外れスキル【釣り】を極限にまで極めた結果 〜《神器》も美少女も釣れるようになったけどスローライフはやめません。〜

赤金武蔵

第10話 全く別の、異能の力だ

「…………」


「……おい、エミュール」


「ふぇっ!? あっ……は、は、初めましてっ。エミュール・ハーフナーでふっ! ……ぁ……」


 ……こいつ、ここで噛みやがった……。


 エミュールの顔が真っ青になっていると、シャウナ様は楽しそうに破顔した。


「ふふふ、可愛らしいお方ですね。緊張なさらないで。今日私はお客として参りました。どうぞ、そのように接して下さい」


「えっ。そ、そんな……!」


「ね、お願いしますわ」


 シャウナ様がエミュールの手を握り、上目遣いで見上げる。


「っ…………!?」


 いや、俺の方をチラチラ見られても……。


 肩を竦めて無視すると、恨みがましい目で睨まれた。


「……わっ……わわわ分かりました……!」


「ありがとうございます、エミュール様♪」


 へぇ……何だか人懐っこい人なんだな、シャウナ様って……。


「あっ。すみません、いきなり手を握ったりしてしまって……」


「い、いえっ……大丈夫でしゅ……」


 全然大丈夫には見えないぞ、エミュール。


 ……仕方ない。ちょっと助け舟を出してやるか。


 テンパっているエミュールのフォローをしようとすると、シャウナ様が満面の笑みで口を開いた。


「それにしても、エミュール様は【審美眼】のスキル、それもレベルが八五七もありますのね。とても凄いです!」


 ……何……? 今、何て……?


【審美眼】のスキルは店先に貼ってあるとは言え、スキルレベルまで言い当てただと……?


「あっ……ご、ごめんなさい私ったら。つい癖で、スキルを覗いてしまいました……」


 ……は? スキルを覗く?


 シャウナ様の言葉に困惑していると、レヴァイナスが慌てて近付いてきた。


「シャウナ様、まずは中へ。ここでは人が多過ぎます」


「あ、そうですね。エミュール様、中に入ってもよろしいでしょうか?」


「は、はいっ。どうぞ……!」


 エミュールが先頭に立ち、その後ろをシャウナ様、そして俺とレヴァイナスが並んでついて行く。


「レヴァイナス。まさかシャウナ様って……?」


 小声でレヴァイナスに聞くと、レヴァイナスも周囲を警戒して小声で返して来た。


「……公にはされていないが……シャウナ様は触れた相手のスキル、効果、レベルなどを全て知る力を持つ。これはスキルでも魔法でもない。全く別の、異能の力だ」


 ……スキルでも魔法でもない……? 何だそれ……?


 ……だが、まさかシャウナ様がそんな力を持ってたなんて……まずいな。それじゃあ、シャウナ様に触れられたら俺のスキルがバレちまう。


 確かレベルマックスの人間は世界に十人しかいないらしいからな……シャウナ様には余り近付かないようにしよ……。


 最後に店の中に入ると、シャウナ様は目を輝かせて店の中を見渡していた。


「ふおおおおぉぉぉ〜〜〜……! 噂通りの品揃え……しかも私の持っていないシリーズ装備やアイテムが充実してますぅ〜……!」


 ほっ……よかった、気に入ってはもらえたか……。


「エミュール様、エミュール様! これはもしや古代シリーズでは!?」


「おお! 流石シャウナ様お目が高い! こちら古代シリーズの中でも超希少な古戦シリーズとなっていまして……」


「古戦ですと!? となるとアダマント鉱石が配合された……」


「そうですそうです!」


「す、凄いです〜〜〜!」


 ……おい、あいつら楽しそうだぞ。さっきまでの緊張はどこに行った。帰ってこい、緊張。


「シャウナ様は激レア品マニアだからな……こうなるとは予想していたが、まさかこんなに早く打ち解けるとは」


「早すぎだろ」


 趣味が合うからか、マニア同士打ち解けるのは早いなぁ……。


「タナト、タナト。あの人が王族?」


「ん? ああ。第一王女のシャウナ様だ」


「……へぇ……」


『ふむ……』


 じっとシャウナ様を見つめるエリオラとルーシー。あのエリオラが他人に興味を持つなんて珍しいな。


 エリオラがルーシーを撫でて、小声で話す。


「……ルーシー、どう思う?」


『……分からぬ。ただ、懐かしいとしか……』


「そう……」


 ……懐かしい……? エリオラ達が会ったことあるってことか……?


「お姉ちゃん、あの人……」


「……多分、イーラたんも感じてる通り」


「でも濃度が薄いのだわ」


「最低でもロゥリエくらいじゃないと、濃度は薄まる」


「ロゥリエ以下なら、脅威ではないのだわ」


「油断禁物」


「あーい」


 …………。


「おいエリオラ。今の話、まさか……」


「流石タナト、察しがいい」


 エリオラは警戒するような視線をシャウナ様に向ける。










「恐らく、魔族の転生体」

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