告白されて付き合うことになった美少女がその日のうちに義妹になった件 〜ところで、おっぱいはいつ揉んでいいの?〜

赤金武蔵

第8話 どーなつにーちゃん

 あの時の子が、何でここに……?


「レイカ! 勝手に母さんから離れるなって言ってるだ……ろ……?」
「…………」


 ……う、わ……何だこの美少女……いや、美少年……? 中性的と言うか、女っぽい顔付きだが……俺と同じ男の制服を着ている。
 明らかに日本人離れしてる容姿。間違いなくハーフだろう。この子と同じ菖蒲色の瞳……兄妹か?
 男の俺でも目を奪われるほどの美貌。こんな男もいるのか……。
 ……あ、ネクタイの色が赤……てことは、新入生だな。


「あっ! にーに!」


 思った通り、レイカと呼ばれた子は今度は美少年に向かって走っていった。


「れ、レイカ。いきなり走り出したら危ないだろ?」
「ごめんなさーい」


 美少年お兄ちゃんに叱られたと思ったのか、しょぼんとするレイカちゃん。その頭を優しく撫でるそいつの顔は、正しく優しいお兄ちゃんだった。
 その姿に、周囲の女子や一部の男子が頬を赤らめている。女子は分かるが何故男子まで……。


「……あっ! す、すみませんっ。妹がご迷惑をかけたようで……」
「……え? あ、ああ。問題ないぞ」
「本当にすみません。ほら、レイカも謝って」
「ごめんね、どーなつにーちゃん」


 二人揃ってぺこりと一礼。いや、本当に気にしなくてもいいんだけど……。


「……ドーナッツのにーちゃん? レイカ、それって……」
「ん、ひゃくえん!」
「!? ま、ままままままさか、君が100円の……!?」


 美少年は慌てたように鞄から財布を取り出すと、まるで土下座をするかのように地面に膝をつき、手の平に100円を乗せて差し出してきた。


「ありがとうございます! ありがとうございます! こちらあの時の100円でございます! どうかお納めくださいませ!」
「は!? いやいいから、こんな所でそんなことするな!」


 じゃないと……!


「え? 何、カツアゲ?」
「あの人が美少年からカツアゲしてるわ!」
「しかも100円て……しょぼ……」


 ほらぁ! ほらこうなるぅ!


「ちょっ、おまっ、こっち来い!」
「え? ま、待って! レイカ、母さんの所に戻るんだぞ!」


 慌てて男の腕を掴んで急いで校舎の中に入ると、死角になりそうな物陰に連れてきた。


「お前なぁ、あんな人目のある場所で土下座なんかするなよ……!」
「あ……ご、ごめん。つい……」


 ついで土下座って……一体どんな教育を受けてんだ。


「でも、妹を助けてくれたことは感謝してるよ。実は僕、つい数日前に風邪を引いてね。妹は僕の好きなドーナッツを買ってきてくれたんだ。それで、100円のことを聞いて……」
「なるほど、そういうことか……風邪はもういいのか?」
「うん。お陰様で元気になったよ」


 そいつは何よりだ。


「俺は時田雪和。お前は?」
「僕は数寄屋すきやハジメ。妹はレイカ。よろしく」


 手を差し出してきた数寄屋の手を握ると、嬉しそうな笑みを浮かべた。何だこいつ、どんな顔でもイケメンか。
 ……ん? 数寄屋?


「もしかして1組か? 俺も1組だ」


 こんな珍しい苗字も中々いないからな。直ぐに覚えられた。


「本当!? ふふ、早速友達が出来て嬉しいなぁ。……あっ、早く教室行こ、ユキカズ」
「お、おう……」


 いきなり友達、しかも下の名前で呼び捨て……コミュ力が高いのか、物怖じしないタイプなのか……。
 先を歩く数寄屋に並ぶように歩く。さっきまでは咲良が隣だったから男子の視線ばかりだったが、今では女子の視線ばかりだ。
 どちらにせよ居心地が悪いことには変わりない……。


「いやー、まさかこっちに来て早々に友達が出来るなんて思ってもみなかったから、嬉しいなぁ」
「こっちってことは、中学は別のところに?」
「うん。親の仕事の関係で引っ越してきたんだ」
「へぇ、大変だな」
「そうでもないよ。慣れてるんだ、引っ越しには」


 だけど数寄屋はそれを知ってか、それとも鈍感なのか、周囲の視線をガン無視しして俺に笑顔を見せる。


「ユキカズは兄弟はいるの?」
「あー……まあいるというか……妹が」
「ぁ……ご、ごめんっ。誰にでも言いづらいこととかあるよね……」
「いや、そういう訳じゃないんだが……」


 うーん、どう説明したらいいものやら……。


「……まあ、後で紹介するよ。同じ新入生なんだ、妹」
「そうなの!? どんな子なんだろう。ユキカズに似て、可愛い子なんだろうねぇ」


 可愛い子なことには変わりないけど、血が繋がってないから反応しづらい……。


「……って待て、俺に似てって何だ?」
「え? だってユキカズ、カッコイイでしょ?」
「……お前、いい奴だな」
「? ありがとう?」


 俺をカッコイイって言ってくれる奴なんて、咲良とお前くらいしかいないよ……。
 他愛もない話をしながら1組に到着すると、数寄屋が入った瞬間にクラスの視線が数寄屋に集まった。


「うわ……綺麗な人……」
「男? 女?」
「制服は男っぽいけど……」
「俺男だけどキュンです……」


 分かる、分かるぞその気持ち。俺も咲良や数寄屋を最初に見た時、そんな気持ちになったもん。


「じゃあユキカズ、また後で」
「ああ」


 教室の前に貼られている席を確認して、席に座る。名前順=番号順なのか、俺が一番後ろ、その前に咲良がいるみたいだ。
 で、俺のいる列の一番前が数寄屋。中央の一番前だから、クラスの視線を一身に集めている。目立って目立ってしょうがない。
 そのまま少しの間待っていると、教室の前が大きく開いた。


 足りない身長に土鍋高校の制服。そして明るく栗色の毛をした女性。……いや、幼女・・


「やあやあ、おはよう新入生諸君! そして入学おめでとう!」


 あ、照崎先生……?
 さっき咲良を拉致った、一年生学年主任の照崎先生が教壇に立つと、グルっとクラスを見渡した。


「うんうん、皆フレッシュだね! 今日から1年間このクラスを担当することになった、照崎未来だよ! 照崎先生って呼んでね♪」


 ニパッ。レイカちゃんに負けず劣らずの幼女らしい笑顔。実に幼女だ。










「あっ、今幼女って思った時田兄くん、退学」
「そんな馬鹿な!?」
「なーんて、冗談冗談! 照崎先生ジョークだよぅ」


 いや、今の目はマジの目だったぞ……。
 照崎先生のジョーク(?)にドン引きしてると、先生がパンッと手を叩いた。


「はいっ、おちゃめな照崎先生の自己紹介でしたー! じゃあ早速体育館に移動するよ! 廊下に整列! ハリーアップ!」


 言うが早いか、照崎先生は即教室を出て行った。
 ……雑だなぁ、この人……。
 はぁ……仕方ない。誰も動かないみたいだし、率先して外に出よう。
 俺が席から立ち上がると、次いで数寄屋が。その後に他のクラスメイトも立ち上がり、廊下へ出た。


「並んだかな? じゃ、体育館にレッツゴー!」


 どこから取り出したのか、『1-1』と書かれた旗を持って先頭を歩く照崎先生。
 俺達は若干不安になりながらも、その後に続いて廊下を歩いて行くのだった。

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