外れスキル【釣り】を極限にまで極めた結果 〜《神器》も美少女も釣れるようになったけどスローライフはやめません。〜
第8話 歴史上最低最悪の魔族
芸術の都から白部屋に移動した俺達は、リビングでソファーに座ってさっきのことを思い出していた。
マイヤが見た夢の内容。それに本人が魔族だと考えると、やっぱり……。
「……どう思う?」
問うと、重い口をミケが開いた。
「……私は、夢なんかじゃないと思うわ。魔弾天様が見たのは夢じゃなく……恐らく、転生前の魔族としての記憶だと思う」
「だよなぁ……」
口振りからして、本人にその自覚はないみたいだ。
魔族の転生体でも、ロゥリエのように完全に記憶を持つ奴や、シャウナのように記憶を持たない奴がいる。今回は後者だ。
ただ、あんな胸糞悪い夢を何度も見る……魔族の本能か直感が、何かを感じ取ってるのかもな。
「それで魔族っ娘三人衆。【催眠】のスキルを使う魔族に心当たりは?」
「ある」
「あるのだわ」
「嫌というほどにな」
ワォ、三人揃って嫌悪の顔。
「催眠の魔女は混沌と破滅勢の魔族なのだわ。性格の悪さで言えば、ロゥリエを遥かに凌ぐのだわ」
ロゥリエ以上って、それもう性格破綻者じゃん……。
「混沌と破滅勢ってことは、イライザとイヴァロンの仲間ってことか?」
「お兄ちゃん、流石にそれはお兄ちゃんでも許せない発言なのだわ」
「奴と余らを同じにするな。虫唾が走る」
二人は本当に嫌なのか、眉間に皺を寄せていやーな顔をする。なんだ? 混沌と破滅勢なら同じなんじゃ……?
そのことを聞くと、イヴァロンが首を横に振った。
「否だ。奴と余らは全く相容れない。余は魔王軍を率い、人類の進化を目的としていた。イライザはエリオラを超えんとし混沌と破滅勢に組みしていたが、イタズラに人を殺さず、世界を壊そうとはしていない」
次に、イライザが口を開いた。
「ただ、あいつは違うのだわ。混沌と破滅勢にいながら、ロゥリエと同じフリーの魔族として動いていた。その理由は……命を弄ぶこと」
……は? 命を……弄ぶ……?
余りにも現実離れした話に唖然としていると、エリオラが話を引き継いだ。
「奴は何も目的としていない。幸せそうだから殺す。辛そうだから殺す。優しそうだから殺す。腹黒そうだから殺す。笑顔だから殺す。泣いてるから殺す。顔が綺麗だから殺す。醜いから殺す。子供だから殺す。大人だから殺す。女だから殺す。男だから殺す。貧乏だから殺す。お金持ちだから殺す。ご飯を食べてるから殺す。お腹を空かしてるから殺す。嬉しそうだから殺す。苦しんでいるから殺す。晴れてるから殺す。雨だから殺す。元気だから殺す。疲れたから殺す。気分がいいから殺す。不機嫌だから殺す。計画的に殺す。気が向いたら殺す。……そんな奴」
「えぇ……何だその猟奇的殺人犯みたいなやつは……」
ロゥリエはどちらかと言うと都市の破壊を目的とし、そこから絶望を振り撒いていた。
ただ催眠の魔女は違う。ただ殺したいから殺す、快楽殺人鬼だ。完全に狂ってやがる。
胸糞の悪さを感じていると、イヴァロンが鼻を鳴らして続きを口にした。
「しかも奴は、ただ人を殺すのではない。辱め、絶望させ、心を壊し、殺す。奴の異常性は、その満たされることの無い狂気から来ているのだ」
……確かにマイヤの口振りからすると……マイヤの転生前の魔族も、相当辱めを受けたようだ。その様子はありありと想像出来る。
そんな時、ふとマイヤの顔が浮かんだ。
今日俺をからかっていた笑顔……でもあれは、本当は無理をして作っていたじゃないか? 本当は、もっと素直に助けを求めたかったんじゃ……。
……助け、か……どうするかなぁ……。
天井を仰いでマイヤのことを思う。
彼女が本当にそれを望んでいるのかは分からない。でも間違いなくあの表情は……助けを求めている人の顔だった。
お節介なのは重々承知している。十極天のプライドがそれを許さないのも何となく理解出来る。
でっていう。
マイヤが望んでいようがいまいが、あんな顔を見せられて黙ってたんじゃ男が廃るってもんですよ、ええ。
ミケも同じことを思ったのか、怒りが滲んだ顔で口を開いた。
「ねぇ、そのゲス野郎の名前とか分からないの?」
「……転生体なら分からない。けど、当時の名前なら分かる。そしてそいつの顔も」
エリオラは自身のこめかみに指を押し当てると、そこから白いモヤのようなものが漂い、一人の魔族の形を作り出した。
見た目年齢は十三歳くらいか。エリオラより小さい。
まるで頭から血を被ったかのような不自然な色合いの髪。
口元は閉じられているが、人を嘲笑うかのような笑みが特徴的だ。
「奴の名前はレスオン・アノマリア。【催眠】のスキルを極めた、催眠の魔女──歴史上最低最悪の魔族」
【作者からのお願い】
ここまで読んでくださいましてありがとうございます。
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よろしくお願いします。
マイヤが見た夢の内容。それに本人が魔族だと考えると、やっぱり……。
「……どう思う?」
問うと、重い口をミケが開いた。
「……私は、夢なんかじゃないと思うわ。魔弾天様が見たのは夢じゃなく……恐らく、転生前の魔族としての記憶だと思う」
「だよなぁ……」
口振りからして、本人にその自覚はないみたいだ。
魔族の転生体でも、ロゥリエのように完全に記憶を持つ奴や、シャウナのように記憶を持たない奴がいる。今回は後者だ。
ただ、あんな胸糞悪い夢を何度も見る……魔族の本能か直感が、何かを感じ取ってるのかもな。
「それで魔族っ娘三人衆。【催眠】のスキルを使う魔族に心当たりは?」
「ある」
「あるのだわ」
「嫌というほどにな」
ワォ、三人揃って嫌悪の顔。
「催眠の魔女は混沌と破滅勢の魔族なのだわ。性格の悪さで言えば、ロゥリエを遥かに凌ぐのだわ」
ロゥリエ以上って、それもう性格破綻者じゃん……。
「混沌と破滅勢ってことは、イライザとイヴァロンの仲間ってことか?」
「お兄ちゃん、流石にそれはお兄ちゃんでも許せない発言なのだわ」
「奴と余らを同じにするな。虫唾が走る」
二人は本当に嫌なのか、眉間に皺を寄せていやーな顔をする。なんだ? 混沌と破滅勢なら同じなんじゃ……?
そのことを聞くと、イヴァロンが首を横に振った。
「否だ。奴と余らは全く相容れない。余は魔王軍を率い、人類の進化を目的としていた。イライザはエリオラを超えんとし混沌と破滅勢に組みしていたが、イタズラに人を殺さず、世界を壊そうとはしていない」
次に、イライザが口を開いた。
「ただ、あいつは違うのだわ。混沌と破滅勢にいながら、ロゥリエと同じフリーの魔族として動いていた。その理由は……命を弄ぶこと」
……は? 命を……弄ぶ……?
余りにも現実離れした話に唖然としていると、エリオラが話を引き継いだ。
「奴は何も目的としていない。幸せそうだから殺す。辛そうだから殺す。優しそうだから殺す。腹黒そうだから殺す。笑顔だから殺す。泣いてるから殺す。顔が綺麗だから殺す。醜いから殺す。子供だから殺す。大人だから殺す。女だから殺す。男だから殺す。貧乏だから殺す。お金持ちだから殺す。ご飯を食べてるから殺す。お腹を空かしてるから殺す。嬉しそうだから殺す。苦しんでいるから殺す。晴れてるから殺す。雨だから殺す。元気だから殺す。疲れたから殺す。気分がいいから殺す。不機嫌だから殺す。計画的に殺す。気が向いたら殺す。……そんな奴」
「えぇ……何だその猟奇的殺人犯みたいなやつは……」
ロゥリエはどちらかと言うと都市の破壊を目的とし、そこから絶望を振り撒いていた。
ただ催眠の魔女は違う。ただ殺したいから殺す、快楽殺人鬼だ。完全に狂ってやがる。
胸糞の悪さを感じていると、イヴァロンが鼻を鳴らして続きを口にした。
「しかも奴は、ただ人を殺すのではない。辱め、絶望させ、心を壊し、殺す。奴の異常性は、その満たされることの無い狂気から来ているのだ」
……確かにマイヤの口振りからすると……マイヤの転生前の魔族も、相当辱めを受けたようだ。その様子はありありと想像出来る。
そんな時、ふとマイヤの顔が浮かんだ。
今日俺をからかっていた笑顔……でもあれは、本当は無理をして作っていたじゃないか? 本当は、もっと素直に助けを求めたかったんじゃ……。
……助け、か……どうするかなぁ……。
天井を仰いでマイヤのことを思う。
彼女が本当にそれを望んでいるのかは分からない。でも間違いなくあの表情は……助けを求めている人の顔だった。
お節介なのは重々承知している。十極天のプライドがそれを許さないのも何となく理解出来る。
でっていう。
マイヤが望んでいようがいまいが、あんな顔を見せられて黙ってたんじゃ男が廃るってもんですよ、ええ。
ミケも同じことを思ったのか、怒りが滲んだ顔で口を開いた。
「ねぇ、そのゲス野郎の名前とか分からないの?」
「……転生体なら分からない。けど、当時の名前なら分かる。そしてそいつの顔も」
エリオラは自身のこめかみに指を押し当てると、そこから白いモヤのようなものが漂い、一人の魔族の形を作り出した。
見た目年齢は十三歳くらいか。エリオラより小さい。
まるで頭から血を被ったかのような不自然な色合いの髪。
口元は閉じられているが、人を嘲笑うかのような笑みが特徴的だ。
「奴の名前はレスオン・アノマリア。【催眠】のスキルを極めた、催眠の魔女──歴史上最低最悪の魔族」
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