外れスキル【釣り】を極限にまで極めた結果 〜《神器》も美少女も釣れるようになったけどスローライフはやめません。〜

赤金武蔵

第14話 甘ァ

 ……待て俺。冷静になれ。うん、冷静に、クールに。


「? どうしたの、タナト?」


「んぇっ!? う、ううん、何でもないっ」


 場所は脱衣場。
 今俺の背後では、エリオラがしゅるしゅると服を脱いでいる。
 意識してるからか緊張してるからか、脱いでる音が異様に大きい気がする。


 ……どうしてこうなった?


 待て待て。落ち着けよ俺。いくら今は女でも、男女で風呂に入るなんてそんな……あれ、でも俺エリオラと付き合ってるからオールオーケー? いやでも、うん、あれ、どうなんだ?


 うんうん唸っていると……ピトッ。エリオラがくっついて来た!?
 せ、背中に当たるこの感触……! 間違いない、服を着てないぱいおつの感触だ!


「タナト、脱げない?」


「ぬ、脱げる! 脱げるから離して……!」


「ダメ、離さない」


 なぜ!?


「脱がしてあげる。振り向いて」


「だだだだ大丈夫だからっ、自分で脱げるから!」


「振り向かないなら無理やり脱がす」


 声色がガチすぎる!
 はっ……! こ、これはもしや……おっぱいを押し当ててるけど、実はタオルで巻いているパティーン!
 振り向いて、ドキドキする俺を楽しむつもりだな!
 ふっ……エリオラの策、看破したり!


「分かった、よろしく頼む」


 くるっ。


「何でタオル付けてないのぉ!?」


 全裸じゃん!
 全裸じゃん!!
 全裸じゃん!!!


「え? だってお風呂入るし」


「少しは恥じらいを持てよ!」


「今更何言ってるの」


 いやまあ確かにエリオラの裸は何度も見てるけど、それとこれとは話が別だろ!?
 慌てて顔を背けると、エリオラが服のボタンを外していく。


「ふふ……緊張してるタナト、可愛い……♡」


「か、可愛くなんかねぇ……!」


「可愛いよ、凄く……」


 服のボタンを全て取られると、黒いブラジャーが見えた。


「うわ……エロい」


「え、エロくないし……」


「ううん、エロいよ。上気してる肌に、大きく形のいいおっぱい。それに黒い下着が映えて……とてもいい」


 そんな実況すんな!
 エリオラの手が、服のボタンからスカートのチャックへと移る。
 ジジ、ジーーー……パサッ。
 スカートが脱がされ、ブラジャーとセットの黒いショーツが顕になった。


「…………」


「っ……何、ジロジロ見てんだよ……」


「……やばい、タナト。私、女タナトでも全然いける……」


 エリオラは舌なめずりをし、ジリジリにじり寄ってくる。


「えっ。ちょっ、待ってくれ、ここで……!?」


「どうせ直ぐお風呂入る。まずはタナトに、女のよさを叩き込む」


 エリオラから逃げるように後退る。が……とんっ。しまった逃げ場が……!
 それを隙と見たのか、素早く近付いたエリオラが俺の腕を掴み、壁に押し付けて来た。


「安心して、全部私に任せればいい」


「や、やめっ……んぁ……」










『甘ァ……ウチは退散させてもらおうかのう』


   ◆◆◆


 ぴちょん……ぴちょん──。


 湯船に浸かる俺。目の前には満足気な顔のエリオラ。
 俺は恥ずかしくて三角座りしているが、体というか……心が充実している。
 夢見心地というか、満足感が凄い……。


「タナト、どうだった?」


「…………」


「言わないとまたアレやるよ?」


「ヒッ……! わ、分かった、言うからアレだけは……!」


「アレやったタナトも、とっても可愛かったよ」


 くそっ。俺、完全に弄ばれてる……!


「で、どうだった?」


「……凄く、よかったです……」


「ふふふ。かーわい」


 くそ、エリオラめ……男に戻ったら覚えとけよ……!
 エリオラは対面から背面へ体勢を変えると、俺の脚の間にすっぽりと収まってきた。


「……やっぱり、男タナトの腕で抱かれたいな……今のタナトの腕は柔らかくて気持ちいいけど、男タナトの腕の方が安心する」


「エリオラ、あと二週間我慢してくれ。な?」


「うん……」


 エリオラの頭を撫でると、気持ちよさそうに身を預けてくる。
 やっぱり、エリオラも寂しいんだな。俺だって、男のときとは違うからどことなく寂しさを覚えてるし……。


「でも二週間かぁ……今日一日だけでも相当長く感じたのに、二週間なんて長いよなぁ」


「明日はまた街に行く?」


「いや、明日は釣りしてる。やっぱり釣りしないと落ち着かないし」


 今日一日釣りしてないだけどムズムズしてるからな。
 俺、釣りがないと生きていけない体になってしまってるらしい。


「ん、分かった。……そろそろ上がる。タナトも出よう」


「オッケー」


 気付いたらふわふわした感覚も無くなってる。上がるには頃合だろう。
 エリオラと一緒に湯船から立ち上がる。
 体の芯まで暖まって、いい感じだ。


「はぁ……気持ちよかった」


「…………」


「……エリオラ?」


「……水に濡れたタナト、エロい」


「──え、ちょっ。待っ……ッ!?!?」

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品