外れスキル【釣り】を極限にまで極めた結果 〜《神器》も美少女も釣れるようになったけどスローライフはやめません。〜

赤金武蔵

第14話 ……天雷……エリオラ……

 大広間に戻ったシャウナが手を貸して貰えなかったことを正直に話すと、十極天と国王陛下は激昂した。


 特に聖王天と国王陛下。シャウナの頼みをやら、何様のつもりだやら、とにかく怖い。超怖い。


 顔を真っ赤にしている国王陛下は額に青筋を走らせ、極めて柔らかな口調でシャウナに話しかける。


「しゃ、シャウナよ、その者をここに呼び出すことは可能か? 直に話がしたい。そして懇意がどうとかの真意を聞きたい。むしろ聞きたい」


「それは出来ません。それに懇意は懇意です」


 ちょっと待て!? 懇意は懇意ですとか言っちゃうと、シャウナに親しい人がいるって意味に捉えられちゃうから!?


 それに国王陛下、まさかとは思うけど懇意のことが聞きたい方が本命っすか!?


 国王陛下の言葉に驚愕してると、今度は聖王天が口を開いた。


「けっ。世界の命運が掛かってるときに姿を現さない奴なんていらねーぜ。どうせ腰抜けに決まってらぁ」


 はいはいそうですね、超腰抜けですとも、ええそうですとも。


 でもそれシャウナの前で言うと……。






「あぁ? 今なんつったテメェ……?」






「「「「「…………………………え?」」」」」


 ほらぁ……ほらこうなるぅ……。


 睨みを効かせた三白眼。地で怒髪天を衝く髪。怒気により揺らめく背景。シャウナの足元から溢れ出る銀色の水。


 国王陛下と聖王天が戯れに放った圧よりも濃く、粘り気がある。


 これが……これが水銀の魔女、シャウナの力か。


 この場にいる全員がシャウナの豹変っぷりに動揺していると、国王陛下が震える声でシャウナに話し掛けた。


「しゃ、シャウナ。どうしたというのだ……?」


「あ……こほん。失礼致しました、聖王天様。……ですがその方は私の大切なお方。余り無礼なお言葉は慎んで下さい」


「ぐっ……さーせん……」


「ま、待てシャウナ。た、たい、たいせ……!?」


「では会合を続けましょう」


 あ、無理やり話を変えやがった。


 その後、ふわふわとした国王陛下が場を締められず会合は続けられた。


 と言っても、まともなアイディアが出るはずもなく……この日決まったのは、各人異界へのアクセスの仕方を調べることで終わり──。






 それから三日間。合計五日も会合を重ねても満足のいく成果は得られず。


 大広間はギスギスした空気に支配されていた。


 あーかえりたい、おうちかえりたいでござる。つりしたい。


「ちょっとイイかしら」


 そんな中、魔弾天が手を挙げて立ち上がった。


「正直、こんな所でうだうだ話し合っている時間は無駄だと思うの。現状何も手掛かりがないなら、私達は世界中に散らばって魔王イヴァロンが復活する兆候に目を配る。その間に、異界へ行く方法を模索する。どうかしら?」


「そっちの方がいいかも。僕も【予知夢】でもっと復活のこととかみたいかも」


「うむ、わしは大都市に結界を張って回る」


「私ももう一度【確率】で調べてみようかしらねぇ」


 次々と賛成意見が出る。これはもう、終わりかな?


「……では、十極天会合を一時中断する。一週間おきに各自定期連絡をすること。その情報は、ミネルヴァ家を通じて世界中の国家へ連携する。よいな」


「「「「「はっ」」」」」


 ……はぁ……終わった……んだよな? 長い会合だったぁ。ほとんど無駄に終わったけど。


 全員が大広間を出ていくのを頭を下げて見送る。


 すると。


「…………」


 ……炎極天?


 エリオラの前に立つ炎極天。エリオラも、真っ直ぐと炎極天の視線を受け止める。


 …………。


 ……何、この沈黙?


 二人の間の異様な沈黙に耐えかねていると……炎極天の口が僅かに開いた。






「……天雷……エリオラ……」






 ──ぇ……?


 い、今、間違いなく天雷って……!?


「ん、お久」


「……いつ、帰ってきてた……?」


「ちょっと前」


「……そう……よかった……」


 ……何、この独特の空気……?


「エリオラ、知り合いだったのか?」


「ん。正確には、彼は転生体。三〇〇〇年前の魔族」


『魂の色が当時と同じじゃ。元気にしてたかい、エン坊』


「……ルーシーも……元気そう……」


 ぽつりぽつりと話す炎極天。さっきまで無口で暗そうな感じだったのに、今はどことなく嬉しそうな雰囲気だ。


 まあそれもそうか。同じ三〇〇〇年前の混沌と破滅の時代を生きたんだ。嬉しくないはずがないか。


「エンリ、紹介する。彼はタナト。人間族」


「あー……ども、タナトっす」


「……エンリ。よろしく……タナト、くん……?」


 炎極天エンリの手を握ると、異様なまでに高い体温だ。【炎極】のスキルを極めた十極天だからなのかもしれないが……それにしても異常だ。


「タナト、彼はエンリ。魔族」


「……エンリ、です……エリオラの……パートナー……? 相棒……? それとも……」


 こてん、こてんと首を傾げるエンリ。いや、俺に聞かれても……。


 だが次の瞬間、思いがけない言葉を聞き──。










「それとも……元カレ・・・……?」


 ──俺の思考は、完全に停止した。


 …………。


 ん″っ!?!?!?!?!?!?

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