外れスキル【釣り】を極限にまで極めた結果 〜《神器》も美少女も釣れるようになったけどスローライフはやめません。〜
第15話 お前が犯した罪を
「……催眠の魔女、レスオン……」
レスオンの前に佇むマイヤ。
俺からはマイヤの顔は見えない。今あいつは、全ての元凶の前に何を思うのか。
「むーっ! むーーーっ!」
「黙れ屑。うるさい」
「むがっ!?」
うぉぅ……イヴァロンが思い切りビンタした。痛そう。
マイヤはそんなレスオンの額に指を付けると、そこから鈍色のモヤのようなものが浮かび上がり、少しずつ形作って……弾丸のようなものになった。その数全部で十発。
「私のスキル【魔弾】は、様々な効果の弾を創り出すスキルです。一発で砲弾のような威力を持つ弾。撃つと怪我や病気を治癒する弾。撃った敵を捕縛する弾。魔法を再現する弾。そして今創ったこの弾は──記憶を追想する弾」
……記憶を、追想する弾?
手に持っていた銃に弾丸を込め、銃身をゆっくりと、愛でるように撫でる。
「この弾は、お前が追い詰めてきた人達の憎しみや恨みの念が込められています。元になっているのはお前の記憶。一つ一つの憎しみはお前にとってはそよ風でしょうけど……そのストレスは、確実にお前の体に蓄積している」
……そうか。こいつは今まで数十万、数百万の憎しみを作り出してきた。一人一人はこいつにとっておもちゃでしかない。受けて来た視線は快楽でしかない。だけど……今この弾丸には、その全てが凝縮されている。
その数も、規模も……計り知れない。
「一発に、お前が受けて来た憎しみの感情が全て入っています。数は全部で十発。つまり……お前にはこれから、数万の憎しみの十倍を、一瞬のうちに受けてもらいます」
「っ!? むーーーっ! んむーーーっ!!」
「さあ、一発目です」
銃口を額に付け──引き金を引く。
空気を切り裂くような轟音。それと共に、レスオンの額に一瞬風穴が空き──。
◆◆◆
(……ここは……)
見渡す限りの荒れ果てた荒野。
大地は焦げ、鼻を突く臭気が空気を汚し、空は分厚い雲に覆われている。
そんな終焉のような世界にレスオンはただ一人、十字架に磔にされていた。
「……! っ! ────!」
現状を理解し声張り上げるが、口から出るのは空気が漏れるような音だけ。
(何だこれ! どうなってやがる、ふざけんじゃねぇ!)
逃げようともがいても動かない。まるで鎖……いや、何かに掴まれているような感覚……。
僅かに動く目を横にずらす、と。
(……ヒッ……!?)
十字架だと思っていたもの。それは十字架ではなかった。いや、正確には十字架の形に圧縮、変形している……人間の腕や脚、頭だった。
今にももげそうな腕。捻切れそうな首。血の涙を流す眼球の無い目。蛆虫の湧いた口。
正しく、憎悪の塊だ。
『いでェ……! いでぇよォ……!』
『なんで俺ばかりェァ!』
『ゆるざねぇ! ぜっでぇ殺し尽くす!』
『お前は生きては行けない奴だ!』
『お前は俺が殺す! 殺してやる!』
(なんだコイツら! クソッ、クソッ! ……ヒョッ……!?)
更に脚元。荒野からヘドロのように湧き出る無数の人間。その全てが腐りかけ、臓物が見え隠れしている。まさに亡者のようだ。
『あいつが……あいつがいるぞ!』
『俺が殺す!』
『いいや俺だ! 俺に殺らせろ!』
『手脚を引きちぎれ!』
『ぶち殺せェア!』
「────ッッッ!?!?!?」
亡者の手がレスオンの足に触れると──想像を絶する激痛と共に、足が引きちぎられた。
『俺にも殺らせろ!』
『こいつは俺の手で殺す!』
『ガアアァァッッッ!』
『なぜ家族を殺したァ!?』
『お前さえいなければあぁああぁぁああ!』
脚を、臓物を、腕をもがれてなお、激痛の中意識があり続ける。
(あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッ!?!?!? 痛い痛いいだい痛いイタイ痛い痛いいたぃああああああああああああああああああああああああああああ!!!!)
感覚が麻痺することのない激痛が脳を刺激し、気絶することも死ぬことも出来ない。
体の全てが亡者の手で引き裂かれ、ちぎれ、もぎ取られる。
(あぁ……でも、これで──)
──死んで解放される。
そう思っていたのに。
「────ッッッ!?」
次の瞬間には、レスオンの体は綺麗さっぱり元通り……激痛や引きちぎられた感覚は残し、ちぎられた四肢も、もがれた臓物も何事もなかったかのように元に戻ると……再度亡者達がレスオンの体に群がった。
(ヒッ──!?)
◆◆◆
──レスオンの瞳が僅かに揺れ、瞳から涙が零れ落ちた。
「マイヤ、何をしたんだ? これ死んでないよな?」
「勿論死んでいません。今こいつは、今まで弄んできた方々の憎しみにより、最悪の悪夢を見ています。例えば、こいつが殺した数百万人もの亡者がこいつに群がり、終わることのない激痛を与える、とか」
「ふーん。数百万だと、それなりに時間がかかるな……」
「ご安心を。一発の効力は一秒未満。ですが催眠の魔女の体感では恐らく数年から十数年ほどに感じているでしょう」
……数年から十数年もの間亡者が群がり続け、激痛を与え続ける、か……。それが本当なら、これこそ本当の地獄だ。
マイヤはにこりと微笑むと、レスオンの眉間に銃を突き付ける。
「催眠の魔女レスオン。弾はあと九発あります。遠慮せずに堪能していってください──お前が犯した罪を」
レスオンの前に佇むマイヤ。
俺からはマイヤの顔は見えない。今あいつは、全ての元凶の前に何を思うのか。
「むーっ! むーーーっ!」
「黙れ屑。うるさい」
「むがっ!?」
うぉぅ……イヴァロンが思い切りビンタした。痛そう。
マイヤはそんなレスオンの額に指を付けると、そこから鈍色のモヤのようなものが浮かび上がり、少しずつ形作って……弾丸のようなものになった。その数全部で十発。
「私のスキル【魔弾】は、様々な効果の弾を創り出すスキルです。一発で砲弾のような威力を持つ弾。撃つと怪我や病気を治癒する弾。撃った敵を捕縛する弾。魔法を再現する弾。そして今創ったこの弾は──記憶を追想する弾」
……記憶を、追想する弾?
手に持っていた銃に弾丸を込め、銃身をゆっくりと、愛でるように撫でる。
「この弾は、お前が追い詰めてきた人達の憎しみや恨みの念が込められています。元になっているのはお前の記憶。一つ一つの憎しみはお前にとってはそよ風でしょうけど……そのストレスは、確実にお前の体に蓄積している」
……そうか。こいつは今まで数十万、数百万の憎しみを作り出してきた。一人一人はこいつにとっておもちゃでしかない。受けて来た視線は快楽でしかない。だけど……今この弾丸には、その全てが凝縮されている。
その数も、規模も……計り知れない。
「一発に、お前が受けて来た憎しみの感情が全て入っています。数は全部で十発。つまり……お前にはこれから、数万の憎しみの十倍を、一瞬のうちに受けてもらいます」
「っ!? むーーーっ! んむーーーっ!!」
「さあ、一発目です」
銃口を額に付け──引き金を引く。
空気を切り裂くような轟音。それと共に、レスオンの額に一瞬風穴が空き──。
◆◆◆
(……ここは……)
見渡す限りの荒れ果てた荒野。
大地は焦げ、鼻を突く臭気が空気を汚し、空は分厚い雲に覆われている。
そんな終焉のような世界にレスオンはただ一人、十字架に磔にされていた。
「……! っ! ────!」
現状を理解し声張り上げるが、口から出るのは空気が漏れるような音だけ。
(何だこれ! どうなってやがる、ふざけんじゃねぇ!)
逃げようともがいても動かない。まるで鎖……いや、何かに掴まれているような感覚……。
僅かに動く目を横にずらす、と。
(……ヒッ……!?)
十字架だと思っていたもの。それは十字架ではなかった。いや、正確には十字架の形に圧縮、変形している……人間の腕や脚、頭だった。
今にももげそうな腕。捻切れそうな首。血の涙を流す眼球の無い目。蛆虫の湧いた口。
正しく、憎悪の塊だ。
『いでェ……! いでぇよォ……!』
『なんで俺ばかりェァ!』
『ゆるざねぇ! ぜっでぇ殺し尽くす!』
『お前は生きては行けない奴だ!』
『お前は俺が殺す! 殺してやる!』
(なんだコイツら! クソッ、クソッ! ……ヒョッ……!?)
更に脚元。荒野からヘドロのように湧き出る無数の人間。その全てが腐りかけ、臓物が見え隠れしている。まさに亡者のようだ。
『あいつが……あいつがいるぞ!』
『俺が殺す!』
『いいや俺だ! 俺に殺らせろ!』
『手脚を引きちぎれ!』
『ぶち殺せェア!』
「────ッッッ!?!?!?」
亡者の手がレスオンの足に触れると──想像を絶する激痛と共に、足が引きちぎられた。
『俺にも殺らせろ!』
『こいつは俺の手で殺す!』
『ガアアァァッッッ!』
『なぜ家族を殺したァ!?』
『お前さえいなければあぁああぁぁああ!』
脚を、臓物を、腕をもがれてなお、激痛の中意識があり続ける。
(あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッ!?!?!? 痛い痛いいだい痛いイタイ痛い痛いいたぃああああああああああああああああああああああああああああ!!!!)
感覚が麻痺することのない激痛が脳を刺激し、気絶することも死ぬことも出来ない。
体の全てが亡者の手で引き裂かれ、ちぎれ、もぎ取られる。
(あぁ……でも、これで──)
──死んで解放される。
そう思っていたのに。
「────ッッッ!?」
次の瞬間には、レスオンの体は綺麗さっぱり元通り……激痛や引きちぎられた感覚は残し、ちぎられた四肢も、もがれた臓物も何事もなかったかのように元に戻ると……再度亡者達がレスオンの体に群がった。
(ヒッ──!?)
◆◆◆
──レスオンの瞳が僅かに揺れ、瞳から涙が零れ落ちた。
「マイヤ、何をしたんだ? これ死んでないよな?」
「勿論死んでいません。今こいつは、今まで弄んできた方々の憎しみにより、最悪の悪夢を見ています。例えば、こいつが殺した数百万人もの亡者がこいつに群がり、終わることのない激痛を与える、とか」
「ふーん。数百万だと、それなりに時間がかかるな……」
「ご安心を。一発の効力は一秒未満。ですが催眠の魔女の体感では恐らく数年から十数年ほどに感じているでしょう」
……数年から十数年もの間亡者が群がり続け、激痛を与え続ける、か……。それが本当なら、これこそ本当の地獄だ。
マイヤはにこりと微笑むと、レスオンの眉間に銃を突き付ける。
「催眠の魔女レスオン。弾はあと九発あります。遠慮せずに堪能していってください──お前が犯した罪を」
コメント