外れスキル【釣り】を極限にまで極めた結果 〜《神器》も美少女も釣れるようになったけどスローライフはやめません。〜

赤金武蔵

第11話 買っちゃいますどゅへへへへ

 魔族の、転生体……!?


 怪しまれないようにシャウナ様を見る。


 人間と魔族の違いは俺には分からない。でも、ああして楽しそうにしている姿は人間のように見える……。


「人間じゃないのか……?」


「体は人間、でも魂は魔族。魔族の魂が人間に宿る珍しいパターン」


 そんなことも起こるのか……でも、エリオラが会ったことあるかもってことは、少なくとも三○〇〇年以上昔の魔族ってことだ。


 混沌と破壊が跋扈ばっこした当時に、エリオラの記憶の片隅に残るほどの力を持った魔族か……。


 さっきレヴァイナスの言っていた、スキルとも魔法とも違う異能の力。それも、もしかしたら魔族時代の力が継承されてるのかもな……。


「あの人、水銀の魔女って異名があるんだが、やっぱり強いのか?」


「……確かに強い力を感じる。でも、私とイーラたん程ではない。せいぜい強い魔族程度。何かあれば、私とイーラたんで制圧出来る」


 そ、そうか……なら、もしものことがあれば二人に頼むか。


「あ! このアイテム、私が探し求めていたアイテムじゃないですか!」


「天馬の蹄ですね。そちらは在庫もあるので、定価八〇〇万ゴールドのところを、今ならなんと二〇〇万ゴールドです!」


「買います! 在庫も全て頂きます!」


「ありがとうございます!」


 ……おいあの馬鹿、一国の王女に商品売りつけてるんだが。


「ふおおおおおおおぉぉぉぉぉ! こ、これは魔人の眼!? 本物ですか!?」


「勿論です。私は装備とアイテムに関しては決して嘘をつきません」


「数百年に一度しか現れない魔人の人体の一部……! 魔法で保存されてるとは言え、それが三〇〇〇万ゴールドだなんて安すぎます……! どゅふふふふ……!」


「今なら魔人の血液も付けますよ。こちら定価一五〇〇万ゴールドですが、魔人の眼と同時購入で半額にしますっ」


「うっひょおおおおおおおおおおお!!!! 買う! 買っちゃいますどゅへへへへ」


「うひひっ、ありがとうございます~」


 ええ……この国随一の美しさを誇るシャウナ様が、ヨダレを垂らしてアイテムを買ってんだけど……しかも俺の嫌いなゲテモノシリーズ……シャウナ様の高貴で神聖なイメージが一気に瓦解したんだが……。


 てかあのエミュール、本物か? シャウナ様相手に抱き合わせで商品を売りつけてるぞ。


「レヴァイナス。いいのかあれ、止めなくて」


「うむ。シャウナ様が自分の持っていない装備やアイテムを買うときは、いつもあんな感じだからな。慣れた」


 ……慣れって怖い。


 遠目で二人を眺めていると、俺の隣にミケがやって来た。


「楽しそうね、二人とも」


「ああ、そうだな。……ミケはシャウナ様と交流はないのか?」


「少し話したことがある程度よ。激レア珍品好きとは聞いてたけど、まさかあんな変態チックな反応をするとは思わなかったわ……憧れてただけあって、ちょっとショックね」


 王国の女の子は一度はシャウナ様に憧れを抱き、男の子は恋心を抱くと言われるが……確かにこれを見たらショックだろうなぁ……。


「うへへへへへへ」


「うひひひひひひ」


 ……ぶっちゃけ俺もショックです。


   ◆◆◆


「ふわぁ……まんっっっっっぞく♡」


 休憩がてら、カフェスペースで蕩けたような、ほっこりとしたような顔をするシャウナ様。そんな姿も目が釘付けになるほど美しいが、さっきの姿を見てるだけに微妙な心境だ。


 シャウナ様の前に座らされたエミュールも、今は緊張しているように見えない。随分と打ち解けたみたいだな。


「エミュちゃんは凄いですねぇ。こんなに珍しいものをこんな低価格で売っているなんて……」


「いやいや、シャウちゃんこそ噂通りの慧眼。私もびっくりしたよ」


 おぉ……あのエミュールがシャウナ様とあだ名で呼び合ってる……しかも大分フランクだ。


「レヴァナンスに聞きましたけど、こちらの品々を揃えている方は別の方だとか。紹介してくださらない?」


「ええ。タナトさん、エリオラさん」


 げっ、俺を呼びつけるな……!


 ぐぅ……よ、呼ばれちまったもんは仕方ない……シャウナ様に触れないように注意しよう……。


 エリオラと並んでシャウナ様の前に立つと、シャウナ様は目を輝かせてエリオラの手を握った。


「まあまあまあ! あなたがエリオラ様なのですね! イライザ様のお姉様の! お噂はレヴァナンスや教主様から聞いていますわ!」


「ん。よろしくシャウナ」


 ちょ、おま……!?


「え、エリオラ、呼び捨てはまずいって……!」


「いいえタナト様。エリオラ様はこの世界を一つに纏め上げた偉大な魔女、イライザ様の姉君なのです。むしろ敬語も敬称も不要です!」


 ……まあ、シャウナ様が言うなら……。


「えっ……? エリオラさんがイライザ様のお姉さん……? でも、イーラさんがエリオラさんのことをお姉ちゃんて……あれ、あれ?」


 ……あー……すまんエミュール。あとでちゃんと説明する。


「それならタナトも。タナトは私の旦那でイライザの義理の兄。かつイライザの旦那」


「ええ!? ま、まさかタナト様、エリオラ様とイライザ様とご結婚されてるんですか!?」


「ま、まだっ。まだしてないっす……!」


「なら将来的に結婚のご予定が!?」


 くそ、この人もそういう下世話な話が好きなのか……!


「あとミケとも結婚予定。第三婦人」


「ふぇっ!? わ、私!?」


「えええええ!? 《騎乗戦姫》様ともご結婚されるんですか!? 凄いです、タナト様モテモテです! もっとお話しが聞きたいですわ!」


 あ。


 いきなり俺の手を握ってくるシャウナ様。ま、まずい……!


 急いで手を振り払う。が。


「――ぇ……?」


 シャウナ様は目を開き、呆けた顔で俺の顔を見つめてくる。


「た、タナト君、不敬だぞ!」


「あ、いや、その……」


 し、しまった、つい……!


「も、申し訳ありませんシャウナ様……!」


「い、いえ、そちらは大丈夫です。ですが……」


 シャウナ様は真剣な顔つきになり、俺の目を真っ直ぐ見る。


「タナト様、私が聞きたいこと……分かりますね?」


「っ……はい」


「……ここでは話しづらいでしょう。皆様、少々タナト様と二人にして頂けませんか?」


 ……ぬかった。まさか俺の手も握ってくるなんて……。


 皆がカフェスペースからいなくなるのを確認し、シャウナ様が手で座るよう勧めてきた。


 さっきまでエミュールが座っていた席に座ると、シャウナ様が身を乗り出す。


「話したくないことがあれば話さなくて結構です。ですが聞きたいのです。タナト様のその力のことを」


「……分かりました。話せる範囲であれば、お話します」


 ええいっ、なるようになれだ……!

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