パーティーを追放された俺は、隠しスキル《縁下》で世界最強のギルドを作る

赤金武蔵

第11話 攻略前の休息と【白虎】の暗躍

「──なるほど。あいつら、雷竜の討伐に失敗したのか……」


 レアナが聞いてきた【白虎】の現状を聞くに、壊滅状態らしいな。


「七十七人が行って、帰ってきたのは十二人。残りの六十五人は行方不明。道中で死んだか、雷竜に殺られたかは分からないそうよ」


 そうか……。


 日数からして、俺が解雇されて直ぐに、雷竜討伐に向かったんだろうな。自分達の強さを信じきって。


 ……うん、古巣の壊滅を知ったのに、全く同情も悲しみも湧かないな。むしろちょっと気分が良いぞ。


「まあ気持ちは分かりますよ。ジオウさんと契約してるこの万能感を思えば、雷竜討伐も楽でしょうし」


「それでもざまーみろって感じよね。普通力が無くなったら、分かるもんだと思うけど」


 そんなに、前の自分と今の自分の違いがあるのか……良いなぁ、俺には作用しないからなぁ。


「じゃあ、【白虎】は解散したのか?」


「いえ、それがまだ解散してないのよ。何してるのか分からないけど、今まで威張り散らしてたのが嘘のように静かよ」


 十二人になっても解散しない、か……レイガの奴、また見栄と感情だけで動いてるな。前から思ってたが、愚かな奴だ。


 それに今回の件で、残りの十一人も【白虎】の元を離れるだろうな。レイガの事だ。雷竜討伐も、また無理に強行したに決まってる。


 俺は呆れを外に出すようにため息をつくと、思考を切り替えた。


「【白虎】は置いといて、俺達は俺達で動こう。アルケミストの大洋館攻略だ。どう作戦を立てる?」


「真っ直ぐ行ってぶった斬る」


「真っ直ぐ行ってぶっ殺します」


 おぅ……デンジャラス。


 だがまあ、二人の戦力を思えば妥当な作戦だな。


 超短期間でSランクに昇格したレアナ。
 二〇〇体の死体を自分の手足のように使役するリエン。


 ぶっちゃけ俺の出番なしである。


「ここからアルケミストの大洋館までの道のりは、近くの村まで馬車で二週間。その後徒歩で二日歩いて、ようやくAランク魔物のいるアルケミストの守護森林。流石に遠いな……リエン、時空間魔法は繋げられないのか?」


「ごめんなさい。行ったことある場所にしか開けないのですよ」


 流石にそこまで万能ではないか……仕方ない。


「じゃあ、二、三日休憩したら出発しよう。レアナもリエンも、最近無理させてるからな。少し休んでくれ」


「本当!? ボナト村で育てられた牛の肉って、超美味しいらしいのよね! 食べてくる! リエンも行こ!」


「良いですね、死んだ牛のお肉!」


「その言い方止めてくれない!?」


 わいわいきゃぴきゃぴとホテルを飛び出す二人。最初はどうなるかと思ったが、仲良くやっていけそうだな。


 さて、俺もここ数週間は動きっぱなしだったし、少しはゆっくりさせてもらおう。


 ベッドに体を預けると、思考が薄れ、瞼が自然と下がってきた。俺が思ってる以上に、疲れが溜まってたみたいだな……。


 俺はその眠気に逆らわず、夢すら見ないほど深く、深く眠りについた……。


 ──────────


 ──【白虎】side レーゼン王国門前──


「ま、待ってよリーダー! 本気で行くつもり!?」


 門前で、生き残った十一人が必死に止めてくる。


「当たり前だ。こんな失態を犯したままでいられるか」


 あの失敗で、俺達の評価は地に落ちた。恐らくもう挽回は出来ないだろう。だが、このままで終わらせない。終わるはずがない。


「テメェらもさっさと付いてこい。一人残らずだ。もし拒否するなら、今ここで自決しろ」


「そ、そんな……!」


「本気だ」


 俺の本気度が伝わったのか、全員が項垂れて付いてきた。最初から来いってんだよ、めんどくせぇ。


「でもレイガさん。あの場所はSランク、しかも道中にいるのはAランクの魔物ばっかだぜ? 大丈夫か?」


「腑抜けたテメェらを鍛え直すにはもってこいの場所だ。それにあそこを攻略すれば、この世の理が手に入ると言われている。それさえ手に入れば……!」


 理。どういうものかは知らねーが、俺に相応しいものだろう。そうに決まっている。そうとしか思えない。


「良いから黙って、お前らは俺に付いてこい」


 今度こそ……今度こそ失敗しない。何としても……。










 何としても、アルケミストの大洋館を攻略してやる──!

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