告白されて付き合うことになった美少女がその日のうちに義妹になった件 〜ところで、おっぱいはいつ揉んでいいの?〜

赤金武蔵

第19話 似た者カップル

 チュンチュン──チュン──。


「…………」


 ……何だか、すげーいい夢を見てた気がする。
 内容までは分からないけど、幸せな夢だったような……。


 回らない頭で周りを見渡す。特に変わった様子はない。それでも何故か、咲良の匂いが鼻を擽った気がした。
 ……咲良のことが好きすぎて遂に脳がバグったか……。
 ……起きるか。支度しねーと──。


 グイッ。……ん? 服が引っ張られ……て……?






「むにゅ……くぅ……くぅ……」






 …………? …………?? ?????
 え、さく……え? ん? 夢? 俺はまだ幸せな夢の中?
 頬を引っ張る。うん、痛い。チョー痛い。
 ……何で咲良が俺の横で寝てるわけ?
 ……何がなんだか分からない。どうなってんだこれは。
 俺の服の裾を握っている咲良。しかも結構がっしりと。全然離してくれそうにない。




 …………。
 え、俺達はいつの間に朝チュンを迎える関係になったの???


 いや付き合ってはいるけど、まだそこまで行ってないと言うか俺の度胸がないと言うか手すら握ってないのに同棲とか膝枕とか添い寝朝チュン(?)とか色々すっ飛ばし過ぎじゃないかとかいやもうここまで来たら結婚の申し出をした方がとか色々考えちゃうんだけどそこんところも年齢的に早すぎるし尚更いい所に就職するためにまずは大学に行ってあああああああああああああああああああああ(オーバーヒート)。


「……ん……ふあぁ……むにゃ……はれ、ゆきかじゅくん……? おはよー」
「っ!? お、おは、よ……う……」
「んむー……? なんれゆきかじゅくん、ここにいるのぉ……?」


 それまんま俺のセリフぅ!
 どう反応していいか分からず固まっていると、咲良もようやく起き出したようで……虚ろな目に光りが戻ってきた。
 見る見る顔が赤くなり、それどころか耳や首まで真っ赤になる。


「……ぁれ……え……あ……あああああっ!?」
「おわっ!? きゅ、急にどうし──」
「わああああああああ!!!!」


 ドタドタドタッ、バタンッ!


 ……行っちまった……何だったんだ、あれ……?
 首を傾げて、さっきまで咲良の寝ていたベッドを見る。
 触ってみると……温かい。さっきまでここに咲良が寝てた証拠だ……。
 ふと寝転がり、匂いを嗅いでみる。
 ……咲良の匂い……落ち着く……。
 …………。


「ぅぉぉぉぉぉぉっ……! キモイことしてんじゃないよ俺ぇ……!?」


 咲良がいた場所に顔を押し付けて匂い嗅ぐとか馬鹿か! 馬鹿か!? 馬鹿なのか!? これじゃまるで変態じゃねーか俺!?


 ぐぬああああああああああっ!?


   ◆◆◆


 慌てて部屋に戻ったその頃の咲良。


(やっちゃったやっちゃったやっちゃったやっちゃった!? 雪和くんが可愛くてついつい添い寝からの朝チュンしちゃったよ私!? うわあああああこれエッチな子って思われてる! 絶対思われてる! いや雪和くんになら思われていいけどっ、色々と飛び越えすぎな気もするんだよね!? こう言うのはもっと段階を踏んで……あ、寝間着から雪和くんの匂いが……くんくん、くんかくんか……ほあぁ、雪和くんに抱き締められてる気がするぅ……! ……って何考えてるの私!? これじゃまるで変態じゃない! 変態じゃない! 変態じゃない!? うわあああああああっ!?)


 似た者カップルであった。


   ◆◆◆


「…………」
「…………」


 …………。
 気まずい……。
 こんな絶望的に気まずいことなんて、今まであっただろうか。
 それは勿論、朝のことについてだ。
 咲良に聞いても寝惚けてたの一点張りだし……まあこれ以上掘り下げるようなことはしないでおこう。お互い怪我しそうだ(精神的に)。


 お互いに一言も喋らないまま学校に到着し、互いに並んでいる下駄箱の扉を開く。


「あ」
「ん?」
「……これ……」


 咲良が呆れたように下駄箱から手紙を取り出した。ご丁寧に『Dear 時田咲良』の文字入り。


「……ラブレターだな」
「やっぱり?」
「じゃないと、『Dear親愛なる』なんて使わないだろ?」
「はぁ……どうして分かってくれないのかなぁ……」


 本当に迷惑そうな顔でラブレターを開く。
 いかにも男の子が書きましたと言った感じの文字で、緊張なのか所々歪んだりズレたりしているが……内容としては、ありきたりな告白文だ。放課後校舎裏で待ってます、的なやつ。


「どうすんの? 行くの?」
「んー……うん。せっかく勇気出してくれたんだし、無視する訳にはいかないよ」


 ズキッ──。


「そっか……」
「もー、そんな不安そうな顔しなーいの。どうせ一緒に帰るんだから、近くで待っててもいいよ?」
「そうさせてもらいます」
「食い気味だ!?」






 でもその放課後から、俺は今の判断を後悔することになる。

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