パーティーを追放された俺は、隠しスキル《縁下》で世界最強のギルドを作る
第5話 本契約を結んだ
それからヴィレッジウルフの巣を全て破壊した俺達は、早々にボナト村に戻って報告した。
早過ぎたからか、ガルタ村長とナルタさんからは散々疑われた。が、村の衛兵が巣の破壊を確認し、疑いは晴れた。
食事に誘われたが、ランク査定として俺の評価があると言って断った。
場所は変わってホテル。俺の部屋には、レアナが椅子に座って足を組んでいた。
「もう分かってると思うけど、ジオウの隠しスキルはユニーク。しかも解放されてない状態でも効果が発動していたわ」
「……そんなことあるのか?」
「ええ。稀に強すぎるスキルは、解放されてなくても影響を与えるのよ。でも、それが解放されてちゃんとしたスキルになった。私の体感では、解放前のステータスは1.5倍。解放後のステータスは2倍ね」
レアナは買ってきたリンゴを手に取ると、粉々に握り潰した。っていや怖っ!?
「前の私ではこんなこと出来なかったわ。つまり、仮でもあなたとパーティーを組んだことで、その恩恵を得られてるわけね」
「……えっと……つまり、俺がギルドに所属していたから、ギルドの奴も、【白虎】のパーティーメンバーも、ステータスが1.5倍に上がってたってことか?」
「その通りよ。ついでに言えば、所有属性にも影響を与えてるみたいね。今まで私は火属性しか使えなかった。でも、今は水属性も使えるみたい」
レアナが水属性の簡易魔法を使うと水の球体が現れ、リンゴ汁で汚れた手を洗った。
組織に所属してるメンバーのステータスを上げる、か……。
「……ん? あれ? でも俺、スキルが解放されても何の違いも感じないが……?」
「嘘、そんなはず……あ、まさか……」
レアナがもう一度俺に《鑑定眼》を向ける。
「……もしかして……うん、間違いないかも」
「何だ? 何か分かったのか?」
「……ユニークスキル《縁下》。これ、名前の通りよ」
名前の通り?
「縁の下の力持ちって言葉があるでしょ? 人の目に付かず、他人を支えるって意味の」
「……まさかっ」
「そのまさかよ。このスキルは、あんた自身には作用しない。組織に所属することで、初めて効果を発動するわ」
……そんな……じゃあ、ギルドを抜けたってことは……ギルドのみんなが、弱体化するってことじゃないか……。
「っ! 俺、戻るよ」
「……何を言ってるの?」
ああ分かってる。自分がありえないことを言ってるのは。
だけどレアナにはそれを看過できなかったみたいで、俺の胸ぐらを掴んだ。
「レーゼン王国の奴らは、みんなあんたの事を馬鹿にしてたのよ!? 知らなかったとは言え、あんたがいてこそのレーゼン王国だった! 力に溺れ、奢り昂っても、人として越えちゃいけない一線を越えた! 他人を蔑み、嘲笑い、虐げた! あんたがあいつらの所から逃げたんじゃない! あいつらがあんたのことを手放したのよ! 何でそれで、あいつらの所に戻るって言うの!?」
「で、でも、俺がいなきゃあいつらは弱体化する……つまり、いつも通り依頼を受ければ、死ぬんだぞ……」
「自業自得! それ以上もそれ以下もない!」
レアナは俺の胸ぐらから手を離し、ゆっくり、優しく肩に手を置いた。
「よく聞いて、ジオウ。あんたがもし戻ったとして、そのスキルのことを知れば、全員手の平を返して接してくるわ。優しく、丁寧に、労わるように」
「でもそれは、あんた自身を見ての事じゃない。あんたのユニークスキル目当てのことよ。それさえあれば、あいつらはいつまでも最強でいられるから」
「もしあんたがそれに嫌気をさして逃げようとしても、あいつらはあんたを逃がさない。嬲り、痛ぶり、拘束し、自殺しないように洗脳し、人とは思えない扱いをしてくるでしょう」
「それでもあんたは、王国に戻ろうって言うの?」
「…………」
……確かに、な……あいつらの性格の悪さは、最悪と言っていい。今レアナが言ったことを平気でやって来るだろうし、もしかしたらもっと酷いことになるかもな……。
六年前、レイガと共に【白虎】を設立した時は、あいつは優しかった。誰にでも分け隔てなく接し、誰からも尊敬されていた。
だがある日、俺の力が【白虎】では物足らないと分かると、パーティーを率いて俺を虐げた。
その噂は国中に広がり、今ではどこへ行っても厄介者扱いされる。
優しく、頼りになったレイガは、自分の力に溺れ、変わっていった。──いや、変わったんじゃない。あいつは、元からああいう性格だったんだろうな……。
なら、俺は……。
「…………すまなかった、レアナ。もう大丈夫だ」
「そう? なら良かったわ」
ああ、俺はもう迷わない。あんな奴らの所になんて帰らない。
「……それで、これからどうするつもり? あんた一人でも化け物みたいに強いけど、あんたの真価は組織の中でこそ発揮されるわ」
「俺が化け物はともかく、そうだな……」
本当なら、ボナト村で衛兵になろうと思ったんだが……衛兵になっても、また同じことの繰り返しになりそうな気がする。
かと言って、仕事をしないって訳にはいかないし……。
…………。
「あ、そうだ」
「思いついた?」
「ギルド作ろう」
「……ギルド?」
「ああ。国に属さないフリーのギルドを作る。それにどうせ組織を作るなら大規模に。どこにも負けないギルドを作る」
国に所属すると、絶対面倒事に巻き込まれるだろうし。それなら自由に動けるギルドの方が、国の思惑に左右されないで、世界の動向を確認する事も出来そうだし。
「…………」
「……ん? どうした、クルッポーが爆裂豆を食らったような顔をして」
「……あ、いや……私の予想では、傭兵になるのかなーとか思ったんだけど……」
「それだと、俺と契約した組織が【白虎】の二の舞になるだろ? だったら、俺が組織を作った方が良いと思ったんだ。もし力に溺れる奴が出て来ても、そいつとの契約を破棄すれば元に戻るだけで済むし」
俺が組織に入るんじゃなくて、俺が組織の長となる。逆転の発想だが、こうすることで丸く収まりそうだ。
「……面白いわね、それ。ねぇ、そのギルドに私も入れてよ」
「勿論そのつもりだ。今の俺には伝手も何も無い。頼りにしてるぞ」
レアナに手を差し出すと、ニヤリと人の悪い笑みを浮かべて手を取った。
その瞬間、レアナと俺を白い光が包み込み、頭の中に文字が浮かんだ。
◇◇◇◇◇
レアナ・ラーテンと本契約を結びます。
契約内容:雇用契約
契約破棄条件
①雇用主の契約内容の破棄
②雇用主の死亡
③被契約者の死亡
④被契約者の悪事発覚
⑤雇用主への攻撃的行動
契約しますか?
・YES
・NO
◇◇◇◇◇
迷わずYESを選択。
◇◇◇◇◇
レアナ・ラーテンと本契約を結びました。
◇◇◇◇◇
文字が消えると、それと同時に俺らを包む光も消えた。
「これで、本契約完了だ。よろしくな、レアナ」
「こっちこそ、よろしくお願いするわ、ジオウ」
早過ぎたからか、ガルタ村長とナルタさんからは散々疑われた。が、村の衛兵が巣の破壊を確認し、疑いは晴れた。
食事に誘われたが、ランク査定として俺の評価があると言って断った。
場所は変わってホテル。俺の部屋には、レアナが椅子に座って足を組んでいた。
「もう分かってると思うけど、ジオウの隠しスキルはユニーク。しかも解放されてない状態でも効果が発動していたわ」
「……そんなことあるのか?」
「ええ。稀に強すぎるスキルは、解放されてなくても影響を与えるのよ。でも、それが解放されてちゃんとしたスキルになった。私の体感では、解放前のステータスは1.5倍。解放後のステータスは2倍ね」
レアナは買ってきたリンゴを手に取ると、粉々に握り潰した。っていや怖っ!?
「前の私ではこんなこと出来なかったわ。つまり、仮でもあなたとパーティーを組んだことで、その恩恵を得られてるわけね」
「……えっと……つまり、俺がギルドに所属していたから、ギルドの奴も、【白虎】のパーティーメンバーも、ステータスが1.5倍に上がってたってことか?」
「その通りよ。ついでに言えば、所有属性にも影響を与えてるみたいね。今まで私は火属性しか使えなかった。でも、今は水属性も使えるみたい」
レアナが水属性の簡易魔法を使うと水の球体が現れ、リンゴ汁で汚れた手を洗った。
組織に所属してるメンバーのステータスを上げる、か……。
「……ん? あれ? でも俺、スキルが解放されても何の違いも感じないが……?」
「嘘、そんなはず……あ、まさか……」
レアナがもう一度俺に《鑑定眼》を向ける。
「……もしかして……うん、間違いないかも」
「何だ? 何か分かったのか?」
「……ユニークスキル《縁下》。これ、名前の通りよ」
名前の通り?
「縁の下の力持ちって言葉があるでしょ? 人の目に付かず、他人を支えるって意味の」
「……まさかっ」
「そのまさかよ。このスキルは、あんた自身には作用しない。組織に所属することで、初めて効果を発動するわ」
……そんな……じゃあ、ギルドを抜けたってことは……ギルドのみんなが、弱体化するってことじゃないか……。
「っ! 俺、戻るよ」
「……何を言ってるの?」
ああ分かってる。自分がありえないことを言ってるのは。
だけどレアナにはそれを看過できなかったみたいで、俺の胸ぐらを掴んだ。
「レーゼン王国の奴らは、みんなあんたの事を馬鹿にしてたのよ!? 知らなかったとは言え、あんたがいてこそのレーゼン王国だった! 力に溺れ、奢り昂っても、人として越えちゃいけない一線を越えた! 他人を蔑み、嘲笑い、虐げた! あんたがあいつらの所から逃げたんじゃない! あいつらがあんたのことを手放したのよ! 何でそれで、あいつらの所に戻るって言うの!?」
「で、でも、俺がいなきゃあいつらは弱体化する……つまり、いつも通り依頼を受ければ、死ぬんだぞ……」
「自業自得! それ以上もそれ以下もない!」
レアナは俺の胸ぐらから手を離し、ゆっくり、優しく肩に手を置いた。
「よく聞いて、ジオウ。あんたがもし戻ったとして、そのスキルのことを知れば、全員手の平を返して接してくるわ。優しく、丁寧に、労わるように」
「でもそれは、あんた自身を見ての事じゃない。あんたのユニークスキル目当てのことよ。それさえあれば、あいつらはいつまでも最強でいられるから」
「もしあんたがそれに嫌気をさして逃げようとしても、あいつらはあんたを逃がさない。嬲り、痛ぶり、拘束し、自殺しないように洗脳し、人とは思えない扱いをしてくるでしょう」
「それでもあんたは、王国に戻ろうって言うの?」
「…………」
……確かに、な……あいつらの性格の悪さは、最悪と言っていい。今レアナが言ったことを平気でやって来るだろうし、もしかしたらもっと酷いことになるかもな……。
六年前、レイガと共に【白虎】を設立した時は、あいつは優しかった。誰にでも分け隔てなく接し、誰からも尊敬されていた。
だがある日、俺の力が【白虎】では物足らないと分かると、パーティーを率いて俺を虐げた。
その噂は国中に広がり、今ではどこへ行っても厄介者扱いされる。
優しく、頼りになったレイガは、自分の力に溺れ、変わっていった。──いや、変わったんじゃない。あいつは、元からああいう性格だったんだろうな……。
なら、俺は……。
「…………すまなかった、レアナ。もう大丈夫だ」
「そう? なら良かったわ」
ああ、俺はもう迷わない。あんな奴らの所になんて帰らない。
「……それで、これからどうするつもり? あんた一人でも化け物みたいに強いけど、あんたの真価は組織の中でこそ発揮されるわ」
「俺が化け物はともかく、そうだな……」
本当なら、ボナト村で衛兵になろうと思ったんだが……衛兵になっても、また同じことの繰り返しになりそうな気がする。
かと言って、仕事をしないって訳にはいかないし……。
…………。
「あ、そうだ」
「思いついた?」
「ギルド作ろう」
「……ギルド?」
「ああ。国に属さないフリーのギルドを作る。それにどうせ組織を作るなら大規模に。どこにも負けないギルドを作る」
国に所属すると、絶対面倒事に巻き込まれるだろうし。それなら自由に動けるギルドの方が、国の思惑に左右されないで、世界の動向を確認する事も出来そうだし。
「…………」
「……ん? どうした、クルッポーが爆裂豆を食らったような顔をして」
「……あ、いや……私の予想では、傭兵になるのかなーとか思ったんだけど……」
「それだと、俺と契約した組織が【白虎】の二の舞になるだろ? だったら、俺が組織を作った方が良いと思ったんだ。もし力に溺れる奴が出て来ても、そいつとの契約を破棄すれば元に戻るだけで済むし」
俺が組織に入るんじゃなくて、俺が組織の長となる。逆転の発想だが、こうすることで丸く収まりそうだ。
「……面白いわね、それ。ねぇ、そのギルドに私も入れてよ」
「勿論そのつもりだ。今の俺には伝手も何も無い。頼りにしてるぞ」
レアナに手を差し出すと、ニヤリと人の悪い笑みを浮かべて手を取った。
その瞬間、レアナと俺を白い光が包み込み、頭の中に文字が浮かんだ。
◇◇◇◇◇
レアナ・ラーテンと本契約を結びます。
契約内容:雇用契約
契約破棄条件
①雇用主の契約内容の破棄
②雇用主の死亡
③被契約者の死亡
④被契約者の悪事発覚
⑤雇用主への攻撃的行動
契約しますか?
・YES
・NO
◇◇◇◇◇
迷わずYESを選択。
◇◇◇◇◇
レアナ・ラーテンと本契約を結びました。
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