パーティーを追放された俺は、隠しスキル《縁下》で世界最強のギルドを作る

赤金武蔵

第6話 仲間候補は死体愛好者

「それじゃあ次の計画を考えようか」


 ギルドとは言っても、今は俺とレアナの二人しかいない。まずは拠点決めと仲間集め。固定の依頼主も率いれなきゃな。


 それに、ユニークスキル《縁下》の力も明確にしておきたい所だ。


「レアナ、最初はかなり苦労させてしまうかもしれないが、大丈夫か?」


「もちろんよ。苦労は買っててもしろって言うでしょ。ギルドを大きくさせるためには、いくらでも頑張ってやるわ」


「……ありがとう」


 最初はレアナに頼りっきりになると思うが、俺に出来ることはやって行こう。


「そうだな……じゃあ最初に、資金を集めよう。レアナはどこのギルド所属なんだ?」


「冒険者ギルドだけど、ジオウのいたギルドとは別よ。私は南支部。ジオウは西支部でしょ?」


 確かに、冒険者ギルドは複数あったな……よし。


「じゃあまずは、南支部のギルドでBランク、欲を言えばAランクになって欲しい。名前と顔が売れれば指名依頼も来るだろうし、その客をこっちに流れるようにする」


「分かったわ。でも、私に指名の客なんて付くかしら?」


「レアナは可愛いくて強いから問題ない」


「かわっ……ま、まあ良いわ。了解よ」


 顔を真っ赤にしながら、髪をモフモフする。うんうん、年相応の反応だ。


「ジオウはどうするの? まさか、ただ待つだけじゃないわよね?」


「当たり前だ。昔からの友人を訪ねようと思う。今は冒険者を引退してるが、頼れるやつだ」


「そう、分かったわ。とりあえず明日出発しようと思うけど、今のところの拠点はボナト村で良いのよね?」


「ああ」


 この宿も、値段の割にはしっかりとしたサービスをしてくれる。当面の間はここを動かず、勢力を広げよう。


「レアナ。勘で良いが、どのくらいでAランクになれそうだ?」


「そうねぇ……今の私の感覚で言えば、二週間もあればAランクになれると思う。レーゼン王国との移動も考えれば、一ヶ月は欲しいところね」


「分かった。じゃあ一ヶ月後を楽しみにしてるぜ」


 これで、短期的な目標は決まったな。


 中長期的な目標は……一ヶ月後の結果以降に考えよう。






 翌日。レアナはレーゼン王国行きの馬車に乗り込み、ひょこっと顔だけ出していた。


「何だか不思議な気分。物理的に離れ離れになるのに、胸の中にずっとあんたがいるみたい。全然不安じゃないわ。不安じゃないのが不安って、何だか贅沢ね」


「俺も、何故だかお前がずっとそばにいるみたいだよ」


 恐らく契約したことによって、俺とレアナの間に見えない何かが繋がってるのだろう。不思議な感じだ。


 レアナが擽ったそうにはにかむと、御者が鈴を鳴らした。もう出発みたいだ。


「じゃ、ちゃちゃっと行ってくるわ」


「おう。待ってるぞ」


 拳を合わせると、ゆっくりと出発し、ボナト村を後にした。


 それを見えなくなるまで見送り、振り向くと……え、何だ? 何でそんな微笑ましい感じで見てくるんだ?


 周囲の反応のたじろいでいると、近くにいたふくよかなオバサンが俺の背中を力強く叩いた。


「あんちゃん達新婚かい? いやー、見てて砂糖を吐きそうだったわさ」


 えっ?


 豪快に笑って去っていくオバサンを見ていると、他の住民達も散り散りになって言った。


 ……あぁー……さっきの会話、確かに思い返してみると付き合いたてのカップルか新婚みたいな会話だな。なんかすげー恥ずかしくなってきた。


 顔が真っ赤なのを自覚しつつ、俺も早速別の馬車に乗り込んだ。


 その直後に馬車が動き出す。


 目的地は、霊峰クロノス。標高4890メートルで、中央大陸では最高峰の高さを誇る。その山頂に、俺の訪ねるべき友人が住んでいるのだ。


 ボナト村からクロノスの麓までは、馬車で三日。往復一週間弱で帰って来れるだろう。


 問題は、あいつが俺のギルドに入ってくれるかなんだが……あいつの力は、絶対俺達の役に立つ。引き入れない手はないだろう。


 こうして、俺は新たな仲間を求めて、レアナはAランク冒険者を目指して、旅立つのだった。


 ──────────


 何事もなく馬車に揺られること三日。ようやく霊峰クロノスの麓までやって来た。


 もうすぐ日の入りなのか、辺りが余計暗く感じる。俺と一緒に来ていた客は、近くの山小屋へ入っていった。


 俺はと言うと、山小屋へは寄らず山道へ続く道へ向かった。


「ん? おい兄ちゃん! 今日はもう入山禁止だぜ! さっさとこっち来な!」


「問題ない」


「いや問題だらけだよ!? 霊峰クロノスは兄ちゃんが思ってるほど甘かねぇ! 入っても死ぬのがオチだ!」


「問題ない」


 霊峰クロノス程度・・、今までの依頼や最高難度ダンジョンに比べたら、庭みたいなもんだ。


 山小屋のおっちゃんの静止を無視し、クロノスへ足を踏み入れた。


 一歩で50メートルほどの距離を進み、更に一歩、一歩と進む。


 これくらいは、【白虎】では基本技能だ。と言っても、多分今のあいつらには無理な技能だろうけど。


 ただ、この歩法には一つデメリットがある。


 めちゃめちゃ疲れる。それだけだ。


 俺も体力はある方だが、二〇〇歩程度で疲れきってしまう。でも今回は一〇〇歩足らずで踏破出来るから、問題は無い。


 景色が前から後ろに流れる。


 道中、俺の気配を感じたのか、アンデッド系の魔物が襲いかかって来る。


 霊峰クロノスは、その名の通りアンデッド系の魔物が多発する場所だ。特に夜は、アンデッドの動きが活発になる。


「邪魔だ」


 光中級魔法《聖光アーク》を無詠唱で発動し、アンデッドを浄化していく。


 アンデッドは雑魚だが、体力が異様に高い。初級者卒業用の魔物だ。《聖光アーク》を覚えていないと一体一体を相手にする必要があるため、初級者の最後の砦とされる。


 そんなアンデッドを浄化しながら進んでいく。が……。


「ん?」


 200メートル先に、他のアンデッドより高位の気配を感じる。この気配……。


「アンデッドキングか」


 アンデッドの頂点。最強のアンデッド。不死者。色々な言い方はあるが、簡単に言えば討伐ランクAの魔物だ。


 つまり、Aランク冒険者が討伐対象にする、正真正銘の化け物。


 ──俺の敵じゃないがな。


「《聖光の退魔剣アーク・ソード》」


 光上級魔法《聖光の退魔剣アーク・ソード》を、三〇本・・・召喚し、風初級魔法《気流操作》で浮かばせる。


「ふっ──!」


 気流を操り、目の前に現れたアンデッドキングに向けて投擲する。


 アンデッドキングは防御魔法を何重にも貼るが、その全てを粉々に砕いてアンデッドキングの体をズタズタに斬り裂いた。


 アンデッドキングは確かに化け物だ。だが、化け物の中では雑魚として知られている。今更俺を止められる魔物じゃない。


 そして一〇〇歩で、丁度山頂にたどり着いた。


 頂上には草木一つ生えていない。だが、この場には場違いの木造一軒家が建っている。


「おい、いるか?」


 挨拶もなしに入る。俺とこいつの関係は、今更改まることじゃないからな。


 部屋の中には、ゆるふわ系の服を着た女性が、テーブルの上の頭蓋骨を撫でながら椅子に座っていた。


「……あら? 懐かしい声と顔ですね」


「アンデッドキングなんて出してきたくせに、白々しいな」


「ふふふ。欲を言えば貴方の死体を愛でたかったのですが、やはりアンデッドキング程度では殺せませんでしたか」


 やっぱり殺しに来てたか。キチ〇イめ。


 この女はリエン・アカード。アンデッドキングや、それ以上のアンデッドを使役するネクロマンサーかつ俺の十年来の友人で……死体に愛を注いでいる、死体愛好者ネクロフィリアだ。

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