外れスキル【釣り】を極限にまで極めた結果 〜《神器》も美少女も釣れるようになったけどスローライフはやめません。〜

赤金武蔵

第3話 部屋、行くわね

 皆で食事を終え、俺はマイヤを送るべく外界へ続く穴を開けた。マイヤの要望で芸術の都の門前に繋いだが、外は既に真っ暗だ。


「皆さん、お世話になりました」


「おう。暗いし、気を付けていけよ」


「はい。私も十極天ですからね。これくらいの暗さ、どうってことないです」


 と、朗らかな笑みを浮かべるマイヤ。最初はこんな笑顔を見せるような人とは思わなかったな。


「そっか……じゃ、何かあったら連絡してこい」


「ええ。そうさせて……キャッ」


 マイヤと握手をしようとすると、女子ーズが一斉にマイヤに群がった。


「マイヤ、いつでも来て」


「マイヤさん、また一緒にご飯食べましょう」


「もうマイヤちゃんも、私達の仲間なのだわ!」


「マイヤ! ババ抜きは負けたがジジ抜きなら負けんぞ!」


 やいのやいの、わいわいわいわい。凄いな、ほんのちょっとしか一緒にいなかったのに、もう打ち解けてる。


 マイヤも最初は面食らっていたが、直ぐに破顔した。


「ふ、ふふっ。そうですね。また皆さんと一緒に遊びたいです」


「悪いな、マイヤ……」


「いいえ。正直、今まで戦いだったり、魔弾天のマイヤとして生きてきて気の置けない日々でしたから……皆さんと一緒にいると、ただのマイヤとしていれるような気がするんです」


 マイヤが一人一人と握手をし、最後に俺の手を握るとクイッと引き寄せ、耳元で誰に聞こえないように囁いてきた。






「イブさんのことは誰にも言いませんから安心してください」






 ────ッ。


「……気付いてたのか?」


「まあ、記憶も戻ってますから。まさかとは思いましたけど、魂の気配が同じだったので」


 そ、か……そういや、魔族は魂の気配を感じ取ることが出来るんだったな。気付かれてもおかしくはないか。


「気付いた上で見逃してくれるってことは、認められたってことでいいのか?」


「はい。気配は当時と同じですが……今のイブさんからは、優しい気配がします。だから大丈夫と判断しました」


「優しい……ただのわがままロリの間違いだろ」


「ふふ。そうですね」


 マイヤは俺から離れると、まるで貴族のお嬢様のように優雅にお辞儀をした。


「それでは皆さん、お元気で」


 マイヤはニコリと微笑んで俺達に背を向け、草原に向けて歩いていく。


 振り返ることなく、真っ直ぐに。


 皆が去っていくマイヤに手を振っていると、俺の隣に立っていたミケがじどーっとした目を向けてきた。何故。


「で、タナト。マイヤさんの匂いはどうだった?」


「とってもいい匂いでした。……はっ。しまった、誘導尋問か……!」


「いや誰も誘導してないわよ。全く、タナトはエッチなんだから……」


 ミケは皆が見てないのを確認したのか、すすすーっと俺に近付くと、すぽっと俺の腕の中に収まった。


「ど、どうした?」


「……上書き……」


 ……はい? 上書き? なんの?


 何を言ってるのか分からず首を傾げる。そんな俺の思いも知らずか、ミケが上目遣いで見上げてきた。


「……私はいい匂い?」


「え。あ……うん、いい匂い、です……」


「えへへ。……た、タナト。その……」


 もじもじ、もじもじ。さっきからどうしたんだ、ミケの奴?


 ミケは皆の方をチラッと見てから、そっと俺の耳元に口を寄せてきた。


「今夜……部屋、行くわね」


「ッ!?」


 これ、は……!?


 慌ててミケを見ると、熱っぽいような、艶っぽいような笑みを浮かべ、皆のところに歩いていった。


「はいはーい、皆そろそろ帰りますよー」


「「「あーい」」」


 え、ええ……俺この感じで放置されるの……?


 流石の俺も、さっきの意味はちゃんと理解している。うん、理解してます、はい。


 俺も経験はあるが、ぶっちゃけエリオラ主導だったから俺メインってのは経験がない。だけど、恐らくミケは初めて……これは俺がなんとかしなければ。


 ……とりあえず、めっちゃ体綺麗に洗お……。


   ◆◆◆


「…………っ」


 ソワソワソワソワ。
 うろうろうろうろ。
 ソワソワソワソワ。
 うろうろうろうろ。


 ……落ち着かん。


 いやいや、何をソワソワする必要がある俺よ。俺は童貞ではない。立派な大人だ。どしーんと構えて待っていればいい。そう、俺は男であり生息子ではない。エリオラへの罪悪感がちょっとないわけではないが、エリオラもこの関係を了承済み。うん、問題ない。問題ないよな。問題ないはず。だから男としてずっしりと構え──。


「タナト、いい?」


「ひゃいっ!?」


 あばばばばばばば来たああああああっ。


 部屋の扉が開き、ミケが頭だけひょこっと出す。風呂上がりなのか、それだけでミケの匂いがベッドにまで漂ってきた。


「えへへ……来ちゃいました」


「お……おぅ……」


 くそっ、可愛いかよ!


 ミケがそっと扉の隙間から入ってくる、と……。


「え……そ、その格好……!?」


 レースがふんだんにあしらわれた赤いランジェリーで、全体的に凄く透け透けな感じ。セクシーさとエロスを兼ねた、男心を抉るような格好だ。


「ど、どうかしら……? あの時買ったやつなんだけど……」


 あの時……? ……あ、ああっ、王都で買ったあの時のランジェリーか!


「あの時は趣味なんて言っちゃったけど……本当は、タナトに見てもらいたくて買ったの……どう……?」


「え、と……その……か、可愛い……よ……」


「むっ。こっち見て言って」


 可愛すぎて直視出来ないんだよ、察してよ……!


 ミケは恥ずかしそうに、でも覚悟を決めたように俺に近付いてくると、俺をベッドに押し倒した。


「み、ミケ……?」


「エリオラちゃんに聞いたわ。タナトの……あ、あそこ、は……腕並みだって……」


 個人情報プライバシー漏洩!?


「だから、ね。その……い、痛みを快楽に変える魔法をエリオラちゃんに掛けてもらったから……タナト、遠慮しないで……来て……」


 プツンッ。俺の中で何かが切れた。


「ミケ!」


「ぁ……」


 ……………………。

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