パーティーを追放された俺は、隠しスキル《縁下》で世界最強のギルドを作る
第12話 命を狙う白薔薇
三日後。十分な休養を取った俺達は、馬車に揺られてグレゴリオ市へと向かっていた。
昔は別の名前だったんだが、グレゴリオ・アルケミストが生まれ、後世に多大な影響を与えたとして、グレゴリオ市に名前を変えたんだそうだ。
そんな市の名産は、やっぱり錬金術らしい。グレゴリオが残した錬金術は、世界中の高名な錬金術師が学びに来るほどなのだとか。
噂によれば、そんなグレゴリオ市の錬金術の知識の数十倍から数百倍の知識が、アルケミストの大洋館にはあるらしい。俺達には必要ないものだし、攻略したらグレゴリオ市に高値で売りつけるか。
「あーあ、二週間も馬車生活かー。走れば二日もあれば着くのに」
レアナがつまらなそうに馬車の外に上半身を出し、ブツブツと文句を言う。
「お前の体力と俺らの体力を考えろ。俺らの方が確実にばてる」
「あ、私はした……部下に運ばせれば何も問題ないですよ」
「……あ、そうっすか」
御者が聞いてるかもしれないから死体って言葉を使わなかったけど、そういやこいつ、元Sランクの冒険者を使役してるんだっけ。死体とは言え、身体能力はレアナと同じかそれ以上なんだよな。
それを考えると、元Aランク冒険者の俺ってマジで一般ピーポーなんだな……まあ、二人がこうしていられるのも、俺のおかげと言ったら俺のおかげなんだけど。
「ぶー……どこかに騎士崩れはいないかしらねぇ。今の私ならちょちょいってやっちゃうのに」
「レアナなら大丈夫だとは思うが、油断するなよ。あの時は三人だったけど、今度は増える可能性がある」
「あーい」
本当に分かってるんだろうか……。
レアナを白い目で見てると、リエンが俺の裾をちょいちょいと引っ張ってきた。
「ジオウさん。騎士崩れの人が、どうかしたんですか?」
「ん? ああ。前にあいつ、騎士崩れに襲われたんだよ。その時は俺が助けたが、今度は数の暴力で襲ってくるかもしれないからな」
「……どうして襲って来たんでしょう……?」
「さあな。ま、十中八九……」
俺が自分の目を指差すと、リエンは納得した顔をした。
レアナの魔眼──《鑑定眼》については、既にリエンにも説明している。隠しスキルすら鑑定する強力な眼だ。どこかの組織が欲しがるのも頷ける。
「リエンも、周囲には注意してくれ」
「安心してください。念の為に、二〇体のシノビを周囲に潜ませています。一体一体はBランク程度ですが、隠密と暗殺にかけては群を抜いていますので」
シノビか。確か東方にいる、アサシンに似た奴らだったよな。そんなものまで使役してるとは、やるな。
それからは何事もなく走り続けていた。
が。
「っ。ジオウさん、シノビが複数の人間を感知しました。これは……山賊と思われます」
「山賊か……やれるか?」
「造作もありません」
リエンが人差し指をクイッと曲げると、指先から魔力の糸が可視化された。
「これで大丈夫でしょう」
「……操ってないように見えるが?」
「これは魔力で作られた思念糸と呼ばれるものです。私が思念で命令を出せば、それに反応して自動的に敵の殲滅を遂行してくれる、便利なものなんですよ」
へぇ……ネクロマンサーって、自分の手で操作すると思ってたんだが、違うんだな。
ネクロマンサーという職業の勘違いを頭の中で修正していると、レアナは外を眺めるのに飽きたのか荷車の中で寝転がった。
「ふわぁ〜。着いたら起こしてちょーだい……むにゃむにゃ」
こいつ、二週間寝るつもりか?
「あらあら、うふふ。可愛い寝顔ですね。そう思いませんか?」
「え? ああ、まあな」
「私に任せてくれれば、永遠にこの表情のままにしておけますが」
「お前絶対止めろよ。振りじゃないぞ。絶対、絶対だからな?」
最近大人しいから忘れてた。こいつ、自分の気に入った相手だったら、殺してコレクションに入れようとするサイコパスだったんだ。
……これは、外だけじゃなくてこいつ自身にも気を付けなきゃなぁ……面倒くせぇ……。
「やですね、冗談ですよ、ジョーダン。レアナちゃんはギルドの大切な仲間ですからね。そんな事しませんよ」
「お前、ギルドの仲間を襲って追放されたこと覚えてる?」
「あの時は若かったですね」
おい目を逸らすな真っ直ぐ俺の目を見やがれ。
「全く……お前は頼れる奴だが、俺が側にいてやらないとな……」
何しでかすか分からん。ちゃんとギルドとして落ち着いたら、俺の秘書にでもなってもらうか。
「ぇ……えと、ごめんなさい。私貴方の体にしか興味無いので、側にいるって言われても『え、何この人口説いてる?』程度にしか思えませんごめんなさい」
「口説いてねーし二回も謝るな。なんか傷つく」
告白してないのに振られた気分だ。
げんなりとした顔をすると、リエンは楽しそうにクスクスと笑った。こいつ、わざとか。
リエンは俺から離れ、収納鞄に入れていた毛布を取り出し、レアナに掛けてやった。
「馬車は意外と冷えますからね。風邪を引いてしまいます」
「……リエンって、意外と面倒見いいよな」
「意外って失礼ですね。これでも、冒険者仲間には聖母なんて呼ばれてたんですよ」
ど こ が ?
とは言わない。また面倒くさくなりそうだから。
少し寒そうにしていたレアナが、気持ち良さそうな顔で眠り続ける。リエンはその横に座り、頭を優しく撫でた。
……何だか、姉妹みたいだな。二人はベクトルの違う美人だが、こうして見るとちょっと似てる気がする。
そんな二人を眺めていると……リエンが何かに気付き、慌てたように人差し指の思念糸を見た。
「どうした?」
「……シノビの五人が、一瞬で消されました。っ、今も一人ずつやられていますっ……!」
「何だと?」
シノビはBランク相当だったはず。それを一瞬で……?
「これは……」
「敵を確認出来たか?」
「……この白薔薇の紋章に、鎧姿……間違いありません──騎士崩れです」
昔は別の名前だったんだが、グレゴリオ・アルケミストが生まれ、後世に多大な影響を与えたとして、グレゴリオ市に名前を変えたんだそうだ。
そんな市の名産は、やっぱり錬金術らしい。グレゴリオが残した錬金術は、世界中の高名な錬金術師が学びに来るほどなのだとか。
噂によれば、そんなグレゴリオ市の錬金術の知識の数十倍から数百倍の知識が、アルケミストの大洋館にはあるらしい。俺達には必要ないものだし、攻略したらグレゴリオ市に高値で売りつけるか。
「あーあ、二週間も馬車生活かー。走れば二日もあれば着くのに」
レアナがつまらなそうに馬車の外に上半身を出し、ブツブツと文句を言う。
「お前の体力と俺らの体力を考えろ。俺らの方が確実にばてる」
「あ、私はした……部下に運ばせれば何も問題ないですよ」
「……あ、そうっすか」
御者が聞いてるかもしれないから死体って言葉を使わなかったけど、そういやこいつ、元Sランクの冒険者を使役してるんだっけ。死体とは言え、身体能力はレアナと同じかそれ以上なんだよな。
それを考えると、元Aランク冒険者の俺ってマジで一般ピーポーなんだな……まあ、二人がこうしていられるのも、俺のおかげと言ったら俺のおかげなんだけど。
「ぶー……どこかに騎士崩れはいないかしらねぇ。今の私ならちょちょいってやっちゃうのに」
「レアナなら大丈夫だとは思うが、油断するなよ。あの時は三人だったけど、今度は増える可能性がある」
「あーい」
本当に分かってるんだろうか……。
レアナを白い目で見てると、リエンが俺の裾をちょいちょいと引っ張ってきた。
「ジオウさん。騎士崩れの人が、どうかしたんですか?」
「ん? ああ。前にあいつ、騎士崩れに襲われたんだよ。その時は俺が助けたが、今度は数の暴力で襲ってくるかもしれないからな」
「……どうして襲って来たんでしょう……?」
「さあな。ま、十中八九……」
俺が自分の目を指差すと、リエンは納得した顔をした。
レアナの魔眼──《鑑定眼》については、既にリエンにも説明している。隠しスキルすら鑑定する強力な眼だ。どこかの組織が欲しがるのも頷ける。
「リエンも、周囲には注意してくれ」
「安心してください。念の為に、二〇体のシノビを周囲に潜ませています。一体一体はBランク程度ですが、隠密と暗殺にかけては群を抜いていますので」
シノビか。確か東方にいる、アサシンに似た奴らだったよな。そんなものまで使役してるとは、やるな。
それからは何事もなく走り続けていた。
が。
「っ。ジオウさん、シノビが複数の人間を感知しました。これは……山賊と思われます」
「山賊か……やれるか?」
「造作もありません」
リエンが人差し指をクイッと曲げると、指先から魔力の糸が可視化された。
「これで大丈夫でしょう」
「……操ってないように見えるが?」
「これは魔力で作られた思念糸と呼ばれるものです。私が思念で命令を出せば、それに反応して自動的に敵の殲滅を遂行してくれる、便利なものなんですよ」
へぇ……ネクロマンサーって、自分の手で操作すると思ってたんだが、違うんだな。
ネクロマンサーという職業の勘違いを頭の中で修正していると、レアナは外を眺めるのに飽きたのか荷車の中で寝転がった。
「ふわぁ〜。着いたら起こしてちょーだい……むにゃむにゃ」
こいつ、二週間寝るつもりか?
「あらあら、うふふ。可愛い寝顔ですね。そう思いませんか?」
「え? ああ、まあな」
「私に任せてくれれば、永遠にこの表情のままにしておけますが」
「お前絶対止めろよ。振りじゃないぞ。絶対、絶対だからな?」
最近大人しいから忘れてた。こいつ、自分の気に入った相手だったら、殺してコレクションに入れようとするサイコパスだったんだ。
……これは、外だけじゃなくてこいつ自身にも気を付けなきゃなぁ……面倒くせぇ……。
「やですね、冗談ですよ、ジョーダン。レアナちゃんはギルドの大切な仲間ですからね。そんな事しませんよ」
「お前、ギルドの仲間を襲って追放されたこと覚えてる?」
「あの時は若かったですね」
おい目を逸らすな真っ直ぐ俺の目を見やがれ。
「全く……お前は頼れる奴だが、俺が側にいてやらないとな……」
何しでかすか分からん。ちゃんとギルドとして落ち着いたら、俺の秘書にでもなってもらうか。
「ぇ……えと、ごめんなさい。私貴方の体にしか興味無いので、側にいるって言われても『え、何この人口説いてる?』程度にしか思えませんごめんなさい」
「口説いてねーし二回も謝るな。なんか傷つく」
告白してないのに振られた気分だ。
げんなりとした顔をすると、リエンは楽しそうにクスクスと笑った。こいつ、わざとか。
リエンは俺から離れ、収納鞄に入れていた毛布を取り出し、レアナに掛けてやった。
「馬車は意外と冷えますからね。風邪を引いてしまいます」
「……リエンって、意外と面倒見いいよな」
「意外って失礼ですね。これでも、冒険者仲間には聖母なんて呼ばれてたんですよ」
ど こ が ?
とは言わない。また面倒くさくなりそうだから。
少し寒そうにしていたレアナが、気持ち良さそうな顔で眠り続ける。リエンはその横に座り、頭を優しく撫でた。
……何だか、姉妹みたいだな。二人はベクトルの違う美人だが、こうして見るとちょっと似てる気がする。
そんな二人を眺めていると……リエンが何かに気付き、慌てたように人差し指の思念糸を見た。
「どうした?」
「……シノビの五人が、一瞬で消されました。っ、今も一人ずつやられていますっ……!」
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