外れスキル【釣り】を極限にまで極めた結果 〜《神器》も美少女も釣れるようになったけどスローライフはやめません。〜

赤金武蔵

第13話 俺、また何かやっちゃいました?

「シクシクシクシク……」


 おいおい泣くなよ……。


 椅子の上で三角座りをして、さめざめと泣くシャウナ。


「うぅ……一世一代のお願いを断られてしまいました……」


「お前、普段からあんなお願いしてんの……? 王女としてどうなのそれ……」


「し、してません! 今が初めてです!」


 ……こいつ、そこまでして装備やアイテムか欲しいのか……俺も大概だが、この人もやべーな……。


「うぅ……もう私の切れるカードは残っていないのです……」


 あぁ……こりゃガチ凹みしてるな……。


「……はぁ。別に見返りなんていらないぞ」


「……ふぇ? い、今なんと……?」


「だから、俺に対して見返りはいらない。俺からしたら、伝説級の装備もその辺の量産品も全部同じガラクタだ。欲しいものがあれば全然譲るから」


 まあ、優先はエミュールの店だけどな。エミュールの店に卸して、それでも余ってたらシャウナにあげればいいか。


 俺の言葉に、シャウナはアホ面で惚けている。でも美人だからか、そんな顔でも様になってる。美人は得だなぁ……。


 なんてことを考えていると、惚けていたシャウナがいきなり俺の足元に跪いた。


「お、おいシャウナ……?」


「たった今分かりました……神様は、あなたという贈り物を私にくださったのではない……あなた様が、神様なのですね」


 …………。


「は?」


 何言ってんだこいつ。頭大丈夫か?


 シャウナは手を組み、俺に尊敬の眼差しを向けて来た。


「タナト様、あぁタナト様、タナト様。なんと崇高な響きなのでしょう。何度でも呼びたくなる魅力を感じますわ……」


 いや、親が家にある棚を見て付けた適当な名前だぞ。


「タナト神様……」


「やめような、その呼び方」


 ……ん? 何か前にも似たようなことがあったような……気のせいか?


 ……って、今はそれどころじゃなくて……!


 慌てて立ち上がり、俺もシャウナの前に膝立ちになった。


「や、やめてくれシャウナ。一般村人に跪くような人じゃないだろ、あんたは」


「いいえ、あなた様は私にとって神にも等しい存在……どうか我が崇拝と忠誠をお受け取りくださいまし」


「そんなものいらん」


「ぁっ……♡」


 え、何で頬染めてんのこいつ。あとちょっと艶やかな声出してんじゃないよ。


「んっ、ふっ……♡ な、何故でしょう。今まで断られたことのない反動でしょうか……? あなた様に断られると、私の中の何かが疼くようですわ」


「俺が知るか……」


 もう、何なのこいつ……。


「と、とにかく、俺には崇拝も忠誠も対価もいらん。マジで」


 むしろ王国一と謳われる美女からそんなことされたら、俺が他の国民から刺されかねない。俺、まだ長生きしてたいんで。


「ですが、貰ってばかりで何も返せないと、我がミネルヴァ家の名に傷が……」


 ……この人、思ったより強情だな……。


 うーん……あ、そうだ。


「それなら」


「はい何でしょう!?」


 反応早っ! 餌の前でずっと待たされてた犬かこいつ……。


「お、俺のことはいい。その代わり、エミュールの店を手伝って欲しいんだ」


「エミュちゃんの、ですか?」


 キョトンとするシャウナを横目に、店の中を見渡す。


「ああ。俺達は今世界中を旅してるんだが、今のままエミュールを放って旅に出ると心配なんだ。またいつ潰れるか分からないからな。その点、シャウナを先頭に国がエミュールの店を手伝ってくれれば、俺達も心配しなくて済むんだが……」


 そろそろ出発してエリオラ達の相手をしないと貞操が危ない。主に俺の。


「え……そんなことでいいんですか?」


「ああ。俺が今一番して欲しいことがそれだ」


「……愛されてるんですね、エミュちゃんは……」


「そんなんじゃない。俺とあいつは似てるから、放っておけないだけだ」


 それに俺達もせっかくここまで頑張ったんだ。ここで水の泡にされちゃ、俺達も立つ瀬がない。


「……ふふ。分かりました。その願い、このシャウナ・S・ミネルヴァが承ります」


「……ありがとな。……あ、そうだ。それならお返しに、一つアイテムをやるよ」


「本当でございますか!?」


「あ、ああ。その代わり、俺のことは誰にも言うなよ?」


「勿論でございます、勿論でございます!」


 白部屋への穴を開けて、腕だけ中に入れる。


 えーっと……ああ、これだこれだ。


「よっと。ほい、神の雫」


 親指の爪くらいの大きさしかないが、確か超が五つくらい付く激レアアイテムだったはずだ。これくらいなら渡して問題ないだろ。


「…………」


 ……ん? 固まった?


「シャウナ、どうした?」


「…………あああああああののののののっ。こここここここここれは……!?」


「神の雫だ」


「…………」


 ……また固まった。


「…………うひっ……」


 ……え?


「……うひっ、うひひひ……うへへへへへへへっ、じゅるるるっ。……うびょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


「うおっ!?」


 ど、どうした!? 狂ったか!?


 俺の目も気にせず、神の雫を持って小躍りするシャウナ。


 ……ああ、これは有名なあれか。


 はい、せーの。


「俺、また何かやっちゃいました?」

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