吐いていても、隙が見つからない。なんておっさんだ……。
「ふ、ふふふふ……毒で我が死ぬものか……だが手足が痺れ、まともに動けん……ならば、我が地帝の力を見せてやろうぞ!」
ゴォッ──!
体から噴き出す魔力の激流……! 一人の人間なのに、まるで溶鉱炉のようなエネルギーを秘めてやがる……!
これは……死──
「はいはイ。ストップですヨ、エンパイオさん」
……誰だ……?
魔力の激流の中、エンパイオの隣に貼り付けたような笑みで立っている男がいた。
燕尾服を身につけ、まるで執事のような見た目だが……声を聞くまで、全く気付けなかった。隣にいるリエンからも、驚いている気配が伝わってくる。
「……クロ殿か。暫し待たれよ。あの者達を消し、直ぐにでもレアナ・ラーテンの首を……」
「それはちょっと厳しいかもですネ。今エンパイオさんの体に流れている毒、直ぐに解毒しないと死んじゃいますヨ?」
「む、ぬ……」
「だから今は一旦引きましょウ。レアナ嬢の首など、何時でも良いのですかラ」
クロと呼ばれた男が、エンパイオの肩に手を置く。
「それではお二人共、また近いうちに会いましょウ」
「……命拾いしたな」
そう言うと、次の瞬間には二人揃って、影も形も消えていった。
……まさか、時空間魔法……あのクロって男、何者なんだ……?
何にせよ……撃退成功、か?
「ジオウさん。私達も行きましょう」
「ああ、そうだな……」
俺の方は傷はないとは言え、体力的には既に限界だ。
リエンの操るメイド、エタの時空間魔法により、俺とエタは、リエンとレアナが待つ馬車へと帰還した。
今までかなり動き回っていた。心拍数も上がってる。
それなのに、体は冷水を浴びたように冷たく冷え切っている。
体が震え上がるのを必死で押さえ付け、ナイフを構え直す。
そうしてる間も、エンパイオは隙一つ見せなかった。
ははっ、笑えないなこりゃ。
「ふむ……見た目は取り繕っても、気配や目の奥の恐怖は拭えない。だがそれは仕方のないことだ」
「っ……バレバレって訳ね」
「然り。我と剣を交えた強者は、圧倒的な力の差に打ちひしがれる。今までの強者と同じだ」
ああ、その気持ち痛いほど分かる。
絶対的な強者を目の前にし、足がすくみ、闘志が折られるあの嫌な感覚。
でも、それだけだ。
心を静かに……荒立たせず……凪のように……。
「──む?」
…………よし。戻った。
「ほう! ジオウとやら、精神コントロールが図抜けているな! その歳でそこまでの境地に至るとは、面白いぞ!」
「それはどうも。これでも死線をくぐり抜けてきた数は、誰にも負けてないんでね」
  【白虎】時代は、Sランク依頼に何度も行き、何度も死にかけ、何度も踏み越えてきた。
そう易々と俺の心は折れねーよ……!
「はっはっは! 面白いなぁ、本当に面白い! 長生きして良かった! 貴様のような若者に出会えるとは、我の人生も捨てたもんじゃないな!」
エンパイオはツボに嵌ったのか、ずっと笑っている。
それなのに俺が踏み込めないのは、こんな状況でも全く隙がないからだ。ここまで隙がないと、戦う手段が限られてくるぞ。
「貴様は面白い。このまま修行を積めば、いずれは我のいる場所まで来れるだろう」
「じゃあ俺を生きて帰して、レアナのことも諦めてくれないか?」
「それは聞けん相談だ。あの小娘の眼は、依頼主の……いや、我ら全ての希望なのだ」
……レアナの《鑑定眼》に、そこまで執着するなんて……一体何が目的なんだ……?
「……聞いていいか? 何でレアナの眼が必要なんだ?」
「先にも言ったが、力ずくで聞き出してみよ。……お喋りはここまでだ」
くそ、まだ体力がしっかりと回復してないんだが……やるしかないか!
エンパイオは剣を構え、こちらを見据える。
殺気が肌を突き刺すようだ……!
「いざ……ん?」
……何だ? いきなり避けて……。
エンパイオがさっきいた場所に目を凝らすと……あれは、シノビの使うクナイ、か? てことは……。
次の瞬間、俺とエンパイオの間に、黒ずくめのシノビが十二人現れた。どうやら、リエンが気を利かせてこっちに寄越してくれたみたいだ。
シノビが一斉にエンパイオに襲い掛かる。
「……はぁ……笑止」
っ! 一瞬で全員やられたんだけど!?
「この様な有象無象を寄越すとは、貴様の仲間は間抜けか? この程度で我を止められると思うたか」
いや思いません。正直、このシノビなら俺一人でも一瞬で終わらせられる。
リエン、応援は助かるが、流石に足止めにもならない──。
「あら。間抜けとは、私の事でしょうか?」
「っ!?」
……なん、だ? 何が起きた?
本当に一瞬の出来事でよく分からなかったが……エンパイオの頬に、傷を付けた……?
さっきまで余裕の表情を見せていたエンパイオが、頬から血と冷や汗を垂らす。
地面に跪いている影が、まるで陽炎のように立ち上がる。
「……貴様か。このシノビを操っているのは」
エンパイオの言葉に、影はゆっくりと頷いた。
しかしそこにいたのはリエンではなく……。
「ええ。ですが正確には、この体を通した先にいる操作者、ですけどね」
森の中では余りに場違いな、メイド服と身の丈以上の巨剣を振り回す、例の元Sランク冒険者だった。
「お前……リエン、だよな?」
「はい、ジオウさん。今は彼女……エタちゃんの体を通じ、会話をしています」
そうか……こいつは心強い応援だ。
「……先程のシノビとは、全てが違うな。なるほど、そ奴が本命の応援か」
「はい。ですが、この子が来た時点で、いえ、頬に傷を付けた時点で、勝敗は決まっています」
「……ふふふふ……ふはははははは! ジオウ、貴様の仲間も面白いな! 気に入ったぞ!」
おっさんに気に入られても嬉しかねーが……リエンの言っているのは、どういう事だ?
「見たところそっちの侍女の体は、相当力を秘めているな。ならば、我も本気を──ごぽっ」
……え、吐血……?
エンパイオが、大量の血を吐き出して膝をつく。
これ、もしかして……。
「リエン。もしかして毒か……?」
「その通りです。この子の持っている巨剣は、猛毒竜ヒドラの牙から作られたものです。本来ならかすり傷一つで死に至らしめるものですが……何ですかこの人、死んでないんですが」
猛毒竜ヒドラと言えば、二〇〇年前にこの大陸、タルナード大陸を毒の海に沈めようとした、超危険生物……だよな?
そんな竜の剣……毒の量も、即効性も半端じゃないんだろうが……。
「……奴は、地帝のエンパイオだ。恐らくこの程度の攻撃では、まだ倒れないぞ」
「……本物ですか?」
「恐らく」
現に、今こうして苦しそうに血を吐いていても、隙が見つからない。なんておっさんだ……。
「ふ、ふふふふ……毒で我が死ぬものか……だが手足が痺れ、まともに動けん……ならば、我が地帝の力を見せてやろうぞ!」
ゴォッ──!
体から噴き出す魔力の激流……! 一人の人間なのに、まるで溶鉱炉のようなエネルギーを秘めてやがる……!
これは……死──
「はいはイ。ストップですヨ、エンパイオさん」
……誰だ……?
魔力の激流の中、エンパイオの隣に貼り付けたような笑みで立っている男がいた。
燕尾服を身につけ、まるで執事のような見た目だが……声を聞くまで、全く気付けなかった。隣にいるリエンからも、驚いている気配が伝わってくる。
「……クロ殿か。暫し待たれよ。あの者達を消し、直ぐにでもレアナ・ラーテンの首を……」
「それはちょっと厳しいかもですネ。今エンパイオさんの体に流れている毒、直ぐに解毒しないと死んじゃいますヨ?」
「む、ぬ……」
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クロと呼ばれた男が、エンパイオの肩に手を置く。
「それではお二人共、また近いうちに会いましょウ」
「……命拾いしたな」
そう言うと、次の瞬間には二人揃って、影も形も消えていった。
……まさか、時空間魔法……あのクロって男、何者なんだ……?
何にせよ……撃退成功、か?
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