【ジョブチェンジ】のやり方を、《無職》の俺だけが知っている

赤金武蔵

スパルタ

 ハンターギルドへ入って三日後。ようやく《アークヒーラー》の方の許可がおり、今日はクレアとチームを組んで依頼を受けることになった。


 その間は、アルフレッド家でレインさんの指導の下、魔法の基礎と魔力コントロールについて学び、今の俺のステータスはこんな感じだ。






 ステータス
 名前:ゼノア・レセンブル
 レベル:15
 職業:《魔術師》
 職業レベル:5
 物理攻撃力:650
 物理防御力:540
 魔法攻撃力:1190(+500)
 魔法防御力:1020(+500)
 スピード:430
 魔力:1900(+500)/1900
 スキル:<魔法攻撃力向上>






 やっぱり、魔法を使わなくても職業レベルを上げることは可能ということが分かった。


 レインさん曰く、通常は魔法を連発し、実戦の中で職業レベルを上げていくものらしい。その方が、レベルも一緒に上がって一石二鳥だから。こんな方法で職業レベルだけを上げていく人は、かなり稀なんだとか。


 俺からしてみれば、早くに職業レベルをマックスにすれば、スキルを習得出来てレベル上げの効率も上がると思うんだが……まあそれは置いといて。


「おお……何か、いっぱいあるな……」


 俺とクレアは今、クエストボードと呼ばれる大きめの看板の前にいた。アイアン、ブロンズ、シルバーのハンターは、ここから依頼を受けるらしい。


 因みにそれ以上、ゴールド、プラチナ、ミスリルは、受付での直接受注となっている。


「ゼノアの好きなもの受けていいわよ。私はブロンズプレートのハンターだから、チームならゼノアでもブロンズの依頼を受けられるわ」


「そうなのか!? ならブロンズやりたい!」


「分かったわ。そ、れ、な、らぁ……」


 クレアは俺の実力を知ってるからか、何の疑問も持たずブロンズの依頼を物色する。


 ……ん? 何だ? 視線が俺達に集まってるような……?


 ザワついている方に意識を向ける。


「見ろよ、クレア嬢と一緒にいる餓鬼……」
「ピッグさんを一方的にぶちのめしたって噂の《魔術師》か……」
「しかも、あの時はまだハンターですらなかったらしいぜ」
「てことは、あの後ギルド長の《魔術師》試験を通過したのか……!」
「内容は明らかになってないが、合格率一パーセント以下の……」
「お、おっかねぇ……!」
「《魔術師》ってだけでも手が付けられねぇってのに……」
「関わらない方が良さそうだぜ……」


 あ、違う。これ俺への視線だ。


 声のする方を振り返ると、皆一斉に目を逸らした。ここまで露骨だと、ちょっと傷付くんだが……。


 クレアにバレないように苦笑いを浮かべると、「これにした!」とクレアが一枚の依頼書を持って来た。


「ゼノア、これ行くわよ!」


「どんなんだ?」


「ラットコボルト十体の討伐。コボルトの上位種だけど、ビーストボアよりずっと雑魚だから、楽勝よ」


 クレアのその言葉に、またギルド内がザワついた。


「び、ビーストボア……!?」
「シルバープレートの中では雑魚だが、アイアンで倒すのは無理なモンスターだぞ……!」
「あの餓鬼……いや子供は、ビーストボアを倒して生きてきたのか……!」
「おおお、おっかねぇよぉ……!?」
「絶対関わるのよそう……」


 ……ビーストボアって、シルバープレートのモンスターだったんだ……確かに最初の方は、《ファイアーボール》を三発くらい当てないと倒せなかった。レベルの上がった今なら、一発で仕留められるけど。スキル様様だな。


「……何か騒がしいわね。どうしたのかしら?」


「さあな。行くなら、さっさと行こうぜ」


「そうねっ」


 クレアが依頼書を持って受付を済ませると戻ってきた。


「場所はここから馬車で二日行った所よ。ヨハネの森って言って、ゼノアのいたアザトースの森より安全だからね」


 ザワッ……!


「あ、あ、あ、アザトース……!?」
「凶悪山賊グループの根城にしてる、あの……!」
「何でそんな所にいて生きてられるんだよ……!」
「あ、あいつ、絶対俺達より強いぜ……!」
「そういや、山賊グループが壊滅してたらしいが……」
「まさかあの子供が……!?」
「おおおおおおおっかねぇぇぇぇぇ……!」


 ……そんなビビられても、困るんだが……。


「さ、クレア。行こうぜ」


「ええ。さあ、ちゃちゃっとやったるわよ!」


 クレアと並んでギルドを出る。


「あ、そうだ。ゼノア、これギルド長からよ」


 と、麻袋に入った何かを渡してきた。


「これ? うっ、重っ……!」


 な、何が入ってるんだ……?


 麻袋の紐を解いて中を確認する。


 エーテル、エーテル、エーテル、エーテル、エーテル、エーテル、エーテル、エーテル、エーテル、エーテル、エーテル、エーテル、エーテル、エーテル、エーテル、エーテル、エーテル、エーテル、エーテル、エーテル、エーテル、エーテル、エーテル、エーテル……。


「エーテルばっかりじゃん!」


「一〇〇個あるそうよ。私は依頼が終わったら帰るけど、ゼノアは全部使うまで帰ってくるな、だって」


 スパルタ過ぎない? スパルタ過ぎない!?


「頑張って☆」


「は? 帰さないけど?」


「え? 帰るわよ?」


 ニヤァ……。


 クレアの腕を掴む。


「逃がすと思った?」


「……冗談よね……? 私、替えの服も下着も持って来てないわよ……!?」


「安心しろ、俺もだ」


「男女の違いを考えなさいよ!? ま、待って、引っ張らないで! せめて替えの服を用意させてぇ!!!!」

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