外れスキル【釣り】を極限にまで極めた結果 〜《神器》も美少女も釣れるようになったけどスローライフはやめません。〜
第6話 私の深淵を覗きなさい
場所を移動して、俺達はアート喫茶なる場所にやって来ていた。
外観から内装に至るまで、椅子もテーブルも全てが何らかの芸術品で埋め尽くされている。正直ちょっと居心地が悪い。ここまでゴテゴテだとなんか嫌だなぁ。
そんなアート喫茶の個室にて、俺達は注文したケーキに舌鼓を打つ。うん、美味い。頬や下が蕩けそうな美味さだ。
俺以外の四人も、みんな幸せそうな顔でケーキを頬張っている。
「お気に召しました?」
「え? あ、はあ、まあ……」
「それはよかった。ここ、私のお気に入りのお店なんです。ここは私が持ちますので、思う存分食べてください」
はあ、さいですか……? ……で、この人結局何がしたいんだ? さっきからアイスコーヒー飲んでるだけだし。
魔弾天はアイスコーヒーを半分だけ飲んだところで、そっと息をついて俺とエリオラを舐め回すように見てきた。
「あなたと、それにそこの彼女は、十極天会合にいましたね。確か執事服とメイド服を着て」
……まあ、いたことには変わりないんだ。今更隠し立てしても無駄か。
「ああ。俺はタナト。で、そっちはエリオラだ」
「ぶい、よろしく」
フォークを片手にブイサインをするエリオラ。魔弾天もノリノリなのか、ブイサインで返した。
「ええ、よろしくお願いします。……それにしても、エリオラさん、でしたか。何故でしょう、懐かしい感じがしますね」
「? 私は知らない。会合で見たことあるだけ」
「そうですか? なら、勘違いかもしれないです」
先にもミケが言っていたが、この人は魔族らしい。エリオラを懐かしいと思うってことは、多分三〇〇〇年前の魔族の転生体なんだろうな。エリオラは当時の有名人。この人が一方的に知っていてもおかしくはない。
魔弾天はグラスを置くと、改めて背筋を伸ばして口を開いた。
「自己紹介が遅れました。私の名はマイヤ・リーベ。十極天の座を任されております。実は町でタナトさんをお見掛けし、こうしてお話がしたいと思い場を設けさせて頂きました。よろしくお願い致します」
魔弾天……マイヤはうやうやしく腰を折り、俺も吊られて頭を下げてしまった。何か、想像したより物腰の柔らかいいい人だな。
「話したいこと、って何だ? 俺とあんたの接点なんて、会合でほんの少しだけ絡んだ程度だろ?」
「はい。ですが他の十極天も感じていました。あなたには私達に近い何かがあると。私もあれから気にしてはいたのですが……こうして出会ったのです。あなたのこと、よく教えてくださいな」
え、よく教えて、て……。
「……俺のことを知ってどうするつもりだ? 特に面白エピソードも持ってない、しがない釣り人なんだが」
実際は女の子を物理的に釣ったり異界で遭難したり魔王を釣ったり王女から崇拝されたりと、割とガチで面白エピソードの宝庫なんだが……どれもこれも言えないエピソードなのでここでは言わない。
すると、マイヤはコロコロと鈴を鳴らしたように笑い、今度はどことなく優し気な目で見てきた。
「ふふふ。警戒なさらないでください。別に取って食おうと考えている訳ではありません。ただ、私達と同じ気配を持つあなたに興味を持っているだけです」
「……因みにだが、その似たような気配ってのはどんなんだ?」
「似たようなものは似たようなものです。例えばかなりの修羅場を潜り抜けたり、例えば死闘の末に強敵を屠ったり」
ふえぇ……俺にそんな熱血バトルエピソードはないよぅ……。
どうしたもんかと若干天井を仰ぎ見ると、マイヤは僅かに口角を上げ。
「例えば――スキルレベルを極めたり」
……ぇ……。
僅かに反応した俺。それを目敏く感知したのか、マイヤは人の悪い笑みを浮かべた。
「ふふ。隠し事が下手ですね、タナトさんは」
「い、いいいいい言っておくが、俺に手を出そうとするとこいつらが黙ってないぞ……!」
俺の言葉に、四人が僅かに戦闘態勢になる。
だがマイヤは呆れたように目を細めて、グラスを手に持った。
「何ですか、その三下みたいなセリフ……そんな真似しませんって。私はあなたとお話がしたい。ただそれだけなんです」
「……本当か? 信じていいんだな?」
「ええ。私の愛銃に誓って」
それがどれだけ価値があるものなのかは分からないが……まあ、信じてみるか。
「じゃ、改めて話す前に、他の二人も紹介させてもらっていいか?」
「ええ、勿論」
えっと、じゃあ……。
「こっちのロリっ子はイブ。種族は見ての通り魔族だ」
簡単に偽名で紹介すると、イヴァロンは天真爛漫な笑みでない胸を張った。
「イブなのだ! ……ってタナト! 余のことをロリっ子と紹介するでない! 本当の余はえちえちでボンッキュッボンなのだぁ!」
ええい、じたばたするなロリっ子。
「ふふ。分かるわ、その気持ち。私も小さい頃は、もっとグラマーになりたいって思っていたもの」
「うがー! 違うのだ! 違うのだー!」
うーん、完全に子ども扱い。まあ、こいつも本来の力じゃないらしいから、こいつが魔王イヴァロンとは思いもよらないだろうな。
「で、こっちがイライザ。こっちも魔族だ」
「イライザなのだわ!」
「ええ、よろしくお願いします、イライ……ザ……え、待って。今なんて言った?」
「イライザなのだわ!」
ビシッ――。あ、固まった。
「……は、はは……駄目よ、そんな冗談を言っては。確かに国王様はイライザ様が復活したと仰っていたけど……」
「嘘じゃないのだわ、マイヤ」
マイヤの言葉を遮り、イライザがじっとマイヤの目を見つめる。
「マイヤ。あなたなら出来るのだわ。――もっと眼を凝らして、私の深淵を覗きなさい」
「…………ッ……ッッッ!? こ、この底知れない力……ぇ……ぇぇ……?」
マイヤには何かが見えたのか、目を大きく見開いてがくがくと体を震わした。
「信じてくれたかしら? 信じてくれたのなら、私がここにいることは黙っていてほしいのだわ」
唇に人差し指を当ててしーっというジェスチャーをするイライザ。マイヤも、 コクコクコクコクと全力で首を縦に振った。
どうやら、マイヤは魔族にしか分からない何かを感じ取ったらしい。でも信じてくれたならそれでいいや。
「あ、因みにエリオラは私のお姉ちゃんなのだわ」
「ぶい」
「…………」
ぱたり。あ、気絶した。
……どうしよう、これ?
外観から内装に至るまで、椅子もテーブルも全てが何らかの芸術品で埋め尽くされている。正直ちょっと居心地が悪い。ここまでゴテゴテだとなんか嫌だなぁ。
そんなアート喫茶の個室にて、俺達は注文したケーキに舌鼓を打つ。うん、美味い。頬や下が蕩けそうな美味さだ。
俺以外の四人も、みんな幸せそうな顔でケーキを頬張っている。
「お気に召しました?」
「え? あ、はあ、まあ……」
「それはよかった。ここ、私のお気に入りのお店なんです。ここは私が持ちますので、思う存分食べてください」
はあ、さいですか……? ……で、この人結局何がしたいんだ? さっきからアイスコーヒー飲んでるだけだし。
魔弾天はアイスコーヒーを半分だけ飲んだところで、そっと息をついて俺とエリオラを舐め回すように見てきた。
「あなたと、それにそこの彼女は、十極天会合にいましたね。確か執事服とメイド服を着て」
……まあ、いたことには変わりないんだ。今更隠し立てしても無駄か。
「ああ。俺はタナト。で、そっちはエリオラだ」
「ぶい、よろしく」
フォークを片手にブイサインをするエリオラ。魔弾天もノリノリなのか、ブイサインで返した。
「ええ、よろしくお願いします。……それにしても、エリオラさん、でしたか。何故でしょう、懐かしい感じがしますね」
「? 私は知らない。会合で見たことあるだけ」
「そうですか? なら、勘違いかもしれないです」
先にもミケが言っていたが、この人は魔族らしい。エリオラを懐かしいと思うってことは、多分三〇〇〇年前の魔族の転生体なんだろうな。エリオラは当時の有名人。この人が一方的に知っていてもおかしくはない。
魔弾天はグラスを置くと、改めて背筋を伸ばして口を開いた。
「自己紹介が遅れました。私の名はマイヤ・リーベ。十極天の座を任されております。実は町でタナトさんをお見掛けし、こうしてお話がしたいと思い場を設けさせて頂きました。よろしくお願い致します」
魔弾天……マイヤはうやうやしく腰を折り、俺も吊られて頭を下げてしまった。何か、想像したより物腰の柔らかいいい人だな。
「話したいこと、って何だ? 俺とあんたの接点なんて、会合でほんの少しだけ絡んだ程度だろ?」
「はい。ですが他の十極天も感じていました。あなたには私達に近い何かがあると。私もあれから気にしてはいたのですが……こうして出会ったのです。あなたのこと、よく教えてくださいな」
え、よく教えて、て……。
「……俺のことを知ってどうするつもりだ? 特に面白エピソードも持ってない、しがない釣り人なんだが」
実際は女の子を物理的に釣ったり異界で遭難したり魔王を釣ったり王女から崇拝されたりと、割とガチで面白エピソードの宝庫なんだが……どれもこれも言えないエピソードなのでここでは言わない。
すると、マイヤはコロコロと鈴を鳴らしたように笑い、今度はどことなく優し気な目で見てきた。
「ふふふ。警戒なさらないでください。別に取って食おうと考えている訳ではありません。ただ、私達と同じ気配を持つあなたに興味を持っているだけです」
「……因みにだが、その似たような気配ってのはどんなんだ?」
「似たようなものは似たようなものです。例えばかなりの修羅場を潜り抜けたり、例えば死闘の末に強敵を屠ったり」
ふえぇ……俺にそんな熱血バトルエピソードはないよぅ……。
どうしたもんかと若干天井を仰ぎ見ると、マイヤは僅かに口角を上げ。
「例えば――スキルレベルを極めたり」
……ぇ……。
僅かに反応した俺。それを目敏く感知したのか、マイヤは人の悪い笑みを浮かべた。
「ふふ。隠し事が下手ですね、タナトさんは」
「い、いいいいい言っておくが、俺に手を出そうとするとこいつらが黙ってないぞ……!」
俺の言葉に、四人が僅かに戦闘態勢になる。
だがマイヤは呆れたように目を細めて、グラスを手に持った。
「何ですか、その三下みたいなセリフ……そんな真似しませんって。私はあなたとお話がしたい。ただそれだけなんです」
「……本当か? 信じていいんだな?」
「ええ。私の愛銃に誓って」
それがどれだけ価値があるものなのかは分からないが……まあ、信じてみるか。
「じゃ、改めて話す前に、他の二人も紹介させてもらっていいか?」
「ええ、勿論」
えっと、じゃあ……。
「こっちのロリっ子はイブ。種族は見ての通り魔族だ」
簡単に偽名で紹介すると、イヴァロンは天真爛漫な笑みでない胸を張った。
「イブなのだ! ……ってタナト! 余のことをロリっ子と紹介するでない! 本当の余はえちえちでボンッキュッボンなのだぁ!」
ええい、じたばたするなロリっ子。
「ふふ。分かるわ、その気持ち。私も小さい頃は、もっとグラマーになりたいって思っていたもの」
「うがー! 違うのだ! 違うのだー!」
うーん、完全に子ども扱い。まあ、こいつも本来の力じゃないらしいから、こいつが魔王イヴァロンとは思いもよらないだろうな。
「で、こっちがイライザ。こっちも魔族だ」
「イライザなのだわ!」
「ええ、よろしくお願いします、イライ……ザ……え、待って。今なんて言った?」
「イライザなのだわ!」
ビシッ――。あ、固まった。
「……は、はは……駄目よ、そんな冗談を言っては。確かに国王様はイライザ様が復活したと仰っていたけど……」
「嘘じゃないのだわ、マイヤ」
マイヤの言葉を遮り、イライザがじっとマイヤの目を見つめる。
「マイヤ。あなたなら出来るのだわ。――もっと眼を凝らして、私の深淵を覗きなさい」
「…………ッ……ッッッ!? こ、この底知れない力……ぇ……ぇぇ……?」
マイヤには何かが見えたのか、目を大きく見開いてがくがくと体を震わした。
「信じてくれたかしら? 信じてくれたのなら、私がここにいることは黙っていてほしいのだわ」
唇に人差し指を当ててしーっというジェスチャーをするイライザ。マイヤも、 コクコクコクコクと全力で首を縦に振った。
どうやら、マイヤは魔族にしか分からない何かを感じ取ったらしい。でも信じてくれたならそれでいいや。
「あ、因みにエリオラは私のお姉ちゃんなのだわ」
「ぶい」
「…………」
ぱたり。あ、気絶した。
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