パーティーを追放された俺は、隠しスキル《縁下》で世界最強のギルドを作る
第8話 拠点は目立たず、目立ち過ぎず
リエンと契約して丁度三日の朝。朝食を食べ終えてのんびりしていると、扉を壊すんじゃないかってぐらいの勢いで開けた。
「準備出来ました! いつでも行けます!」
「はしゃぐんじゃない。歳を考えろ歳を」
俺が今年で二十一歳。リエンは確か二十な──。
「おいテメェ女に歳の話をスルンジャネーヨ殺スゾ」
「ひゅっ……すまん」
いや攻撃行動じゃないにしても、そんなドス黒い殺気飛ばすなよ……ごめんて……。
手を挙げて降参すると、ようやく殺気が収まった。はぁ……昔はもっとお淑やかキャラだったのに、どこで道を踏み外したんだ……。
「全く……失礼しちゃいますね、ジオウさん」
「だから悪かったって。それより、そろそろ降りよう。馬車の出発時間だ」
「はーい」
リエンを従えて家を出る。空は雲一つない晴天で、リエンの門出を祝っているみたいだ。
「あ、ジオウさん。ちょっと待ってください」
「ん? 忘れ物か?」
「いえ。ここに私がいた痕跡を消しておこうかと」
リエンが指先に魔力を集中する。
その瞬間、家を覆うほどの黒い魔法陣が瞬く間に作られていく。これは何度も見たことある、アンデットを召喚する魔法陣だ。
だけど……こんなでかい魔法陣、初めて見たな。何を召喚する気だ?
そのまま暫く見守っている。と──。
「っ!?」
な、んだ……!? 黒くて、でっかい手……!?
呆然としていると、地面──正確には魔法陣──から、あまりにも巨大すぎる手が這い出てくる。
俺とリエンが二人で寝泊まりしても余りある木造の家が、手の平の中に隠せるほどの巨大さだ。手だけでこのでかさなら、本体はよっぽど……。
そのでかさを想像して、足が竦む。
だが、召喚された手はそんな事お構い無しに家を粉々に握り潰し、全てを魔法陣の中に引きずり込み……次の瞬間には、そこには何も無くなっていた。
「はい。お掃除完了です。……どうかしました?」
「……おい、何だ今の手は」
「手? ギガントデーモンの手ですよ」
ギガ……!? デーモ……!?
討伐ランクSの悪魔と、討伐ランクSの巨人種。この混血とされる、世界最悪の存在、ギガントデーモン。まさか、本物がいるとは……ほとんど神話の中の存在だぞ……。
「まあ、私もまだ右腕しか持ってないんですけどね。その他の四肢も胴体も頭も、どこかしらに封印されているみたいで……いつか全部揃えたいと思ってるんですよ」
「あぁ……そう……」
とりあえず俺は考えるのを止めた。考えたら負けだと思った。
若干お疲れ気味の俺と、キラキラランランしているリエンは、霊峰クロノスを全力で駆け下り──数分後には、既に出発し掛けていた馬車に飛び乗ったのだった。
──────────
「んーーーっ。人里に出るのは久方ぶりですねぇ」
あぁ……ようやくボナト村に戻ってきた。もうとにかく疲れた……。
馬車に揺られてる間、リエンの力に惹かれたのかここには現れないアンデットの集団が山程現れたのだ。何故かリエンは恍惚な顔をしていたけど、俺や一般の客はゲンナリだよ……。
「おいリエ……リン。行くぞ」
「はーい」
リエンはお尋ね者だから、ここではリンと呼んでいる。一応フードも目深に被って、変装してもらっている。その方が怪しまれないだろうからな。
「まずはどこ行くの?」
「ホテル」
「やん、エッチ♪」
「はっ倒すぞテメェ」
「押し倒すぞ?」
「んな事言ってねーよ」
どんだけ脳内お花畑なんだ。
ボナト村でお馴染みのホテルにチェックインする。部屋は勿論別だ。
受付のオバチャンには、レアナとは別の女の子を連れてきたのがバレたのか、女の敵を見るような目で見られた。こいつとはそんなんじゃないんだが……弁明する必要も無いから、そのままスルーした。
互いに自分の部屋に荷物を置くと、リエンが俺の部屋を訪ねてきた。
「それで、これからどうするんですか? 噂のレアナさんが来るまで、まだ時間があるんですよね?」
「ああ。レアナが戻って来てから本格始動だが……そうだな、ギルドの拠点を作ろうと思う」
どんな組織でも、拠点を確定しないと満足の行く行動は取れない。と言っても、俺達の組織は非合法なものだし、下手な場所に作れば国に目をつけられる可能性がある。ここは慎重にやらないとな。
「どんな場所に作るのがいいんだろうな……」
「そうですね……秘密裏に進めるなら、滝裏や廃墟を根城に、認識阻害の魔法を掛ければいいと思います。ですが、この場合ギルドへ依頼を出す人が、極端に減ってしまうと思います」
そうだな……依頼主のいないギルドなんて、あってもただのお飾りになっちまう。それだけは避けたい。
てことは、目立ち過ぎないで、でも目立たな過ぎない場所を根城にすべき、か……。
「いやムズすぎないか?」
「恐らく最難関でしょうね……」
それに、どうせ実績を上げれば国から目を付けられるだろう。そこも考えないとな……。
「リエン。暫くは別行動で、拠点に良さそうな場所を探そう」
「そうですね。私も、死体を使って広範囲を見てみます。私の死体は、私の手足であり、目ですから」
それは心強いな。やっぱりリエンを仲間にして正解だ。
「体力的には大丈夫か?」
「ええ。ジオウさんと繋がってから、無尽蔵に力が湧き上がってくるようです。問題ありません」
「よし、では行動に移る。一週間探し、候補を互いに出し合おう」
俺は早速ホテルを後にすると、ボナト村から北に向け、駆け出していった。
「準備出来ました! いつでも行けます!」
「はしゃぐんじゃない。歳を考えろ歳を」
俺が今年で二十一歳。リエンは確か二十な──。
「おいテメェ女に歳の話をスルンジャネーヨ殺スゾ」
「ひゅっ……すまん」
いや攻撃行動じゃないにしても、そんなドス黒い殺気飛ばすなよ……ごめんて……。
手を挙げて降参すると、ようやく殺気が収まった。はぁ……昔はもっとお淑やかキャラだったのに、どこで道を踏み外したんだ……。
「全く……失礼しちゃいますね、ジオウさん」
「だから悪かったって。それより、そろそろ降りよう。馬車の出発時間だ」
「はーい」
リエンを従えて家を出る。空は雲一つない晴天で、リエンの門出を祝っているみたいだ。
「あ、ジオウさん。ちょっと待ってください」
「ん? 忘れ物か?」
「いえ。ここに私がいた痕跡を消しておこうかと」
リエンが指先に魔力を集中する。
その瞬間、家を覆うほどの黒い魔法陣が瞬く間に作られていく。これは何度も見たことある、アンデットを召喚する魔法陣だ。
だけど……こんなでかい魔法陣、初めて見たな。何を召喚する気だ?
そのまま暫く見守っている。と──。
「っ!?」
な、んだ……!? 黒くて、でっかい手……!?
呆然としていると、地面──正確には魔法陣──から、あまりにも巨大すぎる手が這い出てくる。
俺とリエンが二人で寝泊まりしても余りある木造の家が、手の平の中に隠せるほどの巨大さだ。手だけでこのでかさなら、本体はよっぽど……。
そのでかさを想像して、足が竦む。
だが、召喚された手はそんな事お構い無しに家を粉々に握り潰し、全てを魔法陣の中に引きずり込み……次の瞬間には、そこには何も無くなっていた。
「はい。お掃除完了です。……どうかしました?」
「……おい、何だ今の手は」
「手? ギガントデーモンの手ですよ」
ギガ……!? デーモ……!?
討伐ランクSの悪魔と、討伐ランクSの巨人種。この混血とされる、世界最悪の存在、ギガントデーモン。まさか、本物がいるとは……ほとんど神話の中の存在だぞ……。
「まあ、私もまだ右腕しか持ってないんですけどね。その他の四肢も胴体も頭も、どこかしらに封印されているみたいで……いつか全部揃えたいと思ってるんですよ」
「あぁ……そう……」
とりあえず俺は考えるのを止めた。考えたら負けだと思った。
若干お疲れ気味の俺と、キラキラランランしているリエンは、霊峰クロノスを全力で駆け下り──数分後には、既に出発し掛けていた馬車に飛び乗ったのだった。
──────────
「んーーーっ。人里に出るのは久方ぶりですねぇ」
あぁ……ようやくボナト村に戻ってきた。もうとにかく疲れた……。
馬車に揺られてる間、リエンの力に惹かれたのかここには現れないアンデットの集団が山程現れたのだ。何故かリエンは恍惚な顔をしていたけど、俺や一般の客はゲンナリだよ……。
「おいリエ……リン。行くぞ」
「はーい」
リエンはお尋ね者だから、ここではリンと呼んでいる。一応フードも目深に被って、変装してもらっている。その方が怪しまれないだろうからな。
「まずはどこ行くの?」
「ホテル」
「やん、エッチ♪」
「はっ倒すぞテメェ」
「押し倒すぞ?」
「んな事言ってねーよ」
どんだけ脳内お花畑なんだ。
ボナト村でお馴染みのホテルにチェックインする。部屋は勿論別だ。
受付のオバチャンには、レアナとは別の女の子を連れてきたのがバレたのか、女の敵を見るような目で見られた。こいつとはそんなんじゃないんだが……弁明する必要も無いから、そのままスルーした。
互いに自分の部屋に荷物を置くと、リエンが俺の部屋を訪ねてきた。
「それで、これからどうするんですか? 噂のレアナさんが来るまで、まだ時間があるんですよね?」
「ああ。レアナが戻って来てから本格始動だが……そうだな、ギルドの拠点を作ろうと思う」
どんな組織でも、拠点を確定しないと満足の行く行動は取れない。と言っても、俺達の組織は非合法なものだし、下手な場所に作れば国に目をつけられる可能性がある。ここは慎重にやらないとな。
「どんな場所に作るのがいいんだろうな……」
「そうですね……秘密裏に進めるなら、滝裏や廃墟を根城に、認識阻害の魔法を掛ければいいと思います。ですが、この場合ギルドへ依頼を出す人が、極端に減ってしまうと思います」
そうだな……依頼主のいないギルドなんて、あってもただのお飾りになっちまう。それだけは避けたい。
てことは、目立ち過ぎないで、でも目立たな過ぎない場所を根城にすべき、か……。
「いやムズすぎないか?」
「恐らく最難関でしょうね……」
それに、どうせ実績を上げれば国から目を付けられるだろう。そこも考えないとな……。
「リエン。暫くは別行動で、拠点に良さそうな場所を探そう」
「そうですね。私も、死体を使って広範囲を見てみます。私の死体は、私の手足であり、目ですから」
それは心強いな。やっぱりリエンを仲間にして正解だ。
「体力的には大丈夫か?」
「ええ。ジオウさんと繋がってから、無尽蔵に力が湧き上がってくるようです。問題ありません」
「よし、では行動に移る。一週間探し、候補を互いに出し合おう」
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